グローバル・リーダーに必要な 「悪の論理」
リーダーは常に経済動向を聞かれる
リーダーは、常に意見を求められます。「コロナはいつ終わりますか。景気はどうなりますか、インフレは本当に来るのですか」、という具合に。
もし答えに窮するとき、そのときに便利な方法が3つあります。
1. 自分の気に入った理論を使う
2. 自分が気に入った経済人の意見に同調する
3. 海外の媒体の気に入ったモノの見方、考え方を援用する
説得力があるノーベル経済学受賞者のあの理論
例えばコロナだと、2を使います。これはThe Wall Street Journalで、最近デルタ航空のCEOが「7月頃に終わる」と言っていたからです。もちろんこれはアメリカですから、日本はワクチンの遅れ分3ヶ月足して「うーん、10月くらいかな。デルタのCEOもそう言ってたからね」と言います。
株価だと、1を使います。理屈は、シラー博士のアニマル・スピリッツ理論を用います。
シラー先生は2013年のノーベル経済学受賞者で、「根拠なき熱狂」という本を書いたことでも知られます。
この本のタイトルからも推測できますが、彼のアニマル・スピリッツ説は、氏いわく「景気の動向など誰にもわからない、なぜならばそれは人間の気まぐれ(アニマル・スピリッツ)が動かしているからさ」という理論です。
詳しく説明する必要はないでしょう。だから僕は彼の理論を使って、株価どうなりますかの質問には、「それは神のみぞ知る、だよ。シラー博士のアニマル・スピリッツ説に賛同するよ」と軽く流します。
最後にインフレは3を使います。
これは最近仕入れた知恵でして、5月17日号のThe Wall Street Journalから見つけた、僕が今すごく気に入っているモノの見方で「もらっちゃおう」と思ったものです。
それは何かというと、「いったん人々が強く期待をすると、それは実現する」というものの考え方です。
それを使って「インフレは日本にも絶対来るよ。世界中のインフレ期待が沸騰しているからだ。この期待っていうやつは疾風怒涛の勢いがあるから、経済理論なんて効かないよ」と、よけいなことまで言います(笑)
The Wall Street Journalを使い倒せ
The Wall Street Journal読んでいて、すっごく得をしたな、と感じるがあります。
これ日本の媒体では絶対に言わない言葉や表現だけれど、真理というか物事の本質をついているよなあ、と思わされる言葉に出くわすことがあるんですよ。
それが、今申し上げた「いったん人々が期待すると・・」という言葉です。
この言葉は、The Wall Street Journalの5月17日号の社説The rise of inflation expectation(インフレ勃興の期待)という記事で見つけたもので、原文にはこうありました。
expectations are hard to break(期待はそれを壊すのが難しい)。
もちろんこれは経済理論ではないですが、私はすごく気に入りました。
そして、「本当だな」と信じるようになりました。もしかしたら心理学などでも説明できるのかもしれません。
経済現象が全て経済理論で割り切れるわけもないし、シラー博士みたいに「経済は気が動かす」とご自分の研究でおっしゃっている方もいます。
景気や経済動向を聞かれた時に、自分の答えを持つことが必要と申し上げましたが、海外のメディアには、ご自分の考えに近い表現がきっとありますよ。The Wall Street Journalはおすすめです。
リーダーには悪の論理も必要
お前の今日の話はあざとい、俺はわからなきゃわからないっていうよ。
まさに正論です。
しかし、世界のリーダーはしたたかです。
皆様リーダーは彼ら彼女らと丁々発止とやって、尊敬されなければなりません。
その時に心得ておいていた方がいいのは、「悪の論理」です。
これは、むやみに他者を信じない、相手に応じて言うことを変える、時と場合によっては本音を言わない、という心構えのことです。
これは、外国の要人に接する時に必要な考え方です。
だから、皆さんの答え方で「わからない」はリスクが大きすぎます。軽く見られるより、1,2,3どれかのあざとさを選んだほうがいい、そう私は考えます。
さて、今日はどうしてもこの話がしたくなってしまいました。
フォードの話はそれじゃあ明日に。
今日もお読みいただき、ありがとうございました。
野呂一郎