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【旅行編】怒涛の115系の旅①

懐かしの「唸り」を求めて

「ウーン、ウーン、ウーン」私は何をしているのか?悩んでいるのか?運を求めているのか?トイレで息張っているのか?

正解は、115系電車のモーター音です。115系といえば、国鉄時代の近郊形電車。兄弟形式の113系と共に、湘南色やスカ色といった伝統色をまとい、さまざまな路線で活躍していました。115系は山岳部対応ブレーキを搭載しているため、平坦地よりも山岳部や郊外の路線で多く活躍しています。ところがどっこい、近年では関東や関西の都市部から姿を消し、今では岡山〜広島〜山口地区などに残るのみとなっています。岡山地区でも、来年から新型車両227系に置き換わることが決まっており、引退の日もそう遠くはないかもしれません。

今回は知人と青春18きっぷを使って、引退がそう遠くはないと思われる、西日本の115系に乗りに行きたいと思います!

ホテルから朝焼けの姫路の街。空のグラデーションに新しい1日の始まりを感じる。

旅の始まりは姫路で、朝6時台に出発。12月となると寒さも厳しいですね。さてここ姫路からは早速山陽本線の115系に乗ります。

ちなみに姫路には播但線という路線もあり、ここには今では稀少な車両となった、国鉄103系も走っています。国鉄103系は高度経済成長期に製造され、全国さまざまな路線で活躍していた通勤車両です。播但線のほか加古川線でも活躍しており、兵庫県ではまだ元気な姿を見ることができます。

さて、話を本題に戻し、115系を楽しみましょう。この115系、もともとは違う色でしたが、少し前から黄色一色に統一されています。合理化を目指したのでしょうか。「真っ黄色」なのですが、合理化が国鉄末期を連想させることから、「末期色」などと呼ばれることもあります。黄色い車体はテカテカとしていて綺麗ですが、何とも威厳のある重々しい顔。さすがは国鉄車両ですね。

黄色が運の良さをあらわしているような115系。

そしてラッキーなことに、かつての面影を残す車内の編成でした。JR西日本では、古い車両でも延命工事を受けて元気に活躍していますが、車両の状態によって工事のメニューも異なっているようです。この編成は、車内にはあまり大きく手が加えられておらず、国鉄時代の面影が残る車内でした。

壁はレトロな緑がかった色、シートはえんじ色に近い色で、床はグレーと茶色の間のような色でした。またドアの横は2人掛けの狭いロングシート、窓に合わせて4人掛けのボックスシートが並ぶ、115系らしい座席が残っていました。

つっちーは1970年代の高度経済成長期にタイムスリップしたのだろうか。

ワインが好きな人は瓶を手に持ちながら銘柄や説明書きをじっくり眺めると思いますが、鉄道ファンはここを見ますね。車内のプレートです。プレートは新しいものになっているようですが、「クモハ(制御電動者・普通車)115」はなかなか見応えがあります。

クモハ115-320さん、よろしくお願いします。

さて車内を色々見渡してみましょう。まず「網棚」はまさに「網棚」でした。というのも、最近はどちらかというと「荷棚」と呼んだ方がよいでしょうか、棒タイプ、軽量アルミ、ガラス素材などが多く、デザインが凝ったものも多くなっています。115系は機能性を重視した網棚。シンプルでかっこいいですね。ここで、写真を白黒に加工してみましょう。国鉄車両としての魅力が一層高まります。

今ではあまり見かけなくなった網目状の棚。
普通列車での運用がメインだが「窓側」「通路側」のプレートもある。
リクライニング機能などはなく、座面もシンプルだが、これはこれで味がある。

さて、兵庫県の姫路駅から115系に乗りましたが、実は時間帯によっては長距離運用が体験できます。この列車は何と「三原駅」行き。相生駅、岡山駅、福山駅といった新幹線の主要駅を越えて、広島県の三原駅まで約3時間、一本で乗り通すことができるのです。途中、沿線には紅葉で色づく、綺麗な山々を眺めることができました。本日の最終目的地は柳井港を経由して周防大島になります。

さて、115系が走り出しました。抵抗制御という古い制御方式のため、「ズン、ズン、ズン」と列車が加速する度に前後に衝動があります。モーターがしずしずと音を立てていき、どんどん音は高くなっていきますが、それを追いかけるように低い唸り音を出します。まさに「機械が生きている!」という実感を持たせてくれるような車両です。幹線として線路が整備されている山陽本線だったためか、乗り心地は結構よかったです。115系はコイルバネ台車を採用しているので、独特の「突き上げるような揺れ」が特徴的です。

