トランプ再選シナリオの恐怖。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:トランプが再選したときの世界がどう変わるかのシナリオ。なぜ、ヨーロッパ、とりわけドイツがトランプ復権という悪夢に怯えるのか。日本の企業は?もちろん考えてないけれど、それも合理的か。
もしトランプが復活したら
NATO(北大西洋条約機構)vsロシア、これが現在の世界のパワーバランスの実態です。
でも、トランプがもし復権すれば、これは一瞬にして変わるでしょう。
トランプは「オレが大統領に復帰したら、戦争は即終了だ」と言っています。
それは、トランプが政権を握れば、即ウクライナに圧力をかけ、領土問題でロシアの言い分を飲ませることを意味します。
NATOの構成国に対しては、ロシアに有利な条件を飲むように働きかけ、アメリカ議会にはウクライナ支援をストップさせるという魂胆です。
ドイツは特にトランプの台頭を恐れています。
トランプ2期政権は、ドイツから米軍を撤退させることが確実だからです。
トランプは、アメリカNATO脱退も目論んでいるでしょう。
しかし、トランプが大統領に返り咲いたら、仮に脱退できなくても関係ありません。
NATOは国際条約ではありますが、結局はその実態はアメリカのカネ頼りで、アメリカの経済力で動いているに過ぎないからです。
トランプの一存で財政的サポートがなくなれば、事実上ロシアがNATOを支配するでしょう。
世界はロシアに屈するのです。
これは僕が言っているんではなく、ニューヨーク・タイムズの見立てです。(ニューヨーク・タイムズWeekly2023年8月27日号 Worries in Europe of another Trump presidencyヨーロッパが恐れるトランプ再選)
トランプ再選でポピュリズム再び
2016年のトランプ再選が世界に影響を与えた最たるものは、有権者に耳障りにいいことを吹聴するポピュリズムが世界、特にヨーロッパを席巻したことです。
その象徴がフランス大統領選挙でエマニュエル・マクロン大統領に敗れたものの、大健闘した極右政党の代表、マリーヌ・ルペン氏です。
ドイツではAfD(ドイツのための選択肢)が第3党に躍進、スウェーデンでは反移民的なスウェーデン民主党も台頭しました。
生活苦、物価高騰に加え、終焉を見せないウクライナ戦争で、庶民はますます過激な保守政党に肩入れし、トランプの再選でポピュリズムの第二波が世界を襲う可能性が大です。
民主主義が危機になる、それは覚悟しとけよ、っていう感じです。
日本企業はトランプ復活のシナリオを考えよ
トランプ再選となれば、間違いなく米国からのウクライナへの支援は、劇的に減るでしょう。
その場合、世界はどうなるのか、日本はどうすべきなのか。
中露が接近し、同盟国との結束が強まり、アメリカ以外の二極ができるでしょう。
アメリカは反中国を強めながら、ロシアとは接近という矛盾をはらんだ立ち位置になるでしょう。
しかし、厄介なのはトランプは、何をしてくるか読めないことです。
別に政治的な信念や理想があるわけではなく、すべてはその時々の自分の都合です。
つまりは、すべてはトランプの気まぐれで決まるのです。
ワルシャワにある戦時ファンド、ジャーマン・マーシャル・ファンド(German Martial Fund)のマイケル・バラノウスキィ(Michael Baranowski)氏はこういいます。
「トランプはすべての人にとって、不愉快なほど予測不可能だ(Trump is unpredictable to an uncomfortable degree for everyone)」。
つまり、トランプ再選時のトランプ大統領こそ、世界最大のリスク要因と言えるのです。
爆弾がいつどこでどうやって炸裂するかわからないなら、もうlet it beを決め込むしかないのかも、ですね。
野呂 一郎
清和大学教授