ジャズを軽く聴き始めたい人への軽い名盤紹介⑬『Helen Merrill with Clifford Brown』(1955年)
革命的ジャズ・ヴォーカル作品
こんにちは。
今日は本格的ジャズ・ヴォーカル作品をとりあげてみました。
このアルバムは、ジャズを少しでも齧ったことのある方なら、誰もが聴いたことがあるであろう歴史的名盤ですし、今でも初心者オススメのヴォーカル作品トップ10の上位にあるであろう名盤です。
まず、ジャケットから見てみましょうか。
怖いですね。往年の青江ミナかと思いました。しかし、思わずジャケ買いしそうな雰囲気は持っています。
ちなみに写っているマイクは、ノイマンの真空管マイクでしょうか
今買えば、復刻版の新品で50万くらい、当時使っていたビンテージものなら100万以上はします。
絶対にいい音がとれるやろ、と言いたくなりそうなマイクです。昔の機材は現代の先進的なデジタル機器と違い、完全にアナログな、すぐに壊れそうなものを使っているのに現代の音よりもよほどいい音がする、と思っています。このアルバムも少し音量を上げて目を瞑って聴くと、本当に目の前でヘレン・メリルが歌っているように聴こえます。思わず鳥肌が立ったりします。
さて、それでは中身に入っていきましょう。
パーソネル
ヘレン・メリル - ボーカル
クリフォード・ブラウン - トランペット
ジミー・ジョーンズ - ピアノ
バリー・ガルブレイス(英語版) - ギター
ミルト・ヒントン - ダブル・ベース(on #1, #2, #6, #7)
オスカー・ペティフォード - チェロ、ダブル・ベース(on #3, #4, #5)
オシー・ジョンソン - ドラムス(on #1, #2, #6, #7)
ボビー・ドナルドソン - ドラムス(on #3, #4, #5)
ダニー・バンク - フルート、バリトン・サクソフォーン
クインシー・ジョーンズ - アレンジ、指揮
主役は「You’d Be So Nice To Come Home To」
いきなり「Don’t Explain」。重たいバラードです。普通こんな重い曲は冒頭にもってこないですよね。普通はもっと軽やかな、素敵な始まりを予感させるような曲をもってくるんじゃないでしょうか。
このアルバムのアレンジ及びコンダクターはクインシー・ジョーンズです。曲順にまで口が出せるのかどうかはわかりませんが、多分、彼の考えではないかなと疑っています。なんせ奇才ですから。
そして次の曲が、このアルバムの最大の聴きどころである「You’d Be So Nice To Come Home To(帰ってくれたらうれしいわ)」でしょう。私なんか「You’d Be So ~」といえばこのアルバム しか思いつけないぐらいです。
他の名演を探すとなれば『Art Pepper with the Rhythm Section』ですね。
さて問題はこの邦題。大橋巨泉氏がつけたそうなんですけど、きっちり訳すと「あなたがいるハズのところに、私が帰れたら素敵だわ」という訳になるそうです。帰る人が入れ替わってしまいました。
しかし戦争で家に帰りたくても帰れない兵士達の間で人気になったらしいです。これでやっと意味が見えてきました。
この曲における最大の聴きどころは、クリフォード・ブラウンのトランペットソロです。至極の時間です。特に一番の美味しい部分は、ジミー・ジョーンズのピアノソロからソロを受け取る瞬間の入り方! まるで天上から急に降り注いできたような感じがします。
このブラウニー(クリフォード・ブラウンの愛称)のトランペットソロを、より際立たせるためか、直前のジミー・ジョーンズのピアノソロは、目立ったメロディーはあまり弾かず、単純にブロックコードのみを弾いていて音量も若干低いようにも感じます。ここら辺はクインシー・マジックなのかもしれませんね。
他の曲も魅力がたくさん詰まっています。特にラストの「 ‘S Wonderful」が私の一番のお気に入りです。
軽快な曲と、バラードをうまいバランスで作られたこの作品。一曲一曲を吟味しながら聴くと、ジミー・ジョーンズのピアノのバッキングは絶妙であり、要所にはミルト・ヒントンのベースソロも取り入れたりと、クインシーのアレンジが効いてるなーと思う部分が何か所もあります。
やはり女性ヴォーカル・アルバムの頂点の一枚だと言えるでしょう。
今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
次回をおたのしみに!
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