高校生よ、クラウドゲーミングに本格進出するマイクロソフトに勝てる企業なんてあるの?
高校生のキミがこの記事を読んで得られるかもしれない利益:マイクロソフトがいまやゲームカンパニーという事実。クラウドゲーミングがなぜ現代の金脈なのか。戦略とは何か。エモーショナル・ブランディング理論。コンソリデーション(統合)の時代って何?
マイクロソフト最強の理由
世界の企業は、もうマイクロソフトに勝てないよ。
なぜかと言うと、マイクロソフトが本気で、クラウド上で行うゲームビジネスに力を入れ始めたからだ。
今日のThe Wall Street Journalオンライン版(2022年1月24日号)は、マイクロソフトがクラウドを使ったゲームの最大手、アクティビション・ブリザード(Activision Blizzard )を買収する方向であることを報じているよ。
こう言うと、
「いや、既定路線じゃん、マイクロソフトはXbox ってゲーム会社を持っていて、Game Passで、コンピュータゲームのサブスクリプションサービスを提供しているの知らないの」って言われるよね。
そうなんだ、これは過去1年で39%の収益増、そしてこのサブスクサービスを購入しているユーザーは、なんと2500万人になっている。
これが実現すると、マイクロソフトは30のゲームスタジオを傘下に収める、 収益において世界第3位のゲームゲームカンパニーにのし上がるんだってば。
戦略とは偶然だ
僕はマイクロソフトが、史上最高の金脈を探し当てた、と思っているんだよ。
それは経営学的に言えば、”最高の戦略”のことだ。
しかし、戦略って僕も色々研究しているけど、理論のフレームワークに入れた戦略なんて、机上の空論だと思うし、誰かのマネをしても戦略ってうまく行かないんだよ。
今回のマイクロソフトの”新戦略”は、ある意味、偶然が生み出した、と思っている。
だからこそ、本物なんだよ。
リクツで作り上げたものなんて、教科書の経済理論と同じで役に立たない。
いろんな試行錯誤をしてきて、それが最後、合理的な手法に結びついた、それがいい戦略っていうものなんだよ。
そして、それをあとになって学者やコンサルタントが、リクツが通っているね、いいねってはやしたてるんだ。
とにかく、マイクロソフトにとって、最高のレインメーカー(カネの雨を降らせる仕組み)であり、最高の戦略、それがクラウドゲーミング・ビジネス、ってわけだ。
Xbox対マイクロソフト
前述のように、そもそもマイクロソフトはゲーム事業をやっていた。
しかし、Xboxのチームは、マイクロソフトがウインドウズばかりに関わり、自分たちに一向に投資しないことに、苦悩していたんだ。
それが一転、ゲームに勝機を見出したのは、マイクロソフトがクラウドサービスをはじめてからだった。
マイクロソフトは、クラウドの利便性、例えば特別な機材の導入やシステムの開発が必要ないこと、インターネット経由でどこからでもアクセスできることなどを実感できた、はずだ。
そうこうするうちに、「ウチのゲーム、クラウドと結びつけたらいいんじゃね」、みたいな考えがでてきて、サブスクで2500万人もの会員が突破した。
一方、ウインドウズ開発で企業を相手にしているビジネスへの、社内的な疑問がふつふつと沸き立ってきた。
風向きがやっと変わってきたんだ。
コンシューマー・フェイシング( consumer facing)とは何だ?
この言葉は、正確にはまだ日本に定着してないんだよ。
いや、紹介されてないと言っていいか。
あるネット上にある定義によれば、コンシューマー・フェイシング(カスタマー・フェイシングともいう)とは、そのサービスがいかに消費者によって体験され、見られているか、ということだ。
マイクロソフトが「クラウドゲーミングが宝の山だっ」て気がついたのは、そこにお客さんとの感動的なやりとりが発生する、つまり、コンシューマーフェイシングが生まれるからなんだよ。
コンシューマーフェイシングをどう訳したらいいかねえ。
ここでは一応、「消費者と向き合うことで、消費者との関係性を高める機会」とでもしておくかな。
さて、ここからは僕の想像だ。
ここでマイクロソフトが思い立ったのは、消費者に向き合うビジネス(consumer-facing businesses)という考えだ。
これは、CRM(customer relationship management顧客関係性マネジメント)の一つともいえる。
カスタマー・タッチポイントを通じて、いかにお客様に満足する経験を与えるか、このことがカギになるビジネスのことだ。
タッチポイントこそ、これからのビジネスの最重要項目
カスタマー・タッチポイントとは、お客様との接点だよ。
お客様とのやりとりの全てがタッチポイントだ。
クラウドゲームならば、武器のデータを買ってくれる時、サブスクの契約の時、ゲームの勝利アドバイスの時、双方向のゲーム時に何らかの介入が許される時、これらがタッチポイントだ。
こうしたタッチポイントを通じて、クラウド上で新たなCRMを構築していくことに、マイクロソフトは「時代はこれなんだ」と気づいたんじゃないかな。
経営学的にもう一言言えば、それは、エモーショナル・ブランディング、だ。
簡単に言うと、現代の最強の製品/サービスはお客さんの感情をかきたて、湧き起こす性質を持っているそれだ、という理論だ。
マイクロソフトは正しいと思うよ。
だって、そもそもゲームより、感情を掻き立てるものはないでしょ。
スポーツだって、e-sportsのほうが経済規模が大きくなってるものもあるくらいだからね。それになんたって、経済成長の原動力である若者を取り込めるし。
この買収が成功すれば、もはやマイクロソフトはゲームカンパニー。これからどんどん中小ゲーム会社の買収が始まるよ。
世界の流れはコンソリデーション(consolidation統合)つまり、業界再編成、だ。ゲーム業界はいまや音を立ててマイクロソフトがその中心となって、地殻変動を起こしている。
マイクロソフトの懸念
でもね、マイクロソフトはアップルに負けている。エモーショナル・ブランディングではね。
それはそうでしょ、その答えはキミたち若者が一番知っているはずだ。
だから、ウインドウズをすてて、クラウドゲームに行っちゃったんじゃないか。極端に言えばそんな感じがする。
ウインドウズでいる限り、若者のエモーションを動かせない。だから、これからはアクティビション・ブリザードのイメージでいく。これなら扇情的なブランドとして、アップルに対抗できるかも、だね。
クラウド・ゲームという感情をかきたてる道具が、どのくらいマイクロソフトの味方をしてくれるのか、マイクロソフトが天下を取るのはここにかかっている。
どうだろ?
今日はちょっと難しかったかなあ。
大人向けにしときゃよかったか。
今日も最後まで読んでくれてありがとう。
じゃあ、また明日会おう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー