子どもたちのメンタルヘルスを守れ
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:コロナ禍でメンタルヘルスの危機のただなかにあるアメリカの子どもたち。アメリカはメンタルヘルスに理解があるだけまし、日本は社会全体のメンタルヘルスに関しての意識が低い。そのことへの危機。
アメリカの子どもたちのメンタルヘルス事情
昨日、コロナで学校に通えなかった子どもたちが被った失われた教育の弊害についてお話しましたが、実はそれよりも深刻な問題があったのです。
それは、子どもたちが深刻なメンタルヘルスの問題に直面していることです。
今日は、この問題に関する事実とデータを示し、関係者、専門家のコメントを紹介しながら、おそらく同じ状態に置かれている日本の子どもたちをどうメンタルヘルス危機から守るのか、考えたいと思います。
ウォールストリートジャーナル2021/6/11号はThe pandemic's toll on teen mental health (パンデミックで10代のメンタルヘルスが犠牲に)の見出しで、ロックダウン&学校の閉鎖がティーンエイジャーの精神衛生にダメージを与えている深刻さを報じています。1年前のデータですが、現在につながるトレンドと捉えていいと思います。
以下まとめてみました。
CDCが隠していた?重要事実
CDC(アメリカ疾病予防管理センターThe Center for Disease Control and Prevention )は、コロナで若者の入院率が上がっていることを報じた。
2021年5月時点で、10万人につき0.6の入院率に下がった。
入院患者は、アメリカの青年の人口の2.6%以下。子供の感染事例は84%下がり、入院は1月から5月までは69%下がった。これは主に成人のワクチン接種の広がりによるものである。
しかし CDC はもっと大事な事実に言及しなかった。
それは、2021年の1月1日から3月31日の間、緊急入院の20%がティーンの精神疾患がらみだということである。
肥満と摂食障害そして・・・
スタンフォード・チルドレンズ・ヘルスネットワーク(Stanford Children's Health Network)の専門家によると、ロックダウンと学校の閉鎖が肥満と摂食障害につながっていると言う。
CDCが、完全にコロナが原因の子供の精神疾患を全米レベルで把握しているわけではない。
2年前のコロナの始まりから1年たっても、全米で300万もの子どもたちが学校に来てないし、オンライン授業でもログインすらしてないからだ。
子どもたちがどのくらいメンタルヘルスを犠牲にしているかの、具体的な数字はわかってないのだ。
自殺をほのめかす等の緊急案件で運び込まれる例は、たしかにある。
オークランドのチルドレン・ホスピタルによれば、2020年3月から10月までの間に緊急外来を訪ねた、重症の自殺願望と判断された10歳から17歳の子供の数は66%増えた。
チルドレンズホスピタル・オブ・サンフランシスコによれば、2020年の摂食障害も含めて即時入院でメンタルヘルスケアが必要なこどもの割合は、2019年に比べ75%増加している。
CDC のデータによれば、2020年の子供のメンタルヘルス関連での緊急入院は、 コロナ前の2019年と比較して増加が見られる。
5歳から11歳の子供が24%、12歳から17歳が31%の増加である。
チルドレンズホスピタルアソシエーション(Children's Hospital Association)の発表によると、自殺未遂者20%、破壊的な行動に及んだ子どもたちの入院は40%以上増えて いる。
成人に比べても10代の犠牲は目立っている・・・
いや、もうやめましょう。
そんなことで、子どもたちのメンタルヘルスが危機にあることは、おわかりいただけたと思います。
2021年の5月末には、コロラド・チルドレンズホスピタルはプレスリリースを出して、緊急事態宣言をしました。
小児科のメンタルヘルスサービスに対しての需要が急激に増え、対応が難しくなったからです。
今後の対策はまだ始まったばかり
西海岸の都市のヘルスケア・リーダー達は、長引く学校の閉鎖が子どもたちのメンタルヘルスにどんな影響を与えているかを、やっとディスカッションし始めました。
しかし、最優先事項はコンセンサスが取れています。
それは、子どもたちを学校に戻すことです。
課外活動も、メンタルヘルス維持に効果があることがわかっています。
学校の先生、カウンセラー、そして同級生との接触の重要性も認識されています。
学校だけでは子供のメンタルヘルスは守れない、という意識も共有されています。
アメリカのすべての州が、子どもたちに向けてのメンタルヘルス・サービスにより大きな投資をすべきです。
ワクチン接種が広がり、パンデミックが収束してきている一方で、コロナから派生した、ある意味コロナ以上の重大なクライシスが発生しています。
全米のヘルスケアおよび教育界のリーダーたちは、子どもたちがこの長く暗いトンネルを抜けだすための、あらゆるヘルプを惜しんではなりません。
日本への忠告
さて、ひるがえって日本を考えてみると、まったく同じ現象が起こっていると考えられます。
どうも日本はまだ、メンタルヘルスに偏見があると思うんですよ。
メンヘラ、などという差別的なスラングがそれを表しています。
メンヘラ、つまり、メンタルを患っている人、という意味で、明らかに蔑視ですよね。
「うつは心の風邪」などということばが出てきて、ある程度はメンタル疾患は誰にでも起こりうるという認識は少しは広まったと思います。
企業は、形式的にメンタルチェックみたいな調査をし始めましたが、本気で回答するビジネスパーソンは少ないでしょう。
メンタルに弱いなどというレッテルを貼られたたくない、ましてや病気などを自ら克服してどうなる、という意識を持っている労働者は実に多いです。いやそれがマジョリティ、かもです。
子どもたちのメンタルヘルスなどは、大人のそれよりももっとずっと関心を持たれていませんよね。
アメリカの子どもたちのメンタルヘルス事情は、決して対岸の火事ではありません。
他山の石と心得るべきです。
ああ、この問題は重要すぎて、問題がありすぎて、一言で片付けられるわけはありません。
また、やりましょう。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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