コンサル主導の時代は終わった。
この記事を読んでキミたち高校生、大学生が得られるかもしれない利益:驕れる者久しからず、の現代的意味。AI全盛時代、コンサルの役割とは何か。人間性こそがテクノロジーに代替できないコンサルタントの強み、というある種の現実をキミはどうとらえるか。
マッキンゼーにいったい何が起きたのか
いったいそのクライシス(マッキンゼーを揺るがす危機)とは何なのか、
などとあおったけれど、表面的には記事にある通り、マッキンゼー
の内憂外患だよね。
きのう書いたとおり、内部の緊張状態であり、外部の評判に泥を塗る危機ということだ。
前者は前リーダーがスキャンダルを表に出さないように、マッキンゼーのやり方を、らしくなく中央集権化しようとして、一部のパートナー(コンサルタント)に反感を買った挙句、リーダーの座から追い落とされた一件だ。
後者は複数の製薬会社に対して、アグレッシブなマーケティングサポートをしたことが裏目に出たこと、電子タバコ会社とサウジアラビア政府へのコンサルティングがうまくいかなかったこと、を指している。
「評判を落とした出来事」と記事にあり、スキャンダルをにおわせる書き方であるので、やばい出来事かもしれない。
記事はここまでしか書いてない。
しかし、この政変劇を記事に書かれた事実と現代の環境変化に照らし合わせて考えると、こんな推理ができるのではないか。
イケイケマーケティングは終わった
さて、では、1から5を解説しよう。
1.マッキンゼーといえども、現代のマーケティングはやっかいだという現実。
記事には、オピオイド鎮痛薬のアグレッシブなマーケティングがうまくいかなかったとだけしか書いていない。
通常ならば綿密な市場分析をして、強力な4P(製品、価格、流通、プロモーション)の水も漏らさぬマーケティング戦略を構築してうまくいったはずだ。
しかし、現在のマーケティングはやりすぎてはだめなのだ。
積極的にマーケティングするには、慎重さが欠かせなくなっている。
具体的に言えば正直さだ。
副作用や長期服用のマイナスなども開示することが、重要になってくる。
これを倫理性と言い換えてもいい。
もう一つはプライバシーの問題。
以前最新マーケティングに関する特集で散々言ったように、大手プラットフォーマーが消費者情報をタダでマーケティングに使う流れは終わった。
マッキンゼーは、ここらへんを読み違えていたのではないか。
なぜならば、今、マーケティングは過去最大の転換期だからだ。
シニア世代が大半を占めるはずの、老舗コンサルティング企業ゆえの、成功体験が裏目に出たとみる。
テクノロジーにコンサルが勝てない時代
2.テクノロジーがオペレーションを超える時代になったこと
なぜ80年代、マイクロソフトが疲弊したアメリカ経済の救世主になったのか。
それは、マイクロソフトがテクノロジー企業であったからだ。
創業者のビル・ゲイツ自体がテクノロジーの専門家であり、組織論よりもテクノロジーを優先した結果、一大IT王国を築き上げ、アメリカは新・テクノロジー立国を達成した。
この頃から、組織論にこだわる、というよりも、それしか売り物がないコンサルティングの衰退がはじまったんじゃないか。
だって生産現場を見てみろよ、昔は機械がガンガン作動し、そこにたくさん人が張り付いていた。
でも今はロボットばかりで、人間はスイッチの近くにポツンぽつんといるだけだよ。
どうやって業務改善なんか指導するんだよ。
もはやコンサルは政治に介入すべきではない
3.政治には手を出せない今の現実
サウジアラビア政府に対してのコンサルがうまくいかなかった、とのWSJの報道だ。
きのう書いたように、マッキンゼーは専横国家のサポートはしないっていうポリシーだ。
でも、サウジって微妙でしょ。
ジャーナリスト殺害事件で、皇太子の関与が疑われた事件は記憶に新しいけれども、そんな国は民主主義国家とはいいがたいでしょ。
でも、貧すれば窮すで、そんなグレイゾーンの仕事を引き受けるほど、マッキンゼーも落ちぶれちゃったのかなあ。
産油国との付き合いは、アメリカもシェールガスでエネルギー供給国になったし、これからのロシアとの関係もあるし、もうあまりに政治問題化しすぎている現実がある。
マッキンゼーは、民主主義国家か否かにかかわらず、もう政治がらみのコンサルの一切をやめるべき時に来ているのではないか。
コンサルもお役所的組織になるしかない時代
4.マッキンゼーのオートノミーの限界
WSJの記事では、関係筋の「一部のコンサルタントの反対を押し切ってまで、中央集権的なやり方を導入すべき」、という主張を紹介していた。
これまでコンサルタントの自治が幅広くみとめられていたのに、この自由を放棄させ、組織の意向に従わせようという動きは、ある種マッキンゼーが自分自身をコンサルした結果、といえなくはない。
その結果が中央集権という、革新とは程遠い結論になってしまったのは皮肉と言わざるを得ない。
僕のいうテクノロジー>オペレーション、だ。
コンサルの真価が問われている
5.それでもオペレーション改善で勝負するしかないマッキンゼーの現実と覚悟
オペレーションは業務改革と言ってもいいし、組織改革と言ってもいいし、人事刷新と言ってもいい。
要するに、組織効率を上げるための昔ながらの手法だよね。
コンサルの基本は、企業とお話をすることだ。
つまり、コミニケーションだ。
新リーダーのスターンフェルドさんは、おとといの記事でも書いたように、スタンフォード大学卒のエリートだけれど、大学の水球チームのメンバーで、ナショナルチームにもいた根っからのスポーツマンなんだよ。
アメリカは梶原一騎の根性論じゃないにせよ、スポーツマンは規律で鍛えられた見事な組織人だ。
アメリカ流チームワークを身に着けた、コミニケーションの達人でもある。
テクノロジーの専門家じゃないけれど、オペレーションのエキスパートだ。
650人のシニアパートナー(上級コンサルタント)の過半数が、今回こういう人物を新リーダーに選んだ。
ここに、現代におけるコンサルティングの限界と、マッキンゼーの原点回帰の覚悟を見ることができる。
以上、例によって野呂の戯言さ。
明日は、俺流コンサルタント像をキミたちに紹介したい。
えっ?もういい?
ここまで引っ張っちゃったから、やらざるを得ないんだって、つきあってくれよ。
じゃあまた明日な。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー