幸せとは、与えるものでも、与えられるものでもなく、 そこにあるもの。
という言葉を、行介(高橋克典)に宛てた手紙に
したためた冬子(木村多江)は、
「珈琲を挽く音、ベルの音、暖かな空気。
そこにいつもあなたがいる」
と続けて綴った
(先日の『珈琲屋の人々』最終回)。
それでもなお前科者の我が身に引け目を感じて
冬子への思いを伝えられない行介。
物語はそこに、冬子が命をかけて行介を守るという
劇薬を仕掛けて、
互いを「そこにある」存在にしていく。
「幸せか」と問われるとき人は、
何を思い浮かべるのだろう。
愛する妻か、子か、恋人か。
仮に天涯孤独であったとしても、
理不尽な苦しみに虐げられることなく
生きられる命があれば、
幸せと言っていい気がする。
さらに、ともかくも横になれる
寝場所があれば。
いつか独りで生きることになっても、
そう言って、私は笑う。