神様の住所 九螺ささら(著)
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詩人はこの世に生を受けてからすでに詩人であると、つくづく思う。
絵描きもそうだ。
日々の練習でそりゃあ確かに少しはうまくなる。
しかし限度ってもんがある。
持って生まれた才能を前にしてひれ伏すことが、多々あった私の人生。
がんばって生きようと思う。これからも。
九螺ささらの着眼点。
その表現力。
彼女の詩的センスはおおむね短歌で表される。
でも私は、彼女は現代詩を書いてもきっといいものを書くだろうと思う。
にもかかわらず五七五七七の世界に足を踏み込んだというのは、何か思うところがあったのだろうか。
器用であるのは間違いない。野球がうまいのにフットボールの選手になったみたいだ。
ずっと読んでいたい文章を書く人だ。
私もこの本を読んでいて、あっ、まずい、もうすぐ読み終わってしまう、と思って、読む速度を緩めたり、夜ふとんの中で強引に本を閉じることをした。
縦横無尽にはじける彼女の文章にすっかり魅了されてしまったのだ。
私は彼女の短歌と物事の切り取り方が好きです。
物事の切り取り方。
本書に書かれているテキストは、ふつうの人がやらない切り口のオンパレードだが、これらはすべて九螺ささらの発明である。
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