
新・ヒューマンタッチの時代がきた。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:生成AIによる機械的な言葉や音が世の中を覆い尽くしている。こんな時代だからこそ、ナマの声やAIの機械学習のかけらも感じさせない、ヒューマンタッチなコミュニケーションが求められるているのではないだろうか。
”肉声の時代”が来た?
その昔、ボイストレーニングを受けたことがあります。
その時、トレーナーの先生が面白いことを言っていたんです。
「君たち、女性は男性のどこに惹かれるか知っている?」
「顔?」「痩せマッチョ体形?」
違うんだ、声が7割さ。
多分にセールストークっぽくもあったのですが、当時からも得ない僕は、その話に感銘を受け、その先生のトレーニングを熱心に受講したのを覚えています。
今年はその先生の言うとおり、「声の時代」が来るかもです。
理由はきのうお話しした通り、音声AIが世の中にはびこりはじめ、肉声、生の人間の声が切望される時代になるかもしれないからです。
ポッドキャストとか、近年はやり始めた音声ストック型のSNSは、ますます流行るのではないでしょうか。
生成AIに取り囲まれた人類
昨日申し上げたように、音声AIの声質は人間に限りなく近づくでしょう。
しかし、音声の表面的なクローンはできても、人間そのものの完全なクローンはできるわけがなく、どこまで行っても上手なモノマネのレベルでしかありません。
生成AIと言えば、文章が思い浮かびますが、文豪の書きぶりをデータとして全部取り込めば、新作がたちどころに出来上がるでしょう。
手塚治虫氏のAI作品が、少し前に話題になったように。
我々の世界は急速に、AIが創作した音声や文章に取り込まれつつあります。
人を動かす言葉が出ない時代
生成AIに頼めば、学生なら課題を、社会人なら企画書や報告書を、教員ならばパワーポイントにきれいな絵図をつけた教材をたちどころに作ってくれます。
ポッドキャストも自分の音声クローンにホストをまかせておけば、「モノマネでもあなたの声を聞きたいファンが、群がってくれるかもしれませんし、YouTubeのコンテンツも音声AIが読み上げてくれます。
その結果、人類は自分の言葉でものが喋れず、書けなくなり、結果として人工的なAI言語が、ますます世にあふれることになります。
するとどうなるでしょう。
ビジネスは停滞します。
なぜならば、ビジネスとは人を動かすことだからです。
人を動かすには、人を動かす言葉を操れないとなりません。
言葉を紡ぐのに、いちいちAIを頼むのでは、人を動かす言葉はいつまでたっても出てこないでしょう。
「どんくささ」がカッコいい時代だ
「急がば回れ」です。
AIを使えば確かに速く、それなりの言葉を紡ぎ出し、文章を連ねてはくれますが、人を動かす表現には至りません。
そもそも、気の利いた言葉をひねり出し、なるほどと思わせる一行を書き出すのは、大変なことなのです。
そのためには地道な読書や思索、他者との対話、そして実際に表現する実践が必要です。
そうした努力をせずに、生成AIに頼ってカタチだけのアウトプットをしたところで、見る人が見ればこっけいなだけでしょう。
生成AIであなたの音声クローンを創ったり、小説や企画書や資料をバンバン作れば、AI時代の最先端をかっこよく生きている風を感じられるかもしれませんが、易きに流れる代償は大きいのではないでしょうか。
AIを否定するものではありませんが、AIの時代だからこそ、本当にかっこいいのは、最先端の流行であるAIに乗っかるのではなく、あえて創作に自力で向き合う「どんくささ」、ではないでしょうか。
野呂 一郎
清和大学教授