インフルエンサービジネスの終焉? 過剰消費に異を唱え”オネストレビュー”を求める若者たち【ポッドキャスト番組『グローバル・インサイト』文字起こし】
世界のビジネス・テクノロジー・ライフスタイル・カルチャーのトレンドを、世界各地の編集者・ライター・クリエイターが現地からお届けするポッドキャスト番組『グローバル・インサイト』。
この番組では、「ポッドキャストの中身は気になるけど、ゆっくり聴く時間が取れないよ!」という方のために、リスナーさんからの反響が大きかった人気エピソードの文字起こしをnoteで配信しています。
今回は「インフルエンサービジネスの終焉? 過剰消費に異を唱え”オネストレビュー”を求める若者たち」の回をお楽しみください。Spotifyやnoteでのフォローもお待ちしております(Photo by Mateus Campos Felipe on Unsplash)。
橋本 買い物する前にレビューとかって参考にする?
岡 僕の場合、本とかガジェットとか? 買ってはみたけど、実際は期待外れだったみたいなことってあるから。
橋本 だよね、分かる。でもさ、そのレビューが「実はサクラでした」とか「適当にしたレビューでした」とかだったら?
岡 それはやってられないね。
橋本 じゃあさ、ちょっとゴシップクイズなんだけど。
岡 お、なんでしょう?
橋本 例えば、カイリー・ジェンナーとかクリスティアーノ・ロナウドとか、いわゆるスーパーセレブのSNSの一回当たりの広告報酬ってどれくらいか知ってる?
岡 えっ・・・・・・インスタの投稿一回だよね? 1000万円とか?
橋本 うーん、ゼロが少ない!カイリーで1億3,000万円くらい。クリスティアーノ・ロナウドも1億円くらい、一回の投稿で入るらしいよ。一億よ? 一億!
岡 いいなあ(笑)。ものすごい額だね。
橋本 これはごく一部のトップセレブの話だけど、中には宣伝をしてほしいからって高額なPR報酬と引き換えに適当なレビューをするインフルエンサーもいるみたいなんだよね。
岡 闇だね(苦笑)。
橋本 そう。でも、消費者はそれに気づき始めちゃって。特にZ世代とかミレ二アルズはセレブやインフルエンサーによる広告が本当に価値のあるものなのか懐疑的になってきてて、広告の在り方が変わってきてるみたいだよ。
岡 たしかにその感覚は分かるなあ。
橋本 イギリスメディアでは、ワールドワイドの消費者のわずか4%しかインフルエンサーの宣伝を信用していないって報じてた。びっくりだよね。
岡 4%?全然信じてないじゃん(苦笑)。
橋本 そこで新しく出てきたのが、正直さを売りにする「オネストレビュワー」って呼ばれる存在。
岡 直訳すると、正直なレビュワー?
橋本 そう、例えば「メーカーからPR商品を受け取らない宣言」をした美容系YouTuberとか。これまでは新作コスメレビューとか流行ってたけど、これからは手持ちのコスメでどれだけバラエティー豊富なメイクができるかとか、エシカルな動画も流行りそう。
岡 「商売には走りませんよ」って宣言してるのね。
橋本 あとインフルエンサービジネスに潜む別の問題が「フェイクフォロワー」。フォロワーを売ってる企業があって、フォロワーやいいねをお金で買うっていうのが横行してるの知ってる?
岡 話は聞くけど、実際どうなんだろう?
橋本 ちょっと調べたんだけど、フォロワー1000人で5000円、1000いいねで2500円とか結構お手頃価格なの(笑)。例えば、今はフォロワー9000人だけど、1万人の大台に乗ったらPR報酬が大きく違ってくる、とかだとすると、チャチャっと1000人くらい買っちゃうインフルエンサーは中にはいるみたい。
岡 さっちもフォロワー買ってみる?(笑)
橋本 うーん、私は大丈夫(苦笑)。それかお年玉でフォロワー送ろうか?(笑)
岡 興味はあります(笑)。
橋本 あるんだ(笑)。でも、これを問題視する企業も多くて、例えばユニリーバなんかは「フェイクフォロワーを使ってるインフルエンサーとは仕事をしない」って宣言してて。今正直なレビュワーが求められてる。
岡 でも、そういうオネストレビュワーって商売としては成り立つの? 正直なクチコミが大事なのは分かるけど、続けるとなると難しくない?
橋本 「有料会員からのサブスクリプションフィー」で成り立ってるみたい。
岡 えっ!レビューを読むのにお金を払うってこと?
橋本 そう!今「価値ある情報にはお金を払う」っていうスタンスの消費者が増えてて、例えば、「NOスポンサーシップ、NOアフィリエイト」が売りの「Thingtesting」っていうイギリスのレビューアカウントが、正直なレビューサイトとしてすごく注目されているのよ。
岡 その人のレビュー読むのにいくらくらい?
橋本 だいたい1万円!一回払えば、ずっとその人の正直なレビューが読める。これを高いとするか安いとするかはその人次第だけど、その会員になるのに今600人くらいの順番待ちができてて、投資家からの評価も高いみたいだよ。
岡 すごい!その人はどんな製品のレビューをしてるの?
橋本 D2Cブランドの製品が多いよ。例えばタオルとか品質が比較的分かりやすいものから、眼鏡とかコスメとか評価に個人差がでそうなものまでいろいろ。
岡 へえ。
橋本 眼鏡なんかは、有料会員のレビューもあわせて公開してる。映画評論サイトの「ロッテントマト」的な感じだよね。質のいいレビュワーのレビュー数を増やして、できるだけノンバイアスな評価を届けようっていうテーマ。
岡 たしかに。
橋本 あと、そのアカウントを運営する彼女自身、VCファンド出身だから、その経験を活かした投資的な観点からのレビュー内容も人気の秘訣みたいよ。
岡 それは聴いてみたくなるかも。
橋本 ちなみに「ZOZOスーツ」もアイデアが面白いってレビューされてた!守備範囲広いよね。
岡 アイテムのセレクトが面白いね。こういうキュレーションって最近流行ってるもんね。
橋本 うん、世の中情報で溢れかえってるもんね。消費者はよりシンプルにキュレートされた上質なレビューを欲しているっていうニーズの現れって感じがするね。
岡 うん。正直なレビュワーの存在は、インフルエンサービジネスやこれからの消費の在り方をあらためるきっかけにもなりそうだね!
編集者/Livit代表 岡徳之
2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』『フューチャーリテール ~欧米の最新事例から紐解く、未来の小売体験~』。ポッドキャスト『グローバル・インサイト』『海外移住家族の夫婦会議』。
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