ツイッターのリブランディングは成功したのか?
この記事を読んで、あなたが得られるかもしれない利益:イーロン・マスク氏によるツイッター買収から1年。Xと名前を変えて同社をリブランディングした結果を検証する。ツイッターは「公器」であるべきという認識を考える。資本主義とツイッターのミスマッチ。
リブランディングとは何か
リブランディング(rebranding)、というマーケティング用語があります。
これは、ブランドのアイデンティティ、つまり人々からどう思われているかというイメージを変えることです。
具体的には名前やデザイン、シンボルを変えることです。
リブランディングには、プロアクティブなリブランディング(proactive branding)と、リアクティブなリブランディング(reactive branding)の2つがあります。
プロアクティブなリブランディングとは、企業がまだ成長の余地がある、イノベーションの可能性がある、あらたなお客さんをゲットでき、現在のお客さんとの新しい繋がり方があるはず、と考える時に行う、積極的な目的意識を持ったイメージチェンジ作戦です。
これに対してリアクティブなリブランディングとは、もう既存のブランドをやめたい、変えたい時に行うリブランディングです。
リアクティブなリブランディングが行われるのは、例えばM&Aしたとき、法的な問題が生じた時、詐欺などで悪いイメージがついた時、ライバルを潰したい時、独自のニッチ(自社だけの市場)を模索している時です。
そもそもリブランディングの必要があったのか
上記の理論で言えば、ツイッターのリブランディングは、プロアクティブなリブランディングといえるでしょう。
ツイッターをイノベーションしたい、新規顧客をゲットしたい、ユーザーとのつながり方を変えたい、そうおそらくマスクさんは考えているからです。
しかし、僕はそもそも、ツイッターをリブランディングすること自体が間違っている、と思うのです。
その理由は「ツイッターは確立された公器」だからです。
ツイッターは、電話、FAX、メールと同等の、人々に欠かせないコミュニケーション・インフラなのです。
マスクさんのやっていることは、「電話」を別の言い方に変えるようなものです。
もちろん、買収前のツイッターにはいろいろな問題がありました。
利益が上がらない、誹謗中傷が書き込まれる、ニセ情報、フェイクニュースが跋扈するなどです。
しかし、人々に重要な緊急情報を届ける、即時に人々をつなげるという、根本的な機能はツイッターのみがなし得るものです。
だから、ツイッターはすでに公器なのです。
そしてツイッターは、人々に認知され、確立された存在であり、名前を変えるなどして、リブランディングする必要がない、と言うよりも、してはいけないのです。
ツイッターを資本主義に組み込むな
ツイッターは公器だからこそ、その運営を資本主義に任せてはならないのです。
利益を得ようとすべきではないのです。
ましてや資本主義の権化の、利益しか考えない資本家にツイッターの主導権を与えてはならないのです。
もっと大事なことは、ツイッターの運営者は政治的なイデオロギーや自己の利益から、隔絶された存在でなくてはならないことです。
ツイッター上で政治集会を開いたり、前のツイッターが倫理違反を指摘して禁止したアカウントを復活させたり、やりたい放題じゃないですか。
あの人は(笑)。
百歩下がって、リブランディングを認めましょうか。
でも、現在、彼のその試みは、失敗ですよ。
その事実こそが、ツイッターが公器である証拠なのです。
Xっていう名前が浸透していますか?
マスコミだって今だに「元ツイッターのX」なんて言う言い方を変えていません。
リツィートをリポスト、何ていう言い方に変えてますけれど、世間は無視、ですよね。
いかんせん、リブランディングのセンスも悪すぎる。
明日また、この問題について突っ込もうと思います。(笑)
野呂 一郎
清和大学教授
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