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Coze, KLING, Qwen, ... 中国製AIサービスの光と影 - 便利さの裏に潜む危険とは?

こんにちは!
ノーリーです。ChatGPT使ってますか?

流行が兆しつつある中国製のAIサービスについて、3名のプロに議論をいただきました。
 AIエンジニアの佐藤健太 (35歳)、
 AIインフルエンサー鈴木麻衣 (28歳)、
 ジャーナリスト田中太郎 (45歳)、
名前はいずれも仮称です。
本記事は、その議論をまとめたものです。

この記事は、大阪のIT専門学校「清風情報工科学院」の校長・平岡憲人(ノーリー)がお送りします。


1.中国製AIサービスの日本市場への進出

今年4月以降、中国から次々と革新的なAIサービスが日本市場に投入されています。代表的なものとして、チャットボットサービスのDifyやCoze動画生成AIのKLING大規模言語モデル(LLM)のQwenなどが挙げられます。これらのサービスは、優れたユーザーインターフェースと高度な機能で注目を集めており、特に20〜30代の若者を中心に人気が広りつつあります。

中国製AIサービスが支持される背景には、その利便性の高さがあります。例えば、KLINGを使えば、誰でも手軽に質の高い動画を作成できます。Cozeのようなチャットボットサービスは、自然な会話を通じて情報やサポートを提供してくれます。若いユーザーは、こうした先進的なテクノロジーに魅了され、積極的に利用するようになっていくでしょう。

しかし、こうした中国製AIサービスの普及には、見過ごせない問題点が潜んでいます。次の章では、それらのリスクについて詳しく解説していきます。

2.中国製AIサービスが内包するリスク

便利で魅力的な中国製AIサービスですが、その利用にはいくつかの重大なリスクが伴います。まず懸念されるのが、個人情報の収集と監視の可能性です。中国では、政府によるインターネット規制が厳しく、中国企業は当局の求めに応じてユーザーのデータを当局に提供する義務があります。つまり、中国製AIサービスを利用することで、知らないうちに自分の情報が中国政府に筒抜けになっているかもしれないのです。

AIエンジニアの佐藤健太氏(仮称)は、次のように警鐘を鳴らしています。「中国製AIサービスを利用することで、知らず知らずのうちに個人情報が収集され、中国政府の監視の目に晒されている可能性があります。」

また、AIアルゴリズムによるユーザーの行動や思考の操作も危惧されます。例えば、中国製のニュース推薦サービスでは、特定の政治的見解を持つ記事ばかりが表示されるように設計されている可能性があります。こうした情報の偏りにより、ユーザーの認識が歪み、知らないうちに思考が操作されてしまうリスクがあるのです。

さらに、中国政府がAIを自国のイデオロギー拡散の手段として利用している点も見逃せません。佐藤氏は、「中国製チャットボットは、特定の政治的見解を持つようにプログラムされている可能性があります」と指摘しています。こうした影響力が若者に及ぶことは、長期的に見れば社会の分断を招きかねません。

加えて、中国製AIサービスへの依存が高まれば、それが中国当局への服従を強いる手段として用いられるリスクも懸念されます。例えば、ある企業が業務の中核を中国製AIサービスに依存しているとします。もしその企業が中国当局の方針に反する行動を取れば、AIサービスの利用を停止するという脅しをかけられる可能性があるのです。

ジャーナリストの田中太郎氏は、「中国当局は、AIサービスへの依存を梃子に、企業や個人の行動を統制しようとするかもしれません。反中的な言動をすれば、AIサービスを止められ、事業継続が困難になるといった脅迫が行われる恐れがあります」と警鐘を鳴らしています。

つまり、中国製AIサービスは、個人の行動や思考を監視・操作するだけでなく、社会全体を中国の影響下に置くためのツールになり得るのです。私たちは、こうした地政学的なリスクについても十分に認識しておく必要があります。

中国製AIサービスには、利便性の裏に潜むリスクがあることを肝に銘じておくことが肝要です。次の章では、そうしたリスクが生じる背景にある、米中のAIをめぐる覇権争いについて説明します。

3.米中のAIをめぐる覇権争い

中国製AIサービスのリスクを理解するには、AIをめぐる米中の覇権争いについて知る必要があります。現在、AIは単なる技術ではなく、国家の競争力を左右する戦略的な資源と位置づけられています。中国政府は、AIを経済成長と軍事力強化の切り札と捉え、巨額の投資を行っています。一方、アメリカもAIの重要性を認識し、中国のAI覇権を阻止すべく、同盟国との連携を強化しているのです。

しかし、米中ではAIに対する姿勢や法規制に大きな違いがあります。ジャーナリストの田中太郎氏は、「アメリカではプライバシー保護や倫理的な側面に重点が置かれていますが、中国ではそのような制限が緩く、AIの軍事利用も積極的に行われています」と指摘します。つまり、中国では、AIの開発と応用において、倫理的な歯止めが効きにくい状況にあるのです。

また、中国はAIを軍事分野でも積極的に活用しています。自律型兵器やサイバー攻撃など、AIを駆使した軍事技術の開発が進められており、将来的には国家安全保障上の脅威になる可能性もあります。

こうした米中のAIをめぐる覇権争いは、私たち一般ユーザーにも無関係ではありません。中国製AIサービスを利用することは、知らずのうちに中国のAI覇権戦略に加担してしまう恐れがあるのです。次の章では、こうしたリスクに対して、日本がどのような対策を講じるべきかを考えていきます。

4.日本における中国製AIサービスへの対策

3ない運動

中国製AIサービスのリスクに対処するには、官民が一体となった多角的なアプローチが必要です。

まず、個人レベルでは、中国製AIサービスを「使わない、広めない、データを与えない」という「3ない」の原則を徹底することが重要です。利便性だけでなく、リスクについても正しく理解し、賢明な選択を心がけましょう。

技術者は、中国製AIサービスの高い技術レベルを認識しつつ、評価目的以外での利用は控えるべきでしょう。顧客に対しても、中国製サービスの提供は避け、安全性の高い代替サービスを推奨することが求められます。また、中国に向けて、AI開発に関する重要情報を公開しないよう注意が必要です。

政府には、中国製AIサービスに対する適切な規制が求められます。アメリカやインドの対応を参考にしつつ、日本の状況に合わせたルール作りを進めるべきです。ただし、日本発のAIサービス開発に対する政府の介入は最小限にとどめ、民間ベースでの投資を見守ることが肝要です。

むしろ政府は、AIの社会実装を促進するため、規制緩和に力を注ぐべきでしょう。現行の法制度には、AIの活用を阻む障壁が多く存在します。それらを見直し、イノベーションを加速させる環境整備が急務と言えます。

5.メディアとインフルエンサーの役割

Soraを先取りするKLING

中国製AIサービスの功罪を広く知ってもらうには、メディアの果たす役割が大きいと言えます。田中氏は、「メディアとしても、中国AIの功罪について多角的に報道し、議論を喚起していく必要がある」と主張しています。AIがもたらすメリットとともに、中国製サービスに潜むリスクについても積極的に伝えていくことが求められるでしょう。

また、インフルエンサーも、中国製AIサービスを紹介する際には、常にリスクについて警告を発するべきです。鈴木麻衣氏は、「フォロワーに対して、AIサービスの選択について注意喚起をしていきたい」と述べています。便利さだけでなく、プライバシーやセキュリティの観点からもAIサービスを選ぶよう呼びかける姿勢が大切と言えるでしょう。

メディアとインフルエンサーが連携し、中国製AIサービスの問題点を広く訴えかけていくことが肝要と言えるでしょう。ただし、AIの健全な発展のためには、日本国内の取り組みだけでは不十分です。次の章では、国際社会との協調の必要性について論じます。

6.国際社会との連携とAIの健全な発展

健全な人間社会の発展にAIが貢献する

中国製AIサービスの問題は、日本だけでなく世界的な課題でもあります。各国が自国の利益だけを追求するのではなく、協調してAIの健全な発展を目指す必要があります。田中氏は、「AIをめぐる世界的な課題に対しては、国際社会と連携し、AIの健全な発展を促進する必要がある」と訴えかけています。

例えば、AIの倫理基準や安全性評価などのルール作りは、国際的な枠組みの中で進められるべきでしょう。個人情報の取り扱いや、AIの軍事利用の制限など、グローバルな合意形成が望まれます。同時に、各国が協力して、信頼に足るAI技術の研究開発を進めていくことも重要です。

日本としては、自国の優れたAI技術を生かしつつ、国際社会との連携を深めていくことが求められます。佐藤氏は、「AIは国家の枠を超えた取り組みが求められる分野だ」と指摘しています。日本が率先して、オープンで透明性の高いAI開発を進め、世界の模範となることが期待されます。

7.結論:AIの可能性とリスクのバランスを取る重要性

これまで見てきたように、中国製AIサービスには利便性とリスクが同居しています。私たちは、AIの可能性を最大限に引き出しつつ、負の側面にも目を向ける必要があります。鈴木氏が述べているように、「AIは私たちの味方にもなりますが、使い方を誤れば脅威にもなり得ます。バランス感覚を持つことが大切です」

そのバランスを取るためには、技術者、インフルエンサー、ジャーナリスト、そして政府が協力し、それぞれの立場から問題解決に取り組んでいかなければなりません。AIリテラシーの向上、日本発のAIサービス開発、国際的な連携など、多角的なアプローチが求められます。

中国製AIサービスの功罪を正しく理解し、適切に付き合っていくことは、若い世代に課された大きな責務と言えるでしょう。AI時代を生き抜くための知恵と勇気を持つことが、これからの日本に求められています。


この記事は、大阪のIT専門学校「清風情報工科学院」の校長・平岡憲人(ノーリー)がお送りしました。

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平岡憲人(ノーリー)
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