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マクドナルドを揺るがす”サラダ問題”
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:マクドナルド(米国)の戦略を考える。サラダという案外深い問題への多角的な思索。企業はSNSの反対グループにどう対処すべきか。
サラダを放棄したマクドナルド
日本のマクドナルドだったか、アメリカのだったか、それともヨーロッパで食べたか忘れちゃいましたけれど、カップに入っててシェイクするサラダ、ありましたよね。あれ、悪くなかったと思うんです。
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でも、あれってマクドナルドの正式コメントによれば2000年に発売されて、2003年に中止になったそうなんです。
今日付(2022年8月8日)のThe Wall Street Journalは、McDonald’s Customers Love Salads—Who Knew?(マクドナルドのお客さんがサラダが好きな件。意外だぁ)は、コロナを機会にサラダの提供をやめたマクドナルドへの様々な反応を紹介しています。
マクドナルドは1987年にサラダをメニューに加え、それ以来プレミアムサラダのカテゴリーで、”クリスピーチキン付きベーコン牧場サラダ( Bacon Ranch Salad with Crispy Chicken)”、” 職人がグリルしたチキン付きサウスウェストサラダ(Southwest Salad with Artisan Grilled Chicken)”を10年以上も販売していました。
![](https://assets.st-note.com/img/1659957019483-YEr0ZBJFRh.png)
しかし、2020年にアメリカがコロナ禍に見舞われて以来、サラダの販売をマクドナルド(米国本社)はやめてしまったのです。
フランチャイズは概ねこれを歓迎しました。なぜならば、サラダは手間がかかって、めんどくさい(cumbersome)だからです。
金銭面の損得勘定で行けば、セールスをドライブ(拡大)するのは、バーガーとフレンチフライ(フライドポテト)です。サラダじゃありません。
そしてパンデミックでブームになったのは、ドライブスルーでの販売です。お客を次々にさばかなくてはならないのに、手間と時間がかかるサラダをなくしたのは合理的とも言えましょう。
サラダファンからのブーイング
しかし、マクドナルドのサラダなしの動きに、大きなブーイングが起こっています。記事はこんな声を取り上げています。
・毎日レタスを食べるために、マクドナルドに通ってたのに
・冷蔵庫でレタスが腐っちゃうから、マクドナルドのサラダ重宝してたのに
・心臓の持病があってバーガーは食えないんだ、どうしてくれるんだ
・5歳と7歳の子供用のバリューセットにサラダがないから、頼むのやめたわ
・ヨーグルトパフェもやめちゃって、何を食べればいいの
・サラダがないなら、チックフィレイ(Chick-fil-A Inc. 「チキン」のみを扱うサンドイッチ専門店)に行くまでよ
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まあここまではいいとしても、いま、マクドナルドからサラダが消えたことに憤るグループが、ツイッターやフェイスブックで結束して、「bring it back! サラダをメニューに戻せ」運動を繰り広げているんです。
マクドナルドの言い分
The Wall Street Journalによれば、マクドナルド本社の反応はこうです。
「お客様のテイストがどう変わろうとも、我々はその声に真摯に耳を傾けております。
ただ、サラダの提供がなくなったことで、より正確にオーダーを取ることができるようになりましたし、お食事の提供もスピードアップが図られました。特にドライブスルーでは」。
一見「正論」に聞こえます。
マクドナルドのサラダ問題は他人事ではない
しかしこの件は、マクドナルドとサラダのジレンマなどということを超えて、今のコロナ禍の企業に次のような大きな問題を投げかけているのではないでしょうか。
1.事業を切る勇気か、切らない覚悟か
2.少数のファンを見捨てるのか、救うのか
3.目先の利益か、長期の利益か
4.アンチのネットスクラムにどう対応するのか
5.マクドナルドは、「サラダの戦略性」を活かしてないのではないか
ちょっとウザくならない程度に見ていって、拙稿を終わりましょう。
1.事業を切る勇気か、切らない覚悟か
従業員が足りない、これが今のアメリカ外食業界の根本的な問題です。
サラダを外すことは、大げさにいわなくても”サラダ事業部”を廃止する、ということです。
フランチャイズですから、本店の一括仕入れで野菜を毎日融通し、それはファーマーとの何年契約ということも含む、また物流を始め様々な外部の企業も巻き込むまさに事業です。
しかし、ファストフードの命は提供するスピードです。
ビジネスがイートインからテイクアウトに完全にシフトした今、マクドナルドがサラダを外したのは致し方ないと言えるのではないでしょうか。
しかし、やり方がベタ、というか・・。(5にも関係します)
2.少数のファンを見捨てるのか、救うのか
マクドナルドは「お客の意見は聞いている」とは言うが、そっけない印象ですね。
マクドナルドでサラダを食べたい、一定の層がいるということは大きなビジネスチャンスで、他に行けばいいのにあえて「マックでサラダ」と言ってくれるお客様。
こういう層を囲う努力が、マクドナルドってサラダに限らず足りないと思うんですよ。
3.目先の利益か、長期の利益か
サラダ無視が目先の利益重視で、サラダありが長期の利益、という単純なことではありません。
長期の利益とは、企業のイメージ、評判、社会貢献を現金収入よりも上に置くことです。
なんとか工夫して、サラダが必要な人にサラダを笑顔で届けることが、社会貢献といえます。
4.アンチのネットスクラムにどう対応するのか
SNS時代ですからねぇ。そしてネットは感情が爆発する地雷原でもあります。
単にツイッターやフェイスブックに、できもしない約束を返せばかえって炎上するだけなのは眼に見えています。
ここは、公式HPなどで、「コロナが過ぎたら、サラダを再開する」と約束するしかないのではないでしょうか。
5.マクドナルドはサラダの戦略性を活かしてないのではないか
サラダメニューに力を入れている企業は、人々の健康、今流行りの言葉で言えば、「ウエルビーイング(well-being心の状態や身の回りの環境のことも含めての健康という概念)に熱心な先進的な企業」というイメージを持つことができます。
そレを手に入れるチャンスを、みすみす逃しているのが、マクドナルドだ、と手厳しいことも言える世の中なのです。
僕が社長ならば、マクドナルドのドライブスルーに「サラダ注文専用レーン」を組み入れますね。Salad takes time but it's worth for your health(サラダ時間かかりますが、健康にはいいですよ)みたいな但し書きをして。
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今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー