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ジョーズvsカイジ。恐ろしいのはサメじゃなく、人間。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:ジョーズのテーマは表向き「海洋スリラーmaritime thriller」だが、隠されたそれはもっと恐ろしい人間の欲望であり、それを中心においた経済システムである「資本主義」だ。それはあの「カイジ」とも通底する。

カネと嘘の間で揺れた作者

きのうのジョーズの続きです。

ジョーズの作者、ピーター・ベンチレーさんは、知ってたんです。

サメはやたらめったら人を襲わない、ことを。

サメは、環境システムに重要な役割を果たしている、益獣であることを。

でも、小説でも映画でも、「ジョーズ」はサメのおぞましい獰猛さ、人間に対する尋常でない敵意をこれまでかと描き、サメの恐ろしさを世界中に知らしめました。

嘘だとわかっていたんです。

サメは好戦的でもなければ、人にうらみをもつような生き物でもないんです。

ベンチレーさんは、今でもそこを突っ込まれるのですが、「フィクションですから」と言ってやり過ごしてきました。

ニューヨーク・タイムズにはこんな記述がありました。

彼の揺れる内心を描いたものです。

「プライドはある。これだけ多くの読者を、映画館に足を運んだ人を怖がらせた。

サメという存在もしらしめた。

でも、今だったらこんな作品は創れないだろう」。

ニューヨーク・タイムズWeekly2024年8月11日 50 years ago, a terrifying shark tale captured angst of the era(50年前恐ろしいサメの物語が、時代の不安をとらえた)より

海洋生物の研究が進んだ今は、正確でないサメの情報をもとに作った作品は、いくらフィクションとは言え、受け入れられないし、リアリティが欠ける分説得力がなく、市場に出たかどうかも疑わしい、そういうことです。

しかし、今はなきベンチレー氏は、内心罪悪感を抱えながら、自らの利益とウソをつくことの後ろめたさを天秤にかけたのです。

彼の葛藤は、資本主義に生きる我々に、今となっては示唆を与えたと言えるでしょう。

カストロがジョーズを礼賛した理由

フィデル・カストロといえば、伝説の共産主義者として知られています。

https://x.gd/dWxTw

1959年のキューバ革命でアメリカ合衆国の事実上の傀儡政権であったフルヘンシオ・バティスタ政権を武力で倒し、キューバを社会主義国家に変えた人物です。

そのカストロが、ジョーズのファンだというのです。

カストロの言葉です。

「ジョーズは素晴らしいマルクス主義の教訓だ。

なぜならばこの映画は、資本主義というのは、市場を回すためには、人の命さえ喜んで犠牲にすることを描いているからだ」(Capitalism will risk even human life in order to keep the markets going)

前掲ニューヨーク・タイムズ

カストロのこの言葉は、いろいろな解釈が可能ですが、僕は、「サメを暴虐な資本主義にたとえ、金儲けのためなら死んでも構わないという狂った人間を揶揄」したものととらえた次第です。

カイジとジョーズの共通点

カネがすべての資本主義をいやらしいまでに描いた名作、カイジ。

https://x.gd/cC8CV

資本主義をカイジで例えると、もっともふさわしいのは、利根川のこのセリフでしょう。

https://kawachi-lab.com/column/2020/08/13/teiai-kaizi/

ジョーズの作者・ベンチレーさんは、ここまでは非情になりきれなかったということでしょうか。

しかし、「ジョーズ」は今もあなたに、生き方を迫っているのです。

1.カストロで生きるか(超純粋社会主義者)
2.利根川で生きるか (迷いのない超資本主義者)
3.ベンチレーで生きるか(戸惑いの資本主義者)

野呂 一郎
清和大学教授


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