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高校生よ、「地球温暖化の最大リスクはアメリカ」、と心得よ。
この記事を読んで高校生のキミが得られるかもしれない利益:地球温暖化の要、アメリカのガソリン車に関する現実。アメ車の燃費が悪い本当の理由。経済学の鉄則、インセンティブとは何か。地球温暖化とアメリカの本音。
アメリカのEVシフトは見せかけだ
高校生のみんな元気か
さて、今日は地球温暖化の話だよ。
何すりゃいいって、ガソリンを使わなければ二酸化炭素は発生せず、地球がこれ以上暖かくならないということだよね。
だから、各国ともガソリンで走る車を止めて、EV(Electric Vehicle電気自動車)に変えよう、と言っているわけだ。
でも、アメリカはこの流れに遅れているんだよ。
後で話すんだけどさ、アメリカって実は「環境問題なんかそんなの関係ねぇ」ってのが本音なんじゃないかなあ。だってさ、この数字見てよ。
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去年の新車販売台数に占めるEVの割合は、たったの2%。だよ。
日本を上回っているけど、EUの10.5%や中国の5%に比べると微々たるもんだ。
世界の流れは「脱炭素」だろう。
危機感を募らせたバイデン大統領は去年8月、電気自動車など走行中に排気ガスを出さないゼロエミッション車について、新車販売全体に占める割合を9年後の2030年に50%に引き上げる大統領令に署名したんだ。
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この件は過去記事でも報じたよね。
なぜ、アメリカの車は燃費が悪いのか?
だけど昨日の(2021年1月21日)The Wall Street Journalは、アメリカは本気で地球温暖化に取り組むつもりがあるのか、的なことを言っているんだ。
この記事のタイトルはこうだ。 America should pay more for gas, not less.(アメリカはもっとガソリン代を払えよ、ガソリン代値下げはダメだ。
のっけからこんな文が登場する。
「ボロボロの車があり、修理しないと乗れない。これはもう廃棄するしかないな。でも、今のアメリカの燃費ルールからすると、捨てないで修理に出すほうがトクだ。」
要するに新車を買えば燃費が超高くて、ガソリン代がかさむから、昔のボロクルマで走ったほうが、車代を含めてもまだ安上がりだ、ということだ。
燃費効率はどんどん悪くなって、ガソリン代がかさむ仕組みになっているのは、なぜだろう。
それは、世界の石油メジャーとアメリカ政府が裏取引しているからかもしれないよ。
いいんだよ、Qアノンだとか、フリーメイソンとか、陰謀論とか、この連載はプロレスだ、何でもありなんだよ😁
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インセンティブで自動車業界を支配しているアメリカ政府
さて、高校生のキミに経済理論と言うか、鉄則を教えよう。
それは経済でいちばん大事なことは、インセンティブ(incentive人に何かをやらせる強制力)を与える、ってことなんだよ。
それはさ、「こっちのほうがトクだよ」って提案をすることなんだ。
アメリカ政府はね、インセンティブで、自動車業界を完全にコントロールしているんだ。
どういうインセンティブかというと、「大きなクルマを作ったほうがトクだ」というインセンティブなんだ。
普通の乗用車よりも、ピックアップトラックとかSUVとかを作ったほうがトクなんだ。
なぜならば、燃費ルール Corporate Average Fuel Economy standards(CAFÉルール企業平均燃費基準)っていうのがあって、大きな車を作ったほうが、この基準に合わせやすいからなんだ。
作りやすいってことは、もうかるってことなんだよ。
そうだ、ダブルスタンダードってのが存在する、普通のクルマの燃費ルールと、大きなクルマの燃費ルールが違うんだよ。
だから、アメリカの自動車会社はでっかいクルマばっかり作って売ってるんだ。
国土がでっかいから、こういうクルマのほうがアメリカ人にとっても都合がいい。
トランプは、環境なんてどうでもいいから、このCAFEルールを緩めたんだ。でもバイデンさんはこれをまた強化したんだ。
でも実際は2014年から、新車の燃費率は1ガロンあたり25マイルで実質変わってない。
なぜ、アメリカ政府はクルマの燃費に無関心なのか
始末に悪いのが、アメリカはこのCAFEの燃費率を公表していないことだ。
でも、IEA(International Energy Agency国際エネルギー機関)の調べによれば、乗用車と軽トラを含む、売れた新車の平均燃費率は、世界の平均21%を、ヨーロッパの平均45%を大幅に上回っている。アメ車の燃費は世界最悪なんだよ。
そもそも、乗用車と大型車で燃費を変えることがおかしい、というのは、シカゴ大学のプロフェッサー・イトウだ(Prof. Koichiro Ito )、経済合理性がまったくないというのだ。
ガソリン税は政治的自殺
アメリカが脱炭素という世界的な流れに本当に同調するのなら、燃費率のことはともかく、二酸化炭素排出に対して税金をかければいいよね。
ガソリン税があってもいい。これはヨーロッパが実際にやっている。
でもそれは政治家たちにとって「政治的自殺(political suicide)」だと言うんだ。
炭素税、ガソリン税は人気がないから、自分たちの政治的生命を失う、というわけだ。
アメリカの本音
どうだろう、確かにバイデンさんは2030年までに新車の半分をEVにするとは言った。でも、この燃費に対するアメリカのいい加減さは、どうだ。
僕はここにアメリカの本音があると思うんだ。そもそもアメリカは例の京都議定書体制から2001年に脱退している。
京都議定書とは、1997年、世界各国の政府代表者が日本の京都に集まり、第3回目となる、国連気候変動枠組み条約の締約国会議(COP3:Conference of Parties)を開催し「京都議定書」という国際条約が成立した、そのことをさす。
これが、2020年の地球温暖化を阻止しようというパリ協定につながるわけだよね。
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アメリカも表向きは音質ガス排出量を実質ゼロにすることに賛同しているけれど、そもそもアメリカはヨーロッパとは違い、環境意識が弱いんだよ。
環境より経済、さ。つまりカネだ。
しかし、アメリカにはもう一つの懸念がある。
これ以上石油に頼れない安全保障上の理由だ。
僕の愛読書Freedom from Oil はいかに石油依存がアメリカの国益を損なうかを力説した本だ。21-23ページにこうある。
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1. 石油依存はアルカイダ他イスラム系テロリストを増長させる
2. 石油依存はアメリカと利益相反する石油輸出国を利するだけ
3. 石油依存はアメリカの軍人の男女を危険に晒す
4. 石油依存は民主主義と世界のガバナンスの根本を揺るがす
これらの詳しいことはまた別の機会にやろう。
とにかく、石油に関して、環境保全に対してのアメリカの分裂的とも思える態度は、アメリカの複雑な立ち位置、そして強さと弱さを物語っているのかもしれない。
今日も最後まで読んでくれてありがとう。
じゃあ、また明日会おう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー