【読書感想】100分de名著~戦争は女の顔をしていない
ダイバーシティーが進んでいく現代社会における重要な問題として、ジェンダー差別が挙げられます。平等な社会を実現するために、全ての人に同じ支援と成果を求めることが必ずしも平等ではないと実感しました。立場や状況によって、必要としてることが異なっています。お互いの違いを理解したうえで対等に接することが、必要なことだと言えます。
アレクシエーヴィチの紹介
ベラルーシの作家/ジャーナリストである。2015年にはジャーナリストとして初めて、ノーベル文学賞を受賞した人である。聞き書きと呼ばれる上限文学という手法で、実体験者の声を直接的に伝える手法で、社会問題を描く作品を輩出している。デビュー作である「戦争は女の顔をしていない」と第二作の「ボタン穴から見た戦争」で、第二次世界大戦前後の体験談を語った作品を描いている。
印象に残ったこと
証言文学の特徴と人々の気持ち
人々から聞き出した話や情報には、うそや偽りの情報が混じっていることがあります。しかしながら、断片的な情報でも多くの人から聞き取りを行うことで、物事の骨格を見つけることが出来て、一つの形を見出すことが出来るようになります。そして、本音を聞き出すためには信頼を得ることで初めて知ることが出来ます。
また、生の声は常に変化していくものです。環境や風土が変わることで、今まで言えなかったことを発言できるようになるため、定期的にコミュニケーションを取ることが重要だと言えます。
証言文学は人の気持ちをそのまま受け止めることで、人々の気持ちをダイレクトに伝えることが出来るのです。歴史を語る上では、事実だけでなく、当事者の気持ちや感情も重要であるため、記録として残すために証言文学は優れています。
女性と戦争による差別
戦争は女性に合わないものであり、ジェンダー差別を生みだしていました。戦争に参加することで、生理が崩れたり、女性らしさを失う機会が増えていきました。その一方で、女性らしさを求められる反面、平等の労働をすることを求められたため、負担が二重になって女性にのしかかりました。
働けないときは、女性だからとしいたげられ、働けるようになった時は女性でないと言われる始末でした。必ずしも同じ事を求めることが、必ずしも平等ではないと感じます。
広告と宣伝による差別の流れ
消費社会でも使われている広告と宣伝は、人々を誘導するために国家も利用していました。当時のソ連は共産主義の建前として、男女平等と家父長主義で良妻賢母が求められていました。この2つの規範が戦争に参加した女性の差別を強めていき、戦争後も女性は差別を受け続けるようになったのです。
感情を伝えることの大切さ
感情を伝えるためには、愛を持って接することで、人と対等な立場で接すことが出来る共感に繋がります。下の立場に対する憐れみを持つ同情では、人の本音を聞き出すことは出来ないのです。そして、特定の人にのみ話を聞くのではなく、いろんな人から話を聞くことで、過剰な感情移入を防いで、全体像を見つけることが出来るのです。
苦しみこそが人を浄化させて、気高い人に成長させるとことがあります。それは、苦しみを乗り越えることで、人は成長するためだと言えます。