民主主義的経済vs国家主義的経済の時代。
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:きのうの「なぜ米国がインドを構うのか」、に続いての考察。中国の国家が経済をバックアップするやり方が成功した影響は大きく、多くの専横的リーダーが支配する国々が真似をしようとしている。どっちがいいんだろうね、という話をまた米vs印の接近から深堀りする。トップ画はhttps://qr1.jp/Z4UByy
「民主主義しか勝たん」のか?
アメリカ経済とはなにか。
無論それは資本主義ですが、その根底には民主主義があります。
民主主義の定義はたくさんありますが、例えばBusinessWeekによればそれは多様性の重視と政治がオープンである(the importance of diversity and political openness )ことです。
きのうの議論の続きですが、アメリカは5つの国益にかなうから、インドが反民主主義の国なのに、関係を築こうとしています。
アメリカ大統領バイデンの本音はこうです。
では、バイデンの具体策を見てみましょう。
イノベーションこそアメリカ経済のど真ん中
アメリカ経済の特徴って、社会に空気のごとく存在する自由、公平、オープンさが、たえずイノベーションを生んできて、巨大な経済を形づくってきた、ということですよね。
古くは100年前、自動車テクノロジーを開発して世界経済を牽引したフォード、1980年代からはITで世界を変えたマイクロソフト、ついでアップル、グーグル、フェイスブックとイノベーションの旗手を次々輩出してきたアメリカ。
イノベーションはアメリカの文化であり、中心的価値であり、差別化の源泉にして、ダントツのグローバルな経済スーパーパワーになりえたドライバー、なのです。
アメリカはいま、トランプが再び台頭して国が分裂、戦争のあおりをうけて超物価高です。
ですから、さすがにバイデンもモディさんに、こんなことは言えないのです。
国家による「選択と集中」が中国経済の正体
では、バイデンはインドをどう教化したらいいのでしょう。
BusinessWeekは2023年6月26日号の巻頭メッセージで、こう書いています。
「投資家が、企業のエクゼクティブが、外交官が、その価値観を伝えろ」、と。
要するに、官民がそれぞれのインド人との交流の中から、背中で見せろ、ということです。
思うに、国家主導型経済っていうのは、経営学的に言うと「選択と集中」が官主導で成功させよう、っていう試みのことです。
中国は国家を上げて、ITテクノロジーを成長分野として選び、カネと資源を集中し、国民の情報を収集して、ソフトウェアを生み出して、デジタル経済の覇者の一端をにないました。
しかし、経済の運営はアメとムチです。
つまり成長分野にはカネや資源をこれでもかと注ぎ込みますが、ルールを守らなかったり、国家の都合が悪くなると今度はそれらを奪いにかかります。
国家主義的経済は、中枢にいる権力者が勝手に振る舞い、周囲はおべっかや忖度だらけで、裸の王様の政治が経済を動かしているだけです。
その政治システムは不正や汚職まみれで、官僚たちは多少の能力や愛国心があっても、これでサスティナブルな経済運営なんてできません、って。
結局、国家主導経済が行き詰まるのは、必然なのです。
今のインドに多様性と政治的オープンさが不在なのは、明らかです。
日本は「裏金経済」だ
でも、アメリカがそれを面と向かってインドに伝えられないならば、民主主義を標榜する同盟国の日本が、つまり、岸田さんがバイデンになりかわって、言ってあげるのはどうでしょう。
「バカ言え!」っておっしゃるんですね。
確かに日本の経済は、民主主義的資本主義が動かしてはいるけれども、大企業がパーティ券を買って、自民党を動かしている「裏金経済」であり、「多様性と政治的自由」なんて大手を振って言えませんからね。
誰か、モディ首相にインドの進むべき道を教えてくれよ。
高校生のキミ、頼むよ。
野呂 一郎
清和大学教授