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FBIトランプ邸ガサ入れでもトランプが再来年また立つ理由。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:トランプは民主主義を殺したのか、それともメディアが犯人なのか。世界を揺るがす「キャンセル・カルチャー」とは何か。行き過ぎたアメリカの「言葉狩り」を考える。アメリカ分断の真相。
トランプ分断をどうみるか
きのう、世界のメディアは一斉にトランプ宅にFBIの捜査が入ったニュースを取り上げました。
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トランプは起訴されて2024年の出馬がパーになるだろう、という観測がある一方で、トランプ支持がかえってヒートアップし、アメリカの分断が進むから、FBIも手荒なことはできまいとする向きもあります。
さて、アメリカの分断は、トランプか非トランプかという定義もありますが、別の見方もできます。
例えば、言論の自由vs言論規制です。
言論の自由とは勿論アメリカ憲法が保証している権利なのですが、現実には言論の自由はないと主張する人たちがいます。
例えば人種問題に関して、あなたがあなたの職場で、ネット上で人種差別的なことを言ったらどうなるでしょう。
下手をするとあなたの職や地位が脅かされます。
これは、言論規制、というより言論の自由がないことと同じだ、というのです。
トランプ氏が好き勝手に発言したことの多くが、非難にさらされました。
その象徴的な出来事がトランプ氏のツイッター・アカウントがバン(ban アカウント停止処分)されたことでした。
ツイッター社の内規に違反したということですが、これに噛みついたのがそのツイッターを買収しようとしたイーロン・マスク氏でした。
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マスク氏はツイッター社のトランプアカウント停止処分は、言論の自由を奪うものだと主張したのです。
”キャンセル・カルチャー”の猛威
ところで英語で”炎上”はなんというのでしょうか。
一つの答えが、cancel cultureキャンセル・カルチャーです。
キャンセルは無効にするといった意味で、過去の発言やふるまいなどを”無効”にするということです。
つまり有名人や政治家が10年前にネットに書いたことを、今の社会規範に当てはめて”無効にする”ことです。
つまり、「お前あの時、あんなことを言ってたよな、あれってセクハラ発言だし、モラハラだよな」と責め立てることを言います。
このキャンセルカルチャーは日本でも、猛威を振るっていますよね。
某音楽家は数十年前の雑誌インタビュー記事が槍玉に挙げられ、ほぼ存在を消されてしまいました。
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トランプ氏の2024年出馬が待望される理由
有名な話があります。
トランプが2016年に当選した時に、ワシントン・ポスト紙が有名なメッセージを掲げたんです。
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それは「民主主義は暗闇で死ぬ(Democracy dies in darkness)」。
この意味はいろいろな解釈があるのですが、あえてオレ流に言うとこうです。
「トランプが当選して、メディアを敵視し始め、メディアは権力に屈して何も言えなくなる。
メディアの報道の自由はなくなる、それはとりもなおさず民主主義の死だ。
なぜならば批判し、反対の意思表示をできるのが民主主義だからだ。民主主義は暗闇に堕ちたのだ。」
要するにトランプの圧政にメディアは屈するしかない、という半ばあきらめの捨て台詞なのです。
しかし、これには「逆じゃねえか」という声があるのです。
「何いってんだよ、お前らメディアが記事で偏見を垂れ流して、読者をマインドコントロールしてんだろ。
民主主義の要である思想や言論の自由を奪ってんのは、メディア側じゃねえか。ロシアのプロパガンダを笑えるかよ」
トランプはよくも悪くも、民主主義とは何かということに、くさびを打ち込んだとも言えるのです。
少なくとも、民主主義に対してトランプが一方的に間違っていて、既存のメディアが正しいとはならない、これをアメリカ人に強く意識させました。
これも分断を加速させたと、みます。
ニューヨーク・タイムズvsウォールストリート・ジャーナル
反トランプの急先鋒といえば、ご存知ニューヨーク・タイムズ紙です。
一方全面的じゃないですけれど、ややトランプよりなのが僕の愛読するThe Wall Street Journal紙です。
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僕は両方読んでいるので、よくそれがわかります。
ちょっとだけ無理がありますが、この2つを対立概念としてお話しましょう。
The Wall Street Journalは2020年7月14日号のオピニオン欄で、こんな記事を掲載しています。
「民主主義は暗闇で死んだんだ。でもトランプのせいじゃないDemocracy dies in darkness, but don't blame Trump」
記事の内容を一言で言えば、こうです。
「トランプをどうのこうの言う資格が、メディアにあるのかよ。
お前ら(反トランプマスコミ)のやってるのは、言葉狩りにすぎない。
トランプはお前たちをフェイクニュース呼ばわりしてるけど、一理あるよ。
ポリティカル・コレクトネス(現代における正しい言葉遣い)なんてカッコつけるなよ。言論の自由はトランプのほうが持ってるんじゃね?」。
方やニューヨーク・タイムズの態度は、この記事によればこうです。
「俺たち(ニューヨーク・タイムズ)の命は正しい言葉遣いだ。
社説にあんな言葉を使った編集長は、みんなでクビにしちゃおう。あんな記事では俺たちの社会的命が危ぶまれる」
とにかくニューヨーク・タイムズは、悪く言えば潔癖すぎ、よく言えば現代という流れの解釈に忠実です。
ウォールストリート・ジャーナル紙は、やはり経済紙なので現実先行という感じでしょうか。
これもアメリカ分断という現実の表れ、です。
トランプ再出馬の道理
さて、まとまりがなくなりましたが、結論として「民主主義の危機」としましょうか。
どういう意味かというと、今現実として言いたいことが言えない世の中になっちゃっているわけです。
それって、反対意見が言えない専制主義と同じなんじゃないでしょうか。
アメリカも、日本も席巻するキャンセルカルチャーは、明らかに行き過ぎです。
言葉狩りがあたりまえになっている社会が、トランプを待望するのは一種の自然のバックラッシュ(backlash反動)みたいなものじゃないでしょうか。
ついでに、じゃあ、どっちが正しいのよ、というあなたの問いにはどう答えたらよいでしょう。
The Wall Street Journal紙に、こんなヒントがありました。
「いま、プロライフ(pro-life中絶反対)なんて言うと、女性の権利を侵害するとんでもないやつだと思われる。
小さな政府なんて言うものならば、お前は正当な公的サービスを否定するのか、なんて言われちゃう」
これらを参考にして、僕は一つの答えを出してみました。
「結局、無難な言葉つかい、かな。
四方からの批判を恐れて、『これなら誰も傷つけない』という慎重を期したうえで。」
以上「トランプ邸ガサ入れ」ニュースに乗じて、オレ流の「アメリカ分裂」に関しての意見を述べてみました。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー