最好映画。012 「夢の涯てまでも」1991年。再掲
ヴィム・ヴェンダース爺が黎明期のハイビジョンを使って、 日本ロケもした摩訶不思議ムービー。 1991年に観た158分はかなり短縮されたダイジェストみたいな印象があって、ヴィム・ヴェンダース本に載っていた、ペーター・ハントケ(詩人にして、ベルリン・天使の歌の脚本家)曰くの、ファーストカット9時間が見たくてたまらなかったんです。と思って30年、出ました。ありがとう!ザ・シネマ!(のオンライン)288分(4時間48分:(;゙゚'ω゚'):のディレクターズカット。観れました。お話は世紀末。捨て鉢で旅するクレアが怪しいゴーグルを携えたトレヴァーに惚れ込んで追っかけ回し(お金を取られたと言う理由もありますけど)、9ヵ国目にしてようやく追いつき、オーストラリアの中央部で、科学の知を集めた、視覚をダイレクトに脳に送り込む装置の実験に没頭する、本当に摩訶不思議な筋立て。盲目の母親に全世界に散らばる家族の姿を見せようと9ヵ国を巡ったトレヴァーは偉かったんですけど、道行が雑すぎて、各地にしこりを残して、その追っ手たちがみんなオーストラリアに集まっちゃうし、なぜかみんな憎めない輩で、トレヴァーの父親が行う人類初の試みをみんなで待つ始末。原子力衛星の連鎖爆発で、世界中の電子機器が壊れるというSF的な背景もあるんですが、なぜか悲壮感は全くない、ハリウッド映画っぽくない。本当の悪者が出てこない、のんびりゆったりした映画です。9ヵ国ロケでも全く動じなかったロビー・ミュラーの撮影、山本耀司の衣装が全編素晴らしいです。全然SFちっくじゃない街の描写、たまに出てくるSF小道具が歴史を感じさせます。ソニー製のテレビ電話とか、ネットを使っての人探しのUIとか、たまに出てくる未来のクルマとか、プロダクションデザインもさりげなくて、それ見てるだけでも楽しいです。ソルヴェイグ・ドマルタンの不思議さ、ウィリアム・ハートの儚さ、サム・ニールの安定具合、マックス・フォン・シドーのわがままっぷり、ジャンヌ・モローの可憐さ、演技陣もみんな好き。視覚装置の映像をSony PCLが作っていて、今見ても遜色のないデジタルアート的な世界を見れます。288分に増えて驚いたのは、リスボンのレストランとサンフランシスコのバーのシーンと、世界を巻き込んだお父さんのワガママでした。158分版しか観てない人は、是非観て欲しいです。「ジャスティス・リーグ: ザック・スナイダーカット」が242分なので、長さは驚かないです笑。