プロレス&マーケティング第43戦新幹線車内販売廃止に学ぶ、マーケティング機会とは何か。
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:東海道新幹線車内販売が10月末で廃止。時代の流れとは言え、マーケティング的には機会損失が大きかった。それが何かを検証する。トップ画はhttps://qr1.jp/yk8NIA
鉄道という超優秀なマーケティング素材
JRは、まだまだ鉄道を、「人を時間通りに運ぶビジネス」だと思っているのではないでしょうか。
鉄オタという鉄板のマニアがいるのに、彼ら彼女らを厄介者扱いするだけで、積極的に金儲けの道具にしてやろうとの、いい意味でのマーケティング魂が不在です。
そもそも鉄道は電車の姿を愛で、写真におさめたいという欲望を持つ、鉄オタだけにアピールする小さい存在ではないのです。
それは1972年の鉄道開通から、ずっと日本人生活に寄り添う存在としてあり続けてきた、日本人の心の故郷なのです。
鉄道は、その存在自体が文化であり、日本人の精神的遺産なのです。
マーケティング的に見れば、言ってみれば不滅かつ最強の素材、です。
コロナで鉄道利用が激減、そのダメージも、今回の東海道新幹線の車内販売廃止につながっているのではないでしょうか。
JR側は将来の労働力不足に備えた、とか、人々の消費行動の変化に対応した、つまり車内販売が使われなくなったと言っているようですが、消費者からしてみればサービスが一つ減ったわけです。
車内販売も、運賃の中に入っていると考えると、車内販売の廃止は、実質値上げということになります。
これでいいのかJR?
マーケティングがJRを救う
JRの再生はマーケティングにあります。
鉄道が最強のマーケティング素材という事実を最大限に利用する一つの原則は、鉄道の多様性に富んだ魅力をビジネスに活かす、アントルプルヌアーシップ(企業家精神)です。
例えば、今回の車内販売中止で、JRは以下のことに気がついたはずです。
1.JRの活動をもっと記録すべきだった
例えば、今回の車内販売中止は、あとでまた述べますが、これをいいことに展覧会を開いたらいいのです。
1972年の鉄道開始から、駅弁を売り始め、ほどなくして車内販売が始まりました。
その時のメニューや車内販売の様子をもっとたくさん写真に収め、記録に残すべきでした。
JRは自らの一挙手一投足が社会にとって大事な歴史や記憶になり、将来ビジネスにつながるという意識を持って、それを意図的に見せるための保存にもっと熱心であるべきでした。
歴史の記録が、即ビジネスになるからです。
2.名物をもっと作るべきだった
JRは商売っ気、言い換えればマーケティング魂がたりません。
あのスジャータが発売した硬すぎるアイス、「シンカンセンスゴイカタイアイス」という大ヒットが生まれたのは偶然でした。
しかし、車内販売は「そこでしか買えない製品を置く」という、マーケティングの基礎がありませんでした。
シンカンセンスゴイカタイアイス、は一つの付加価値を持ち、車内販売が終わってからも、自販機などで売るそうです。
JRは、第ニ、第三のこうした車内販売の名物を作るべきでした。
3.廃止記念キャンペーンをやるべきだった
AKBだって、坂道グループだって、グループの誰かが”卒業”すると、卒業記念コンサートをやります。
もちろん卒業とは、若さが足りなくなったメンバーをリストラすることにほかなりませんが、ファンにとってのサービスともいえます。
JRは今回の車内販売廃止を奇貨として、記念キャンペーンとか、「車内販売の歴史をたどる」と銘打っての有料イベント、せめて「サヨナラ車内販売記念グッズ」くらいは作るべきでした。
4.エグいこともやってよかった
良くも悪くもJRという組織には、有形無形の圧力がかかることは想像に難くありません。
でも、時代が受け入れると判断したら、やっていいのではないでしょうか。
皆様はこう言うと、「どうせ、お前が考えることは、車内販売をメイド喫茶みたいにすることだろ?」とおっしゃると思いますが、それは女性蔑視につながるので、社会的に非難されること必至なので、できないです。
でも、例えば、季節によって制服を変え、撮影OKとしたらどうでしょう。
だめか、これもルッキズムに加担すると非難されるかも、ですね。
じゃあ、車内販売ガールズグループ、ボーイズグループを作って、地下アイドルを組織する、くらいならいいんじゃないでしょうか。
とにかく、車内販売というサービスに付加価値をつけることを、JRはもっとすべきでした。
「新幹線プロレス」が示唆するもの
さて、JRの車内販売廃止をネタに、マーケティングについていろいろ考えたのですが、鉄道というサービスのはてなき可能性について、JRはもっと考えるべきだ、ともう一度念を押したいと思います。
そうそう、最後にこれに触れなくちゃいけませんね、最近行われた「新幹線プロレス」です。
新幹線の車中で、プロレスをやってしまったんです。
新潟プロレスが以前、「電車プロレス」をやったことに触発されての、真似っ子に過ぎませんが(笑)、DDTというプロレス団体が、今度は新幹線の車中でプロレスを敢行したのです。
でも世の中は、これを受け入れたようです。
JRはこれを参考にギリギリを狙って、鉄道マーケティングの地平を切り開いて、日本経済の起爆剤になって欲しいと思います。
野呂 一郎
清和大学教授
新潟プロレスアドバイザー
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