のり子

お腹が空いてない時とお腹が空いてる時の中間の時間が一番しんどいかも知れない

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お腹が空いてない時とお腹が空いてる時の中間の時間が一番しんどいかも知れない

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  • よみかけ。

    読みかけの本について、本と過ごす生活、日々のよしなし事と読書。 ——的な感じで書くエッセイです。 ルールは、「読みかけの本しか扱わない」「文字数、投稿頻度に規定なし」と決めました。

  • クァシンとアイの冒険

    設定をフリー素材にしました。 キャラも世界観も自由に使ってください。 どんな形式でも大歓迎です。 小説でも詩でも音楽でも絵でも良いです。 #ワールドザワールド

  • 文字ラジオ

    グルーブ感と感覚だけで書く即興の文章です。一応日記としての役割が果たせたらいいな。のり子。

  • 小説

    シリーズものでない小説はここです。

  • 世界詩箱

    詩置き場です。

最近の記事

巨大な友人

私はいつも読みかけで本を語る。 これもまた例に漏れない。が、他の本を語るのとは、これは少し違うのである。 いつ会っても面白い話をしてくれる友人がいる。彼を知ったのは二年以上も前になろう。もっとかも知れない。 彼はその紹介文からすでに魅力に溢れていた。 「夫を不慮の事故で亡くしたばかりの女は72歳。彼女への思いを胸に、独身を守ってきたという男は76歳。ついにその夜、男は女に愛を告げた——」 夏休み、祖母の家に帰省してるタイミングで、私は初めて彼を開いた。 嵐のように

    • 28 ワールドザワールドの女神の本分

       ワールドザワールドの女神とアイは巨大樹を出発して、もう二日目に突入していた。  遠く行ったところにある、センカ村へ向かっているのだ。  今までにもアイはこうやって、ワールドザワールドの女神に連れられ、いろんな村や集落に赴いていたが今回はずいぶん久しぶりに感じる。クァシンと仲良くなって以来、彼といる時間がずっと多くなったからだ。  ワルワルの女神の仕事。それについてかつてアイは彼女に聞いてみたことがある。  そのとき、ワルワルの女神はこう説明したのだった。 「女神の仕事の

      • パリ五輪、中上健次、言葉(7/29)

        どうもどうも 意味なく言葉書きたくなったのでこれ書きましょう。 ね。ね。 音楽を毎回紹介してましたが面倒なのでリンク貼ったりは辞めます。 最近はエロル・ガーナーかブイチューバーの曲しか聴いてません。エロル・ガーナーは「I'm In The Mood For Love」が一番好きで(なんならあらゆる音楽で一番好きになりつつある)、ブイチューバー関連では月ノ美兎の「みとらじギャラクティカ」こぼかなえる「HELP!!」夜空メル「かぷうぃん中毒」あたりが最近ハマった。 で、構成も

        • 杳子という小説 『杳子・妻隠』から

          先に結論。 杳子は小説である。 これが私のこの作品の読み方である。 直後の感想 まず、この作品を読んで最初に感じたことからメモしておく。 それは雰囲気に関することで、私にはどうにもこの小説の文章が、こちらに伝わって来ず、作品の内側だけで完結しているように思えた。特に第一章。 原因を考えてみるに、感覚表現が共感できないところにある。 山を降り谷底を歩く彼と、彼が出会った杳子が、谷底の景色に感じるその感覚は、ずっと私に共感のできないまま進む。 あるいはナイフとフォークを

        巨大な友人

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        記事

          ベーシックインカムは資本主義を秒で終わらせるのではないか。

          最近、きちんとヴィジョンをもって考えるようになりました。ベーシックインカム。BI。 簡単にいうと、国民全員に定期的に生活が可能な額の金を支給する。 生活保護の拡大版、連続でお年玉をもらえるラッキーな政策。じゃあ、働かなくていいやん、とか、嫌な仕事はやめて好きなことをできるとか、捉え方は人によりいろいろあるでしょうが、ベーシックインカムってそんな軽いレベルのものではないのではないかと思い始めてます。 ベーシックインカムが実行されるや否や、資本主義は秒で崩壊するかもと思えてきま

          ベーシックインカムは資本主義を秒で終わらせるのではないか。

          雑感 『14歳からのアンチワーク哲学 なぜ僕らは働きたくないのか?』

          読んだ『14歳からのアンチワーク哲学 なぜ僕らは働きたくないのか?』を読みました。 ざっくり読みをした上、ホモ・ネーモさんの記事に多く目を通せているわけでもないので、現在私の持ってる限りの情報から書きます。 ホモ・ネーモさんの記事を読み、考え方を知ってまず感じたことは、「ほとんど同じことを考えてる人がいた」ということでした。唯一『アンチワーク哲学』という看板だけに違和感があり、それは同じ思想にありながら最後の結論の部分だけ異なってるという状況からくるものでした。 しか

          雑感 『14歳からのアンチワーク哲学 なぜ僕らは働きたくないのか?』

          堀川くんの憂鬱

          「一旦、タバコを吸うのをやめようか」 私は、彼の口に引っ掛かったまだ火のついたばかりの四角いタバコを摘み上げた。 すこし残った煙だろうか。彼は残尿のようなそれを吐いて、ため息をついた。 「どうしたんだい。またしょげてるね」 「そりゃ、やる気もなくなりますよ」 「やる気かい」 「ええ」 彼は呆れたように首を揺らした。 私は話を聞こうと彼の隣に座った。これまでも何度かあったシチュエーションである。彼はこの近くに住んでいて、私は仕事終わりに通るのだ。遠くにビルが見え

          堀川くんの憂鬱

          曽根崎心中EDM

          2/11 近松門左衛門『曽根崎心中』を読んだ。 驚いた。あまりの衝撃にバイト先の食事会に遅れた。上司に叱られ席につき、会話をする間も私の頭に流れるのは曽根崎心中の音色である。 『曽根崎心中』は空疎であった。 私が驚いたのはその部分である。中身のない、空っぽの話なのだ。 何かの原型みたい。 と最初に抱いた感想はそれで、考えれば考えるほど、これは物語でなく、物語の枠の部分、形しかない。原型そのものである。 主人公徳兵衛の働く先も何をしているわけでもなく「職場」でしかなく、それ

          曽根崎心中EDM

          天台のメンタリティ

          ずいぶん長い間、天台宗がぼんやりとしていた。 自分なりにたくさんの本を読んで、さまざまな仏教に関して、知識に色がつき、周辺にある宗派や思想の順序立ち位置を把握しても、天台宗だけは輪郭を持たずぽっかりと空いていた。 それは私の歩いてきた書籍の道のりによるのでなく、おそらく天台宗側に理由がありそうである。今思い返してみても、天台だけは何故か、真言密教や浄土真宗が西洋哲学の言葉で説明されなおしていたり、近代以後思想の解釈をしなおしたりして、それを積極的に押し出し書籍化しているのに

          天台のメンタリティ

          シャーロックに関する事件

          やっぱりシャーロック・ホームズが好きだ。 ロンドンの寒空、背の高い男女がコートの襟を立てて行き交いする。 金具や木の軋み音、硬い蹄の音を立てて馬車が通る。 ホームズの部屋の散らかり、本や壁にかかった写真、何種類も揃えられたタバコ、床に転がる灰、使い古されたパイプと革のソファ。 奇怪な死体、辻褄の合わない証言、正体不明謎の人物、暗号。 いつでも素材は一流だ。考えうる限りの名産物がここに揃う。 郵便はよく分からないものを送り、家主はよく分からない人を泊める。民族の傷が疼く。謎の

          シャーロックに関する事件

          教養の壁

          石川淳『江戸文学掌起』の「横井也有」の章からの孫引きである。 横井也有の鶉衣に大田南畝が書いた序文である。 これを読んで……というより、これをまず読めるかどうかである。 なんとなく、噂になってる凄い本があって、その本の動向(——当時は今と印刷事情が違うので、版本で出回る数百冊、あるいは手書きで写して手にいれる他ないから本の動向は大切なのだろう)とその本の内容の素晴らしい事について書いてそう……ということは見て取れるのだが、それで合ってるのかも分からない。 教養がない上に、

          教養の壁

          壁の裂け目 短編小説

          ある年のゴールデンウィーク。 高校を卒業し、大学を待つ身である時岡は部屋で寝転んで漫画を読んでいた。 なんてことない休日。 何をする予定もない日だった。 突然の出来事。 部屋が揺れ、地響きのよう音が体に響いた。 地震かと思った。時岡は漫画を置き、安全な場所を目で探した。と同時に、部屋はまた無音に戻った。 窓の外を見るとさっきの揺れは何もなかったみたいに、人も鳥も何食わぬ顔でいる。 「あっ、えっ、何だったんだ」 今の揺れは勘違いか。スマホを見ても、自信があったと言う情報はな

          壁の裂け目 短編小説

          読書会曼荼羅なるもの(多読の真髄)

          随分まえに「読書界曼荼羅」なる単語がわたしのなかでほつと生まれた。定義らしい定義をこれまで書いたことはなかったが、あるにはあるのでそれを載せておきたい。 形式としては、女子博士の記事に出そうと思って随分前に書いた文章の転載である。 その文章を、解説・感想と共に見ていこうという趣旨である。 「博物学的読書のすゝめ」  私がここで行うのは新概念の共有であるが、これがその実「新」ではさらさらないのであって、単なる名付けにすぎない。つまり新行為の提出ではない。以前から一部で盛

          読書会曼荼羅なるもの(多読の真髄)

          適当読書指南

          さてわたしのり子が、ここ二ヶ月続けていること。 『よみかけ』なるエッセイシリーズ。 本シリーズは、夏休み後半のわたしの読書離れにより、リハビリ期間をもうけるはこびとなった。 今回は第二回「適当に本を読み散らかす」の段である。 自慢じゃないがわたしは適当に本を読むことにかけては、誰にも負けない。 わたしは、読み散らかすことに特化したいくつかの技法と心得をもっている。 それは元来わたしの億劫病に由来するものだ。気合いを入れると、どうしてもそれが長く続かないのである。しかし逆

          適当読書指南

          尾崎翠・梶井基次郎 対 消費社会 

          思わぬ再発見があったりして、文学の細部がもつ奥の深さを思い知る。 最近、金を使うという快楽があることを知った。 もう一ヶ月以上も前の話である。 バイトを終え帰り際にコンビニに目が引き寄せられた。 わたしは疲れていたのだ。単なる疲労というよりは、背中に毒の溜まったような疲労。こういう時わたしは頭がピリピリする。小さな頭痛なのだろうか。 気がついた時には夜の中に浮かぶ眩い店に入っていて、商品と光に包まれていた。お腹が空いた。家に帰ると晩御飯がすでにあることを知っていながら

          尾崎翠・梶井基次郎 対 消費社会 

          休肝日的なやつなのか、はたして

          休肝日とかいう面白い言葉。 まず語感がいい。口なじみがある。加えて、この一語にその日以外の生活が明らかに見えるのもいい。 どうやら現在わたしは休肝日的なものを過ごしているらしい。 アルコールではなく、エクリチュールにまつわる休みである。 ホロライブにハマって以来、読書時間はガクッと減ったが、学校が始まり読書離れはいよいよ進んだ。 こういう日々が数週間と続くと不思議な変化が起きる。 本を開くと同時に眠たくなるのだ。わたしにとって珍しい反応だが、これがここ数日「久しぶりに読む

          休肝日的なやつなのか、はたして