情報共有という宝の山。
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:今日、バスの運転手が見せた”情報共有”の見事さ。情報共有が組織にもたらすメリットについて考える。
情報共有の重要性
きのう、武道の話で、敵に勝つには情報を漏らすな、情報を隠せ、と申し上げました。
しかし、対顧客という局面では、情報は積極的に出したほうがよい場合が多いのではないでしょうか。
今日、まさにその場面に遭遇しました。
東京から千葉県鴨川方面に行くバスの中、運転手さんはひっきりなしに乗客に、道路状況の変化についてアナウンスしています。
「規定の道路が事故で渋滞が発生しているので、迂回します。トラックと乗用車の事故で、道路が塞がっており、100メートルの車列ができています。」
「ただいま、迂回路を走っておりますが、この道も迂回を決め込んできた車で混んでまいりました。この道も次の交差点で降り、少しでも皆様が目的地に早くつくように、全力を尽くします・・中略・・・」
「終点には、このままで行くと40分遅れが見込まれます。鴨川方面にお急ぎの方は、次の袖ケ浦でおりて、電車に乗り換えた方が早いかもしれません・・・(一部創作)」
などというのです。
先日棒合宿で、河口湖に行った時に乗ったバスは、ひどく遅れているのに、アナウンスなどまるでありませんでした。
同じバスの運転手でもえらい違いです。
僕は、下車する時にその運転手さんにこう、声をかけました。
「道路状況のアナウンス、助かりましたよ!職場に連絡しようか迷っていたのですが、自分で判断できました。」
すると運転手さんは、「いやー、そんなほめていただけるなんて。でもお客様と情報共有したほうがいいかと思って」と言ったのです。
運転手は、道路混雑情報を客と共有することで、お客さんを喜ばせたのです。
情報共有というビジネスモデル
情報共有は企業にとってビジネスチャンスを生み出します。
皆さんは、このCMを見たことがありますか。
「それ、早く言ってよ!」というアレです。
ビジネス上のキーパーソンが、部下の知り合いだったというオチだったわけですが、この人物の「情報共有」さえできていれば、会社は大儲けだったはずだったのです。
バスの運転手さんは、お客さんと情報共有をして、安心を与えるというサービスを提供したわけです。
ナレッジ・マネジメントが近年声高に叫ばれていますが、その中心は「情報共有」です。
企業の哲学、方針、価値観等をいかに共有するかが、企業の強さを決める、そう主張するのがナレッジ・マネジメントなのです。
今、若者に嫌われる社内行事の筆頭的存在が、「飲み会」です。
しかし、この飲み会は「情報共有」の場であり、ツールなのです。
Z世代に嫌われる慣習だからと言って、やめるわけにはいかないのです。
情報共有のネック
情報共有は、組織が大きくなるために欠かせません。
しかし、これは誰にでもできるというわけではないのです。
バスの運転手にしろ、大物を知っていた部下にせよ、飲み会の情報提供者にしろ、「積極性」をもっています。
積極性とは「コミュニケーションを行うことに対しての肯定的な意思」のことです。
まずいことに、これは訓練等で後天的に身につけることができにくいのです。
ですから、情報共有という「暗黙知」を御社の強みとして打ち出したいなら、「おしゃべりで外交的な人物しか勝たん、と覚悟し、成績よりも性質を重視したリクルートを展開すべきでしょう。
野呂 一郎
清和大学教授