姫路駅を出るとしばらくは住宅やマンションが立ち並んでいます。この辺りは大阪から新快速で1時間強で行けるので、関西地区のベッドタウンとして発展しているようです。よく行先表示でみられる「網干(あぼし)駅」も通ります。ここには網干総合車両所があるので、始発・終着駅として使用されることが多いのです。ほどなく新幹線との接続駅である、相生(あいおい)駅に到着します。

相生駅を出ると、赤穂線が海側を通り、山陽本線が山側を通る形で路線が二股に分かれます。今回は山陽本線に乗っていたので、山側を走り抜けていき、途中からはのどかな平原と山が見えるようになります。カーブも多くなり、115系が得意とする山岳地帯を走り抜けていきます。やはり、115系の走りには迫力がありますね。

秋から冬にかけての、山色の変化を楽しむ。

のどかな風景を見ながらしばらく乗っていると、岡山駅が見えてきました。駅前にはビルやマンションが立ち並んでおり、都会です。さて、何やら明るい朱色の車両たちが見えてきました。これだけ勢ぞろいしているの光景はなかなか絵になりますね。この車両は吉備線を走るキハ40系で、吉備線は全線が電化されていないため、ディーゼルエンジンで走る車両になのです。115系と同じく国鉄時代の車両で、現在も一部路線では元気に活躍しています。

発展した駅前に朱色のディーゼルカーが沢山並ぶ。キハ40系の色を見ると、サーモン、イクラ、鮭、明太子が食べたくなる。

岡山駅からほどなく走ると倉敷駅に着きます。倉敷は歴史的な建造物、風情ある街並みが残る観光地として有名です。何と駅のホームにも、伝統的な「なまこ壁」と呼ばれる壁模様があしらわれています。駅は本物ではなく塗装なのですが、リアルに再現されていて、倉敷らしさや風情を感じますね。

倉敷は白壁やなまこ壁が随所にみられる。

岡山や倉敷を越えてぐんぐん進んでいくと、広島に入り、福山駅に着きます。福山駅からは再び海側を走り、途中尾道駅を通ります。尾道もあまりじっくりみたことはないのですが、観光地として有名な場所です。古民家や路地、街中の階段、細い道といった好奇心をくすぐられる街並み。そんな光景を見ながら再び進んでいくと、ついに「三原駅」に辿り着きました。今回は三原駅の外には降りませんでしたが、1567年に毛利元就の子息である小早川隆景が築いた三原城の跡があります。

ついに広島県内まで来たぞとパシャリ撮影。

ちなみに、115系には編成によってリニューアル工事の内容が異なる、と先ほどお伝えしましたが、乗車していた車両も前の編成と後ろの編成とでは、仕様が大きく異なっていました。後ろの115系は内装に大きく手が加えられています。転換可能なクロスシートに改造されており、同じJR西日本の221系などに近い仕様になっています。少し、窓割と座席の位置が合わない箇所がありますが、シートピッチがゆったりしていて座りやすいです。

西日本の3ドア車のスタンダード的な内装にリニューアルされており、座席カバーも付いている。

ここで次の列車までかなり時間があったことと、その列車がひとつ前の糸崎駅始発であったため、一駅だけ折り返して戻ることにしましょう。糸崎駅は新幹線の駅ではありませんが、実に多くの列車の始発・終着駅になっています。というのも、駅前は大きな貨物ターミナルと車庫があり、機関区としての役割を果たしている駅なのです。しかし、寝台列車や特急列車、急行列車が多く走っていた以前に比べると、主要駅としての地位は若干低くなってしまったようです。

そんな糸崎駅ですが、色々な115系が停車しており、奇跡的にカラフルなコラボレーションを見ることができました。乗ってきた車両と同じ黄色の115系のほか、高崎線、宇都宮線や上越地区でかつて見られた湘南色の115系もいます。さらには、綺麗な水色の115系 「SETOUCHI TRAIN」も見ることができました。こうしてみると、どんなカラーリングも似合っていますね。まさに、どんなファッションをしても美形なモデルさん?と言った方がよいでしょうか。

糸崎駅の看板を撮ろうとしたら、なにやら素敵な115系同士がコンニチハ。
鮮やかな3種類の115系。のどかに日向ぼっこをしているようだ。

少し待っていると、ここから山口県の岩国駅方面に向かう車両が。むむ、今度は近代的!そうです、これは「227系電車」で、西日本ローカル線区の期待の新鋭です。短編成やワンマン運転に適した形式で、広島地区では赤色の塗装となっています。この車両「Red Wing」という愛称が付いており、広島を象徴するカラーリングとなっています。それゆえか「カープ色」などとも呼ばれています。

