P&Gにみる「為替変動リスクを最小限にする戦略」
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:P&Gに見る、時代の変化にうまく対応することがベスト戦略という正論。ドル高で苦闘するアメリカ・グローバル企業の現実。パンデミック需要という神風。為替変動リスクを避ける戦略とは。トップ画はhttps://qr.quel.jp/pv.php?b=3VJl9zK
パンデミックにおける戦略はどうあるべきか
P&Gといえば、タイドという洗剤とジレットのブランドで知られるカミソリのメーカーとして知られています。
今日付The Wall Street Journal2022年10月20日号は、パンデミックを乗り越えて、収益が上向きつつあるP&Gの戦略の分析をしています。
P&Gの特徴はグローバルな展開をしている大企業、ということです。
ご承知のとおり、いまアメリカのグローバル企業は、ドル高で収益が悪化しています。
海外販売に頼る多くの米企業にとって、ドル高が進むほどドル換算での海外収益が減るからです。また現地通貨での値上げを余儀なくされ、米製品の競争力も低下するからです。
P&Gは、この5年間で最も大きな収益の低下に見舞われました。
6月30日に終わる会計年度の売上も1%から3%減で、株価も前年度比6.7%下落しました。原因はドル高です。
しかし、P&Gのファイナンスのトップ、アンドレ・ショールテンさん(Andre Schoulten)は、なぜか自信満々です。
ショールテンさんはこう言います。
ちょっと俺流に解説してみましょう。
海外市場で勝負しているP&G。長年の市場開拓でP&Gブランドは現地で根付いてきました。洗剤、おむつ、カミソリなどです。
しかし売れば売るほど収益が悪化する状況、じゃあ、撤退するのか。
とんでもない。海外市場攻略のために今までどんだけ投資を積み重ねてきたか。
ドル高の影響を避けるために、原材料調達の現地シフトを増やすなどして対応すればいいのです。
これまでの戦略とは各国で愛される製品を選び、育ててきたことです。
これは間違いないから、変えないということです。
P&Gの危機に勝つ戦略とは
あえて私がまとめると、こうです。
1.あたらしい消費者動向を見極めること
ショールテンさんは「人々の消費に対する態度が変わった。もっとたくさん買うという意思も、余裕もなくなってきている」と話します。
インフレ、モノ不足が当分続くという見立ても当然ありますが、グローバルなオペレーションを鳥瞰できる同社ならではのメリットを生かした、グローバルを踏まえた判断だと思います。
2.国内と海外のバランスを取る
アメリカ国内ではP&Gは、いわゆるパンデミック特需に預かりました。この儲けで、ドル高で減った海外拠点での収益源を補ったのです。
為替変動というリスクも、この”塩梅感覚”とでもいうべきマインドでコントロールしているのです。
3.象徴的な数字を読みの核とする
これもショールテン氏の言ですが、P&Gではオーガニック製品(無添加、自然系)の売上で市場がある程度読める、というのです。
4.政治的な意思決定ができる
グローバルなセールスはは前年度比3%減りましたが、この減収の3分の2は、ウクライナ戦争の最中での、ロシア市場での製品供給を半分にしたことが理由です。
ロシア市場からは完全撤退はしない、かといってフルに操業はしないという経営意思決定は、多分に政治的な配慮が働いたと見るべきです。
5.安易な人員カットは避ける
生き馬の目を抜く海外市場で収益が減れば、普通の欧米企業ならば人員削減が当たり前です。P&Gはそれは考えていません。
パンデミックの需要拡大で、数万人従業員を増強したばかりということもあるかもしれませんが。
就職機会を取り上げることが、その従業員のみならず、会社全体の活力を削ぐことは洋の東西を問わない真理です。
為替変動というリスクに、企業はどう対応すべきか。
あらゆる企業が、この問いを突きつけられています。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー