本14 螢川・泥の河 宮本輝
何しろ、映画が素晴らしくて原作を手に取ったのだった。「泥の河」。
そして読んだ原作が当然のことながら素晴らしくて、また映画に戻るという。原作映画原作映画と永遠にループしそうになった。
作者の宮本輝という人は、とても優しい人なのではないか。小説を読みながら何度もそう思った。率直な感想として。
貧しい子供らを決して邪険にしない。むしろとても可愛がる。手品を見せる。洋服をあげようとする。子供らを、自分の子もよその子も分け隔てなく大事にするそのシーンがとても感動的だ。何のこともなく普通にそれをやっていることとか。
あたりまえなのだと思う。これってあたりまえのことなんだと。
そうでない世の中が本当はおかしいのに、いつの間にか、現代は我が子にすら酷い事をやっている。そう考えるとこの物語は今こそ読むべき作品ではないだろうか。そんな気がする。
もうひとつの『螢川』は芥川賞受賞作だが、個人的には『泥の河』のほうが好きだ。