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武道に学ぶ「黒帯というインセンティブ」。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:武道とは人間の本質を理解し尽くした体系であり、だから最強なのだ。その知恵は企業の採用システムにまで影響を与える。本当だ。

黒帯という分水嶺

最近、縁あって古流の空手を習っています。

もういろんな空手に触れてきました。

大学時代は糸東流、卒業してからは松濤館流、極真カラテから派生した芦原会館も経験し、やっと黒帯を取れたのは、また松濤館流の別の流派でした。

そして今は古流の空手の手ほどきを受けています。

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空手ってみんな同じじゃないか、と思っていたんですよ。

しかし、流派によってまったく違うことを思い知りました。

基本的な武道としての哲学に違いがあれば、技術体系も変わってくることはわかるのですが、立ち方から身体の使い方、拳の握り方まで違うのには、閉口しました。

これは合気道でも、その他の武道でも同じです。

流派を変えるごとに、一からやり直すつもりでやってきましたが、それまでに身についた身体の癖が、上達を妨げるということを思い知りました。

しかし、今回の古流空手挑戦は、ちょっと違う感じなのです。

動きがまったく違うのですが、その理を丁寧に教えてもらっていることもあり、過去に身に着けた空手の動きが、新しい動きを習得することを邪魔しない感じなのです。

黒帯という習熟ポイント

それはなぜだろうと考えたのですが、他流の空手で一応黒帯まで行ったからだ、という理解をするに至りました。

やはり、黒帯を取るまでに、練習、試合、人間関係等様々な試練を経て、その流派の思想と技術体系にどっぷり浸かることを余儀なくされるわけで、黒帯は心身ともにその武術を理解した証といえるのではないでしょうか。

もし僕が空手の黒帯を取得してなければ、古流の空手を学んでも、以前の空手と混同し、新しいチャレンジはムダになったのではないでしょうか。

仕事もまずは黒帯を目指せ

僕は、無能だったり、継続力がなかったり、忍耐が足りないせいで、何度も仕事を変えてきました。

でも、それは間違っていたのです。

せめて黒帯を取ってから、つまり仕事が一人前になってから、転職すべきだったのです。

銀行員はやめたというよりもクビになったのですが、せめて銀行マンとして顧客に役立つような知識と見識を持つまで務めるべきでした。

国際的な展示会の営業も、もっと展示会業界の仕事で、本質的なことをつかんでからやめるべきだった。

最近はそんなことを忘れたかのように、学生たちには「3年はやめんな。仕事とは何かをつかむのにそのくらいかかる。石の上にも3年ダーッ!

おバカな筆者

なんて猪木のマネをしている始末。

https://x.gd/ETo2E

笑っちゃいますよね。

要するに、武道も仕事も、ある段階にまで習熟する前にやめんな、もったいないぞ、ということですね。

黒帯というインセンティブ

経済って何か、というと僕はインセンティブ(incentiveそれをやることに対しての動機づけ)だと思うんですよ。

黒帯っていうシステムは、初心者に「黒帯までがんばるぞ!」というやる気をもたせるインセンティブ、なんです。

黒帯は特に宣伝しなくても、道に入った者たちの憧れであり、目標になります。

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ただ、武道をビジネスとして考えると、ふんぞり返って「◯◯流の黒帯だぞ、とってみろ」的な態度はよくないですよね。

僕の知っているある武道団体は、黒帯を取ると「世界有段者クラブ」みたいなものに自動的に入会できるんです。

黒帯の価値を、いろんなおまけ(笑)でもつけて宣伝すれば、黒帯になる前に辞める会員は激減するはずです。

武道のビジネスモデルって、なるべく長く会員にとどめておくことですよね。

黒帯を取ったら20年は辞めない、統計的にそんな数字は簡単に出るはずです。

武道の経済学は、ここがポイントではないでしょうか。

企業も黒帯制度を導入せよ

さて、武道をビジネスに応用しましょう。

せっかく入ってくれた社員が3年以内に辞めることは、企業にとってとんでもないマイナスであり、コストです。

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企業のみならず、社会にとってもコストです。

なぜならば、僕のように一人前になる前に辞めちゃうと、次の会社にそのつけが回るからです。

次の会社で、改めて一人前になるまで教育をし、機会を与え、叱ったりなだめたりしなくてはならないからです。

これは社会に対して、余計なコストを強いていることでもあります。

とにかく、新入社員には黒帯を取らせるまで、やめさせてはなりません

そのためには、やはり、黒帯を取ることつまり一人前になることに対して、インセンティブを与えましょう。

まず、僕が提案する「企業黒帯制度」は、黒帯の定義と取得基本年数を決め、取得したら100万円のボーナスを支給する、というものです。

企業黒帯の定義:
上司3人、同僚3人、部下3人から、「仕事の基礎と、新入社員を指導できるスキルを身に着けている」と評価されること。

取得基本年数:3年だが、1,2年の猶予は認める。

ボーナス:高くはない。3年以内に辞められたほうが、コストがかかる。

アルムナイ採用に備えよ

黒帯とって辞められたらどうすんのよ、という声が聞こえてきそうですね。

でも、それでもいいんですよ、そして3年かけて一人前にして、他社に取られたら馬鹿みたい、と言われてもいいんですよ。

なぜか?

それは、いま流行りの「アルムナイ採用」に大きなアドバンテージになるからです。

アルムナイ(alumni同窓生、卒業生)採用とは、一度企業をやめても、また出戻って来る社員を受け入れるしくみのことです。

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3年で黒帯を取って仕事に自信をつけて「ふふっ、ここで身につけたスキルを給料の高いライバル会社で使って、年収3倍だ」などと、ひとは取らぬ狸の皮算用をするんですが、世の中そんなうまく行かないじゃないですか。

そんな時、その転職社員は、3年で黒帯を取らせてくれて、ここまで育ててくれた古巣を思い出しますよね。

3年でやめられても、よくしてあげたことは彼は彼女は、決して忘れないで、戻ってくるでしょう、必ず。

僕は、今後の企業の人事戦略で重要なのは、この「アルムナイ雇用戦略」をどう差別化するか、だと思っています。

武道に学びましょう。

野呂 一郎
清和大学教授

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