教育を中心にした新しい成果主義の提案。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:欧米のマネして成果主義を取り入れる企業が増えている。しかし、それは日本企業の美徳と強みをドブに捨てる愚挙だ。インセンティブとかいうやる気を与えりゃいいんだろう、それならば「自己開発」の喜びのほうがよっぽど強力だって。
成果主義は日本の強みをダメにする
きのうの人的資源管理の講義は、成果主義の是非がテーマで、ビデオで成果主義の現実をみながら、成果主義の理論を説明しました。
ビデオではある企業の成果主義を取り上げましたが、問題点が3つありました。3つのことに支障が出るのです。
1.チームワークの欠如
今まで要請されれば他の部門の仕事を手伝っていたが、成果の評価に繋がらないのでやめた。
これまであった協調、協力の文化、チームワークが消えていく・・・
2.全体観の欠如
個人の成果は上がったが、全体として利益は上がらず、成果の目標管理を会社でやることにした。
勝手に成果を上げりゃいいってもんじゃない。
結局は、会社が個人のパフォーマンスを管理するしかないんだって。
3.マーケティング知識の欠如
個人のマーケティング知識がないため、営業や販売活動に無駄が多く、空回りしている。
基本的な、4P、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの考え方を身に着けないと、ビジネスで勝てるわけはない。
なるほどな、と思わされることばかりですね。
結局、成果主義とは木を見て森を見ず、なんです。
本末転倒、と言ってもいい。
企業の利益を上げるための成果主義なのに、労働者個人をムダに競わせ、日本企業のよさである、協力、協調、チームでの達成感が損なわれています。
確かに、成果主義は個人のモチベーションを上げますが、企業全体、チーム全体の調和を壊し、結果的に日本企業の良さを殺しているのではないでしょうか。
モチベーションを変えよ
成果主義のキモは、モチベーションです。
個人の成果を給与に連動させることで、当然モチベーションは上がります。
しかし、他の部門を手伝わない、他者と情報を共有しない、人間関係がギスギスするという、負の副産物を生みます。
日本の組織が大事にしてきた美徳、強みをドブに捨てて、国際競争に勝てるのでしょうか。
僕の提案は、「モチベーションを変えろ」ということです。
いろいろ成果主義を見てきて、僕は成果主義は日本人に合わない、と思うのです。
でも、いまだ健在の年功序列的、人的資源管理では、できる社員、若者の不公平感はつのるでしょう。
そのフラストレーションは、別のモチベーションを与えることで解決しましょう。
それは「能力」です。
全社員を経営のプロに育てよ
成果主義の代わりに、社員教育を取り入れるのです。
科目はマクロ環境、戦略、組織論、マーケティング、財務です。
冒頭3つの成果主義の欠点でも指摘されましたが、成果主義を取り入れたって、個々人のマーケティングマインドがなければ、労多くして功少し、です。
社員教育の時間を長くして、マーケティング学習にまず力を入れましょう。
でもね、マーケティングは戦略と組織論を理解しないと、使えないんですよ。
マーケティングは組織とその正しい方向性である戦略と密接に関連しているからにほかなりません。
財務は最低簿記3級のマスターから始まって、財務諸表を見ることができる能力をつけさせます。
目先のカネをとるか、
一生役立つ能力をとるか、
という選択を従業員につきつけてやりましょう。
カネより能力
目先の仕事の成果が上がって、少しばかりギャラが上がるよりも、自分の労働者としてのスキルや能力が上がったほうが、どれだけ嬉しいでしょうか。
そして、経営コンサルタント級の能力をつけた従業員には、子会社を立ち上げさせ、社長にするのです。
当然、給与はそれにふさわしいものになります。
昔から「貧しいものにコメを与えるのではなく、コメを作る能力を与えよ、それが本当の親切というものだ」といいますが、まさにこれです。
どうでしょ、これが僕の「成果主義改革」です。
もちろん、企業にはリスクがありますよ。
利益よりも社員教育、っていう風土を作らなきゃならないってことです。
でも、結局はビジネスも根性や体力ではなくて、知性で勝負、だと思うんですけれどね。
しかし、ここで国際派の読者のあなたが、茶々を入れてくるでしょうね。
「飽和した国内市場で勝負しても、負け戦に決まってる。能力?その能力開発とやらのインターナショナル版を作んなきゃ意味ないんじゃない?」。
ごもっとも。
またそれは後日やりましょう。
野呂 一郎
清和大学教授