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「謀略」 — ひとつのキーワードで約1000文字歴史小説
起
戦国の乱世、天文年間のある国では、隣国を巻き込む合戦が絶え間なく続いていた。
国主の大名・斎藤修道はその野心を隠し、平穏な表向きの政を行いながら、影で大規模な謀略を巡らせていた。
修道の腹心である家老・片桐景隆は知略に長け、主君の命を受けて隣国の内通者を募り、敵城を内部から崩壊させる計画を立てていた。
景隆は「忠義を尽くすふりをしつつ、いつか己の名を刻む」と密かに野心を抱き、修道への忠誠と裏切りの狭間で揺れていた。
承
修道が狙うのは隣国の城を治める若き大名山中義弘。
彼は正義感と民への慈悲で知られ、家臣たちからも慕われていた。
しかしその徳を妬む者たちは少なくなく、景隆はその弱点に目を付けた。
景隆は義弘の重臣村瀬篤を買収し、修道への内応を約束させる。
村瀬は裏切りの条件として、彼の家族が安泰を保証されるよう求めたが、修道は内心では村瀬を信用していなかった。
数か月後、村瀬の手引きによって義弘の城内に火が放たれる。
混乱する城内で義弘の忠臣たちは必死に対処するも、村瀬の指示で城門が開かれ、修道軍が雪崩れ込んだ。
転
だが、村瀬は修道への裏切りの直前、密かに義弘へ情報を流していた。
義弘は城内の火災に見せかけ、兵を地下道に潜伏させて修道軍の不意を突く計画を練っていたのだ。
修道軍が城内を制圧しようとする矢先、突如として伏兵が現れた。
義弘の軍は知略に富む奇襲で修道軍を翻弄し、侵略の意図を見事に挫く。
片桐景隆は混乱の中で捕縛され、修道も撤退を余儀なくされた。
捕らえられた景隆は義弘に対面した。
景隆は覚悟を決め、義弘に「貴公もまたこの乱世の一部に過ぎぬ」と語り、戦の非情さを訴えた。
義弘は景隆の言葉に耳を傾けながらも、彼の罪を許さなかった。
結
景隆の処刑が執り行われる日、彼は最後に「謀略とは、信じる心を操る刃だ」と残し、静かに最期を迎えた。
その後、義弘の名声は高まったが、彼自身も景隆の言葉に揺らぎながら、乱世に生きる自らの在り方を問い続けた。
戦国の世での勝利とは単なる武力の行使ではなく、人の信義と弱さを理解することだと気づき始める。
修道は再起を図り、再び謀略を巡らせるが、義弘の名は次第に乱世を鎮める希望として広まりつつあった。