プロレス&マーケティング第9戦。再びW★INGに学ぶ「欠点すら愛される究極マーケティング」。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:エモーショナル・ブランディングの価値観と何か。W★INGに学ぶ「アバタもエクボ」戦略とは何か。プロレス的行動力こそマーケティングの手本だ。トップ画はhttps://qr.quel.jp/pv.php?b=3IAf9ES
エモーショナル・ブランディングの価値観
現代マーケティングのキーワードは「エモさ」であり、その理論的源流がエモーショナル・ブランディングと申し上げました。
プロレスとエモーショナル・ブランディングは密接な関係があり、昨日はその概要を説明しました。
今日はエモーショナル・ブランディングをさらに理解するために、もう一歩踏み込み、エモーショナル・ブランディングの価値観を探ってみましょう。
まずは野呂の著書「ナウエコノミー -新・グローバル経済とは何かー」に書いたそのままをここに記しますね。
エモーショナル・ブランディングの価値観①
消費者でなくパートナー(from consumer to people)
従来のブランドの考え方は、消費者はアタックすべき敵、でした。
「彼らの言語を読み解く、彼らのディフェンスを崩せ、戦略を立てろ」、などの企業で飛び交うかけ声は、消費者を敵と見なしている証拠です。
分析なんてしないでもいいんです。
客に好かれればいい、尊敬されていればいい、言い合える関係であればいい、これは大企業ではできない戦略です。
しかし、そんなにハッスルしなくても、消費者に喜んでモノやサービスを買ってもらえる方法があるのです。
それは互いの尊敬を元にパートナーシップを打ち立てることであり、それは双方にメリットがある“ウイン・ウイン(win-win)”なのです。
こうなると企業にとって消費者は最上の情報ソースにもなってくれます。
プロレス流解釈
結局エモーショナル・ブランディングの価値観は、「愛されること」なんです。
製品やサービスの良し悪しなんかじゃないんですよ。経営戦略やマーケティング戦略が、ブランドがどうこう、なんて関係ないんですよ。
ただひたすら、愛される存在であればいいんです。
でも読者の皆様はこうおっしゃるんですね。
「それが難しいから、戦略だのマーケティングだのに頼るんだろ?」
僕は言いたいんです。
「あなたはプロレスが足りない!」
W★INGから学べ
この連載の最初に出てきた、プロレス団体W★INGに学びましょう。
まさにW★INGとは、僕に言わせればプロレス史において「最もファンに愛された団体」なのです。
その象徴的出来事があります。
1.試合開始がいつも30分遅れる
W★INGの試合は開始予定時刻から、30分遅れるんです。でもファンは起こらずに待つんですよ。普通の団体、企業だったら暴動が起こってもおかしくありません。しかし、W★INGのファンは暴動どころか、大人しく待ってるんです。
2.だらしない団体経営者がカリスマ的人気
W★INGの創始者Iさんほど、ファンに愛されている関係者はいません。
実名をあげてもいいかもしれませんが、やめときます(笑)
選手のギャラ遅配(未払い)、借金の踏み倒しが常態化していました。
しかし、ファンはむしろそれを楽しんでいたのです。90年代はじめのSNSなんてない時代に、プロレス雑誌などに「I氏が某コンビニでバイトしてた」などというファンの投稿が大きなニュースになったことがありますが、これなどもいかにI氏がファンから愛されていたことを物語っています。
2年前だったかなあ、闘道館というプロレスファンにおなじみのプロレスショップで、東京03の豊本 明長(とよもと あきなが)さんがW★ING関連のイベントを行って、そこにゲストでI氏が来ていたんですよ。
W★ING崩壊から30年もたつのに、ファンはIさんを熱狂的に迎えたのです。
かくいう僕も名刺交換した時、興奮しましたよ。猪木にあった時と同じくらいの感激、でした。
W★INGっていう団体は、もうW★INGが、Iさんがいい、悪いじゃないんですよ、すきか、きらいか、それだけなんですって。
W★INGの例を上げましたけれど、要するにエモーショナル・ブランディングっていうのは「アバタもエクボ」ってことなんですね。
好きになっちゃえば、いくら太っていても、目が細くても、ブスでも(言っちゃった。でも差別用語じゃないですよ)、可愛いんです。(もともと美醜なんてないんですよ、すべて美は主観的なものですからね)
じゃあ、ファンに魔法をかけて「アバタもエクボ」状態にすればいいのか?
ビンゴです。そのとおりです。
プロレス流「アバタもエクボ」戦略
どうしたらファンに愛されるW★INGみたいな存在になれるのか。
お教えしましょう。
それは「あなたがやりたいことをハッキリさせること」です。
W★INGは当時「世界で最も危険なプロレス団体」と自らを称していました。
まさにこれがW★INGのやりたいことを、表しています。
僕は「世界最凶・最悪のプロレス団体」と呼んでますが、一緒です。
W★INGの前この代名詞は、おそらく大仁田厚率いるFMW(えふ・えむ・だぶりゅと読みます)だったと思うんです。
しかし、W★INGは史上最悪のデスマッチの数々、個性的な興行でFMWをあっさり超えてしまったのです。
愛されるためには、まず、自らがやりたいこと、自分の方向をはっきりさせることです。
しかし、ここでポイントがあるのです。
それは「やってみせろ」ということです。
W★INGはその行動を持って「世界最凶・最悪のプロレス団体」を証明してみました。
僕らがこの「エモいマーケティング」についてプロレスから学ぶことがあるとすれば、「衆人環視の元で派手な舞台で、自分の方向を見せること」がいかに、あなたの会社とファン(お客様)を結びつける効果があるか、ということです。
今日のプロレス&マーケティングを他業種に応用する
1.今日から製品やサービスをよくする努力などやめて、いかに愛される会社になるかだけ考えろ
その答えは流行になっちゃったSDGsをやることかもしれないし、もっとあざとく世の中の流れにへつらうことかもしれない。でもその答えはW★INGなのかもしれない。
2.口だけじゃなくて、身体で示せ
好きになってもらうには、自分をはっきりさせることだ。しかし、口だけじゃダメだ、行動で示せ。W★INGみたいに(笑)
3.W★INGから学んでも、Iさんに学んではダメ(笑)
愛されれば、あなたの会社がどんなことをしても許される、これは事実。でもIさんのマネをしちゃダメ。それは「プロレス」という異常な(笑)文脈だから。
4.プロレス団体だったら、W★INGを完コピしてもいい
3で話したように、プロレスファンと一般客は似ているようで、違う。一度ファンに愛されれば、ファンはどんなヘタレグッズでも買ってくれる。
でも世の中には、W★INGファン、プロレスファンのような市場があるかもしれない。
5.プロレスのリングを利用せよ
自分のやりたいことを発表するのは、なるべくど派手な舞台が効果的だ。
プロレスのリングを借りて新製品発表会などはどうだろう。新日本プロレスが数年前後楽園ホールで入社式をやったが、他業種も真似すれば?
新潟プロレスも、お手伝いしますよ。
5.普通のお客をW★INGファンにしてしまえ
これは高度な応用なのだが、あなたの会社のお客さんに魔法をかけて、プロレスファンにしてしまうのも面白い。要は「狂わせる」(笑)のだ。
どうやって?それはこれからこの連載を欠かさず読んでくだされば、自ずと見つかると思います。(まじ)
あと色々あるけれども、今日はこのへんで。
ではまた明日、W★INGしようぜ!(笑)
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー