カマラの敗因は「エンタテイナーでなかったこと」だ。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:経営学とは面白いモノ、サービスを提供すること。それに尽きるんだ。スピーチもしかり。とくにアメリカではつまらないスピーチは命取りになる。日本人だって容赦ないよ。もちろん「色には出さない」けどね。アメリカを唸らせる日本人政治家がでたら、世界は変わるって。さて、カマラはどうだったかな。
面白くないのは罪
また武智先生にきのうの僕の拙いnoteを゙ほめていただきましたので、皆様と共有したいと思います。
僕はいつも学生に言ってるんです。
「経営学とは面白いことである」「面白くなきゃ経営学じゃない」と。
しかし、現実は悲惨です。
ほとんどの学生が聞いてくれない。
そこでいつも自虐をかますんです。
面白いってことは、媚びを売ることではないですヨ。
でも、ある種それも混ぜないと、オーディエンス(お客さん=学生)によってはダメです。
一種の必要悪、ですね。
あざといことから入って、本質をつかまえるきっかけにしてもらう、です。
かっこよく言えば、ブッダの対機説法、つまり人それぞれにあった説き方をする、ということですが、遥かに遠いです。
岸田さんの議会演説で思ったこと
経営学の精髄は面白いこと、です、ぜえったい。
あなたが発するプロダクトは、すべて面白くなければなりません。
夏だったか、岸田首相が米議会で演説しましたよね。
あの時僕には、議会に居合わせた政治家たちの本音が聞こえてきたんです。
「チッ、退屈なスピーチだなあ、もっと気の利いたこと言えねえのかよ」。
アメリカでは、まさにこれも経営学で、つまらないスピーチをやると、その人の社会的地位に傷がつきます。
スピーチをやるからには、面白くないと命取りなんですって。
なぜ岸田さんのスピーチが面白くなかったか。
からです。
解説しましょう。
原稿を棒読みしている件
最低最悪です。
カンペ見て喋る演説と、そうでない演説、どちらが心に響きますか、ってことですよ。
もちろん、身振り、手振りたっぷり、情熱的にしゃべらないとダメですよ。
でも、原稿を見ないで話すって、必然的にそうなりますよね。
そもそも熱情と、思いが溢れてなきゃ、原稿を見ないでスピーチするっていう選択はできませんから。
岸田さんのスピーチは、アメリカ側のスピーチライターが用意したスクリプトを読み上げたものだとされています。
「なんだそれ、俺達、私達の考えを喋ってるぞ、笑止(笑)」と、オーディエンスである議員たちは、すぐに感じ取って白けたのです。
もちろん、彼ら彼女は大人だから、合いの手に拍手したり、最後スタンディング・オベーションなどの「形式」を踏むことは忘れませんがね。
質問を促さない件
僕だったら、Please interrupt me anytime, your question is welcome(いつでもチャチャを入れてください。質問歓迎)と、スピーチの冒頭で断りますね。
これは一番ウケますよ。
なぜならば、アメリカ人が大好きな、不敵をみせることだからです。
これは、世界最大のプロレス団体、WWEでも一番ウケる光景でしょ。
自信をみなぎらせるという、これ以上ない、アメリカ人が大好きな積極性を見せること、これができるかできないか。
もっとも、よほど自分の英語と「どこからでも来い」といわんばかりの教養に自信がないと、このセリフは言えませんが。
自信たっぷりを見せつける、っていうのが、それ自体がエンタテイメントなんですよ。
とにかく、スピーチは一方通行のものじゃないんですよ。
リアルタイムのネタがない件
用意したスピーチほどつまらないものはありません。
変化をいれるんです。
僕だったら聴衆の顔を見て、目があったら手を振りますね、まず。
そして、Thank you for your attention!(こっち見てくれてありがとう)と言いますね。
この手で、いいんですって。
これも立派なリアルタイムのネタなんです。
スピーチの途中で拍手が起こったら、これまたサンキューを入れて、そこでその人のネクタイでもほめて、会話するんです。
これでいいんですって。
もちろん、「この議事堂は、僕がアメリカ留学してた時のクラスの雰囲気に似てるなあ。でも、クラスメートはあなたがたと違って普段着で、もっとやりやすかったけどね」などと言えればもっといい、です。
でも、このくらいなら、あなたも楽勝で言えますよね?
聴衆を巻き込まない件
とにかくアメリカのオーディエンスは、黙ってませんからね。
ブーイングしたり、拍手したり、口笛吹いたり。
まさにスマックダウンの会場、そのものですよ。
これらに対応すること、できることが、エンタテイナーなんです。
あれ、結論を言っちゃったけれど、とにかく楽しませることっていうのは、聴衆を巻き込み、状況にあったことを言ってうまい「返し」をすることなんですよ。
また、そうした聴衆のフィードバック(リアクション)を促さないといいスピーチじゃないんです。
そこから、波が起こってうねりが生じることもあるんですって。
変化を読んでない
僕なんかも、学生が「トイレ行っていいですか」とかいうときは、「感心だな、日本人は普通黙って出てく。キミはしかるに、オレとコミニケーションを取ろうとした。それだよ、その態度こそが世界に通じる云々」とか言って、つまらない授業に変化をいれるんです。
これが、単調だった僕の授業の救いになるんですって。
この手で、学生の目を覚ましたり、少しトーンを変えて、場内をいいムードに持っていくことができます。
アメリカで大勢を相手にスピーチをするときは、聴衆の反応に敏感でなきゃダメです。
「あくびをしてる」「スマホいじってる」「寝てる」などの反応があれば、即、内容を変えましょう。
ここで重要なのが、アドリブをかますチカラです。
なぜ、カマラが負けたのか?
きのうTBSの報道特集で、局のアメリカ特派員が非常に興味深いことを言ってました。
「カマラさんのスピーチは、どこでもいつもおんなじ内容なんですよ。だから、聴衆が次の言葉がわかっちゃう。でもトランプの場合は、いつも違う。脱線したり、くだらないことばかりなんですが、観客は引き込まれちゃう」。
そういうことなんですって。
カマラは、スピーチがつまらないから負けたんです。
上の5項目すべてあてはまりますよね。
客を選べ
もちろん、オーディエンス(お客)との相性ってのもありますよ。
ファンのイベントであれば、ただ普通にやればウケるでしょう。
へたすりゃ、そこにいるだけで拍手喝采です。
僕がはじめて非常勤講師をやった、千葉商科大学がそうでした。
「プロレスの経済学」を授業でやっちゃった、はじめての大学です。
毎回、授業が終わると20本位メールが来て、「こんな授業を待っていた!」とかの反応があったな。
うれしかった・・
7年連続人気投票では一位になったし・・でも他の大学では冷遇です、今のところも含めて・・・
宮本武蔵的な、ヒクソン・グレイシー的な勝負論から言えば、「負けない相手を選んで戦え」ということになるのかもしれません。
でも、手強い敵と戦ってこそ、「面白くするスキル」は磨かれるのです。
明日も授業、手強い敵と、戦ってきます。
あ、そうそう、まとめてなかったですね。
スピーチっていうのは、パンチラインつまり、まとめの言葉で決まりますもんね。
えっと、そういうことなんですよ、スピーチは絶対に面白くなければならない、つまりエンタテイメントでなきゃ意味がないってことですよ。
でもね、考えてみれば、面白くない人が、面白いことを言うことはできないですよね。
だから、僕もあなたも面白い人にならなきゃならない、ということ、です。
エンタテイナーの答えは一つじゃないけれど、間違いなく言えることは「観客目線に立てるか」ということです。
野呂 一郎
清和大学教授