
ベーカー元国務長官の共和党再生戦略
日本人は戦略的な文章を書くのが下手
さて、昨日の続きのThe Wall Street Journal2021年6月7日号のベーカー氏元国務長官の寄稿ですが、非常に戦略的な文章です。一言でいうと、メリハリ、強弱、緩急があって、まるで一つのストーリーのごとしで読ませるんですよ。
それでいてちゃあんと抜け目なくメッセージは伝える。これが日本人はできないんです。英語だ、日本語だの話じゃないんです。この話はまた、今日のこのベーカー論文の分析が終わってからやりましょう。
あらゆる記事は事実と意見から成り立っていますが、それをまとめてみましょう。(ちょっと行間が狭いですね、noteのやり方よくわからずすみません)
事実
36%のアメリカ人は自分たちを保守派だと言っている
アメリカ人の25%以上は自分たちをリベラルと認めている
アメリカは依然として中央から右寄りの国である
先の大統領選では、多くの投票者がトランプを否定一方で、多くの投票者は保守的な共和党の政策を支持した
コロナ前、トランプ政権下で経済は絶好調だった。所得税も減らし、ビジネス規制緩和が経済を押し上げた
その時期アメリカは 670万も仕事が増え、同時に失業も50年ぶりの低い水準になった
これは黒人のアメリカ人にとって歴史上最も低い失業率である。
共和党は財政の使いみちについて厳しい。財政赤字に厳しい目を向ける議員が与党民主党にはほぼいない
ほとんどのアメリカ人は連邦政府の借金が GDP の100%を超えることを知っておりそれがまた増えると思っている
4人中3人のアメリカ人が膨らむ一方の国の借金を心配しており、3人中2人のアメリカ人は借金は不公平であり、子供に残すべきレガシー(価値ある遺産)ではないと言っている
アメリカは中国との競争に直面しており、そのリスクはソビエトからの脅威に比べて多元的領域にまたがる
レーガン大統領の時代、ソ連との冷戦末期、彼は科学的調査の費用が58%増加したと自慢していた
レーガン大統領は宇宙探査をアメリカがやらなければ、他国がやってしまうと危機感をつのらせていた
意見
共和党は候補者のカリスマに頼るのではなく、今こそ党是、党の主義主張を全面に出せ。そうすれば共和党の未来は明るい
共和党のリベンジへの道はかなりタフだ。それは認める
誰かの言うように「選挙は”盗まれて“」はいなかった。それは55の選挙結果を覆そうとした訴訟に全部負けた事実が示している
共和党に対して警告サイレンが鳴っている。これまでのように、党の原理原則ではなく、候補者のパーソナリティにフォーカスし続けるのであれば2022年の予備選と2024年大統領本戦では自爆することになるだろう
共和党は経済成長路線でアメリカをより繁栄させることに集中せよ
バイデン政権の予算計画は次の10年で12兆ドル(1200兆円)とは危険すぎる。この危険を政権はしてないかもしれないが、ほとんどのアメリカ人は理解している。
借金を減らすことはよい政策であるだけではなく、それは良い政治でもある
共和党員は科学的な研究開発をプロモートすべきである
共和党はQアノン陰謀論などの極端なポジションは避けるべきだ
共和党はアメリカ人の渇望をさらに刺激すべきだ。それはレーガンが「丘の上の輝く都市」、ジョージ・ブッシュが「より優しい、より紳士の国造り」としたようなイメージ喚起が必要だ
レーガン、ブッシュの主張は結構インクルーシブであった。現在の民主党と比べてもそうで、民主党はやることなすことアイデンティティがどうのと言い、国を引き裂くことしか考えてない
woke 主義が大手を振って歩いているようだが、それはアメリカのメインストリーム(主流派)によって共有されていない。
トランプが2016年に勝った理由の一つが、国民のポリティカル・コレクトネスに対してのうんざり感であった
選挙で勝つ重要な3つの要素を教えよう。1,経済 2.経済 3.経済、だ。共和党は常に成長を助ける政策、強い国防、小さな政府、アメリカ人の連帯、これらに常にフォーカスすべきだ。そうすれば、グランド・オールド・パーティ(GOP共和党のニックネーム、偉大な古い党)の未来は明るい
情報(記事)の分析は、事実と意見を割り出すだけでは十分ではありません。これを分析するものの、「情報の読み」、つまり、分析者の行間を読むチカラが欠かせません。以下、ちょっとトライしてみました。
行間
ベーカー氏はトランプの目立ち過ぎが大統領選の敗因だと思っている
ベーカー氏はトランプが起こした選挙裁判を苦々しく思っている
ベーカー氏は共和党の時期大統領選は、トランプもしくは彼のような自己主張の強い候補者は出したくない
レーガン、ブッシュは偉大だったが、それはサポートしてきたベーカーが偉いからだ
共和党の時期アメリカ大統領は、ブッシュやレーガンがやったように、なにか象徴的なシンボルをゴールとしてアメリカ人に意識させてほしい
いかがだったでしょうか。これ以上野呂がなにか情報を加えると、皆様が混乱すると思います。まずは、このベーカーさんが提示した、事実と意見、そして野呂が付け加えた行間を吟味して下さい。ここから相当なことが読み取れると思います。
今日もお読み頂き、ありがとうございました。
また明日お目にかかりましょう。
野呂一郎