ダブル227系。カッコ可愛い前面とと鮮やかな赤色がモテ要素だ。
Red Wingの車内。座席も赤系の色でまとめられており、白い壁で引き締まっている。

朝が早かったため、知人も私もかなりお腹が空いてきてしまい、広島周辺で途中下車をすることに。少し広島を過ぎた「横川駅」も中心部に近いことから、横川駅近くのお店で「広島風お好み焼」を堪能しましょう。広島風は、お好み焼きに焼きそばが入っているのが特徴です。「お好み焼きを食べようか?」「焼きそばを食べようか?」と迷った時には、どちらも食べましょう!ということで。実際にかなり美味しかったです。そういえば、マヨネーズをかけるのを忘れていたことに気づき、マヨいなくマヨも堪能しました。

食欲をそそる広島焼きのスペシャルに感動。健康診断でお腹周りを指摘されるも、好きなものを食べた方が健康になるという理論に基づき堪能。

その後は再び227系「Red Wing」に乗車し、岩国駅を目指します。この辺りは結構混んでいましたが、嚴島神社で有名な宮島を過ぎるとガラガラになってしまいました。やはり観光地は人気ですね。

岩国駅にはIWAKUNI COFFEEという素敵なお店があり、ここで紅茶を購入。飲みやすく爽やかな味を堪能しました。

喫茶店の窓を思わせるこのショットは、いわずもがな115系3000番台のユニットサッシ。

さて、ここから再び「115系」に乗ります。ただしこの115系、ちょっと特殊なのです。一般的な115系は片側3か所にドアがありますが、この115系は片側2か所にしかドアがありません。その分、シートがズラリと並び、快速や特急列車のような趣向です。窓もユニットサッシが並んでおり、国鉄末期に関西地区の新快速向けに製造された117系に近い印象です。観光地区も走ることから、広島地区のサービス向上のためにこのような仕様になっているようです。一部は仕様の似ている117系から編入された車両もあります。

115系3000番台の車内。少しシートの生地がくたびれているが、これはこれでよい。

115系3000番台のシートでゆったりとくつろぎながら、ユニット窓から景色を楽しみます。柳井港が近くなると、山陽本線の車窓には、何とこんな海が。広大な瀬戸内海を我が物にできる、何とも幸せな瞬間です。対岸には目的地の周防大島が見えてきました。何と豪華なお出迎えでしょう。

素晴らしい海。思わず歌を詠みたくなるが、不勉強を自覚し詩を取り下げるつっちーであった。

さて、15時前頃、1日目の目的地である「柳井港駅」に到着しました。愛媛県の松山方面に向かうフェリーの玄関口でもあり、名前の通り港に近い駅となっています。駅は非常に静かですが、付近には列車に並走するように綺麗で広い道路が通っており、「静」と「動」が感じられる、素敵な港町です。ここから周防大島に向かいましょう。

午後の陽射しを浴びながら、ノンビリと時間が過ぎる感覚を抱く連絡通路。
海と反対側には豊かな自然と山々が広がる素敵な駅。
列車接近案内もかなりレトロ。「通過列車の場合もあります」に「了解です」と言いたくなる。

さてここからは周防大島を散策し、本日は島に泊まることとします。周防大島へは、柳井港駅の隣の大畠駅付近から橋を渡って行くことができます。周防大島は、瀬戸内海で淡路島、小豆島に次いで3番目に大きい島です。

つっちーは知人の案内もあり生まれて初めて行きましたが、とてものどかで、自然豊かで、海が綺麗な良い島でした。都会の喧騒を離れ、自然の中に身を置くと、人の温かさというものにより気付けるものです。移住してくる方もいるようですが、島から出ていく方も多く、人口は減少の一途を辿っているとのこと。

島ではいろいろな発見ができました。厳島神社のような島の「白鳥八幡宮」も見ることができました。

水面に鳥居が綺麗に反射していて、芸術的である。

怒濤の115系の旅、1日目はここ周防大島に宿泊します。夜、空を見上げると、綺麗な星が沢山見えました。都会より暗く、空気も綺麗なので、雲がなければ生きたプラネタリウムを体験できます。

今私たちが見ている星は、何千年前の光でしょうか?もしかすると何万年、いや何億年も前の光かもしれません。


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