衆院選では”絞れてない”候補は勝てない
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:マーケティングのライン・エクステンション戦略についての理解、ハード・マウンテンデューの売れ行きについての予想、「マーケティングとは絞ること」についての是非判断。政治家の売り方についての考察。
ライン・エクステンション戦略ってなんだ
昨日マウンテンデューとボストン・ビールが、新製品を発売するという話をしました。マーケティングの講義はしないと言いましたが、今日は一つだけその話をしたいと思います。
この話は、ある意味、ライン・エクステンション(line-extension strategy)戦略の話だと思うんです。マウンテンデューがまた新しいラインアップを創ることの是非、ということです。
ライン・エクステンションとは製品ラインアップを拡大する、増やす戦略のことです。古典的な例がIBMです。
IBMは当初汎用コンピューターの雄でしたが、次第に様々な分野に進出します。パソコン、ペン・コンピューター、ワークステーション、ミッドレンジ・コンピューター、ソフトウエア、ネットワーク、電話。1991年のIBMの収益は650億ドルでしたが、この変遷の中で28億ドルを失いました。一日の換算で800万ドルの損失です。
今、IBMといえばコンピューターのハードから完全に手を引き、人工知能やコンサルティングというソフトのみに特化した会社として生まれ変わりましたが、この間のことをライン・エクステンション戦略の失敗と見るか、それとも生まれ変わるための変化の結末と見るかは、意見が分かれるかもしれないですね。
セブンアップはなぜ失敗したのか
ソフトドリンクのライン・エクステンションの失敗例は、セブンアップ(7up)です。これも日本ではスプライトのほうがずっと有名で今あるのかすらわかりませんが(撤退しましたね)、アメリカではこれまでいろんなバージョンを出してきました。
1978年、セブンアップはレモンライム味の非コーラ飲料として、ソフトドリンクの市場全体の5.7%を占めていました。
その後セブンアップは、セブンアップ・ゴールド(下絵)、チェリー・セブンアップ、ダイエット・セブンアップを発売するに至りました。15年後の1993年、セブンアップのシェアは2.5%まで落ちてしまいました。
なぜ、経営者は性懲りもなくライン・エクステンションをやりたがるのか
しかし、結局、ライン・エクステンション戦略はほとんどが失敗に終わっているのです。
でも、性懲りもなく経営者たちは、ライン・エクステンションをやりたがります。それには二つの理由があるとされます。
理由1:短期的には成功するケースがあるからです。長期的にはダメでも、なぜやるのか、そこにはトップは業績を上げなければいつクビになるかわからないという、西欧企業の現実があります。経営者は自分の任期で成績を上げることを第一に考えても、誰も責められないでしょう。
理由2:成功した製品と企業に思い入れがあるからです。だから、柳の下に二匹目のどじょうがいるはずだと思ってやりたがるのでしょう。
マーケティングとは“絞ること”だ
僕はいつも学生に言うのですが、マーケティングとは絞ること、です。
お客さんを絞る、ターゲットを絞る、目的を絞る、そして製品も絞らなければ成功できません。
そして、お客さんの思い(マインド)も絞るのです。
それは「〇〇といえば、△△だ」、というお客さんの頭の中で、瞬時にその連想がわくことを意味します。
そのお客さんのマインドを創るためにも、いろんなことに手を出してはいけません。
政治もマーケティングだ
今度の総裁選、岸田さんが手を上げましたよね。政治家もそうです。マーケティング今回は直接選挙じゃないから、民意は反映されないけれど、衆院選となったら、”絞れた”候補が勝つのです。
かつて民主党に長妻さんという政治家がいました、今もいますね、立憲民主、かな。彼のニックネームは”ミスター年金”、よかったと思います。年金に関係ない有権者はいない、そこは絞れてないものの、イメージ、主張、存在感という部分で絞れています。
菅さんは、絞れてないですよね。悪いイメージばかり絞れていますけれどね、いちいち言わないけど。
岸田さんも優柔不断なイメージだけ、河野さんは今回でないけれども、国際派という印象だけは絞れています。
一つだけでいいんです、僕らも〇〇ならば、△△さんと言われるようなりたいものです。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
また明日お目にかかりましょう。
野呂 一郎
*今回の記事はThe 22 Immutable laws of marketing という本を参考にしました。