みんないってしまった
「何処へ行くんだ?」
「壇上に行くんだ。やっと僕たちはステージで舞うことを許されたんだ」
「俺は行っちゃダメか?」
「ダメに決まってるじゃないか」
そう言い残して、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーは輝かしい壇上へ続く階段を堂々と上がっていった。
多様性を尊重する社会。彼らもやっと世間に認められてきた。だから彼らは壇上に上がることが許された。
「何が多様性だ!」
俺は下から役者たちに大声で訴える。
「俺はどうなるんだ! 何故俺はダメなんだ!」
だが……役者は気がづかないフリをして舞い続ける。さっきまでいたレズビアンたちも、楽しそうに舞っている。
「俺《ロリータ・コンプレックス》だって認められたい! なんで俺はダメなんだ! お前らと少し好みが違うだけじゃないか!」
ただ恋愛対象が幼いというだけだ。それだけだ。何が行けないんだ。
「何が多様性だよ! 俺だって壇上に行きてえよ!」
別にロリコンだといって、犯罪を起こそうと思わない。叶わぬ恋だと知っている。
ただ好きなだけなんだ。
「俺からしたら男が男好きなのも気持ち悪い! 女が女好きなのも気持ち悪い! けどお前ら健常者様はその気持ち悪い奴らを受け入れようとしている! なら俺も受け入れろよ! 気持ち悪いのは俺も同じなんだから俺も受け入れろよ! 自由にさせろよ!」
いくら叫んでも、涙を流しても、俺の叫びは届かない。いや、届いているが彼らには響かない。
「俺だって……ロリコンになりたくてなったわけじゃねぇ。普通の同世代の女性を好きになろうとしたさ。けど無理なんだ、俺はロリコンにしかなれねぇんだ」
がっくりと俺は、涙を床に落として項垂れる。
そう生まれてしまった。そこに俺の意思は何処にもない。
ウイーン
「……待ってくれ!」
突如、ステージの両端からレッドカーテンが現れ、壇上の様子を隠そうとした。
「俺を置いて行かないでくれ!」
急いで壇上に続く階段を駆け上がる。
「待って!」
壇上まで後一歩……「えっ?」
「気持ち悪いんだよ」
ドンと、俺は壇上にいる奴らに押され階段を転がり落ちた。
「社会に悪影響なんだよお前は。犯罪者が」
ボロボロになりながらも俺は、レッドカーテンの隙間に僅かに除ける段上を見上げた。
俺を突き落としたのは、LGBTQだった。
そしてレッドカーテンは完璧に閉じ、俺は力尽きた。
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