eternal flame…永遠の愛 4
~前回のあらすじ~
悦子の回想シーンから
悦子はエジプトのフルガダに初めて行ったことを
思い出していた。
アミールと2人だけのバケーション…
完璧なロケーション紅海広がるシチュエーション
向かう長距離バスでの出来事が悦子の気持ちを
盛り上げたり…不安にさせていた。
今回は第4話。
悦子とアミール…どんな心の変化があるのでしょう
どうぞ、お楽しみください!
カイロを出発してどれくらいの時間が
経ったのだろう…
車内は驚くほどエアコンが効いていて、
悦子は肩にかけてあったカーディガンに
袖を通した
外は気温40℃は超えるエジプト。
一体この街からエアコンが無くなったら、
どうなってしまうんだろう?という疑問が
頭をかすめる。
悦子の横ではアミールが口を開けたまま寝ている…
「あっ!私と似てる」悦子はとっさに思った。
よく子供達に
「お母さん、口開けて寝てた!あははは!」と
よく笑われたものだ。
悦子はそんなアミールの寝顔が
たまらなく愛おしく
抱きしめたくなる衝動を覚えるくらいだった。
そして、とても癒される感覚だった。
口を開けたまま寝ると、口の中がカラカラとして
喉に違和感を感じることもあることを
悦子は知っていたのもあり、
アミールの口を指で閉じようとした時、
アミールは目を覚ました。
「あ、ごめんなさいアミール…
口が開いていたから」
アミールはニコッと微笑んで、悦子の手を握った。
「安心しすぎて、つい寝てしまったよ。
こんな安心感、久しぶりなんだ…癒されるんだ」
アミールは悦子の手をいっそう強く握った。
悦子はなんて言い返せば良いのか言葉が
見つからなかった。
”私もよ”
こんな簡単な言葉が出せない自分を残念に思う
気持ちがよくわからなかった。
悦子は言葉にできない思いを伝えるには
手を握り返すこと…これしかできなかった。
悦子とアミールは手を握り合ったまま、
いつの間にか深い眠りに落ちていた…
何やら、周りが騒がしい…ん?
バスはいつの間にか休憩のために
ドライブインに停車していた。
アミールは大きなあくびをし、行こう!の
合図を悦子に送った。
冷え冷えの車内から一気に熱風の砂漠に
ポツンとあるオアシスに到着しようだった。
「お腹すいていないかい?」
「私は大丈夫よ。飲み物が欲しいなぁ」
「OK、待ってて」そう言ってアミールに
渡されたのは…
ホットカフェラテ💦だった。
アミールは満足そうに手を腰に当てながら
風呂上がりの牛乳を飲んでいるような
スタイルでホットカフェラテを飲んでいた。
そんな彼の姿に、
”ま、しょうがないか…確かにアイスとは
言わなかったし…”
と、やんわり諦めることに。
「悦子、あと2時間で到着だよ!」
悦子は内心…2時間もあるのかと思ったが
横でウキウキしている彼を見たら
これもエジプシャンタイムなんだろうと
思うことにした。
バスに戻り、アミールがフルガダが
どんなに素晴らしいところなのかを説明
してくれた。
「僕はとにかく泳ぐのが好きなんだ!
スイミングのコーチもやっていたし、
オリンピックの選手に選ばれそうにも
なったんだよ…でも、断ったけどね」
「えっ!どうして?断ったの?」
「僕は泳ぐのが好きなんだ。人と争ったり
するのは好きではないんだ。それに自分の
ペースで泳ぐことが最高に気持ちがいい!
これをわかっているから…」
悦子はアミールらしいなぁ…と思った。
エジプトを訪れる前にアミールの泳ぎに対する
熱意みたいなことは聞かされていた。
悦子は自分が泳げないことを伝えてはいたが、
彼と一緒に泳げたらいいなぁ…と思っていたので
来る前にスイミングスクールに入会したのだ。
しかし、通っても通っても全く上達しない…
水に浮くことができないので、コーチは
半ば諦めていたようだった。
”少しでもいいから、泳げたらいい!”
悦子は休日も自由解放されている時間帯を
狙って、自主練に励んだ。
1,2,3,パッ!お風呂でも顔を水につけ
1,2,3,パッ!
ある日、いつものように自主練をしていると
25メートルクロールで泳ぐことができたのだ!
すぐにでもアミールに連絡したかったが、
内緒にしておいて驚かせようと思っていた。
「悦子、エジプトのイメージってどんな感じ?」
「そうね、来る前は男の人は頭にターバン巻いて
いて、とにかく暑くて、ラクダが移動手段!
そんな感じがしてたけど、
そんな人はいなくて…すごく都会な所だって
思ったよ。みんな優しいし、親切で、
どことなく日本に似ているところがあるって
感じかな…」
「エジプトに海があるって知ってた?」
「スエズ運河ってのは学校の授業でやったから
河があるのは何となく知ってたけど…
フルガダは知らなかったし、紅海ってのも
よくわからなかった」
「これから行くフルガダはダイビングの聖地
っていうくらい、素晴らしい所なんだよ。
君が来たら、絶対に連れていくと決めていた
んだ!」
悦子は一瞬、彼をVisa目的、体が目的とか
疑った自分が恥ずかしくなった。
「ありがとう、アミール。あなたがお気に入り
の場所なら間違いないわね。
もうちょっとで着くのね。」
その時、バスの上を爆音で何かが通過した。
「何?何?すごい音なんだけど!」
悦子は驚いてアミールの腕をつかんだ
「あれは戦闘機だよ。エジプトの戦闘機は
最強だよ。日本はどうだい?」
悦子は軍事についてあまり知識がなかった。
「アミール、日本は軍を持たないのよ…
戦争でたくさんの人が傷つくでしょ?
それも大半は罪もない子供達、女性、
お年寄り…原爆の悲劇もあったからこそ
もう二度と戦争はしない…日本はそういう
国よ」
「本当にそれでいいの?相手が攻撃してきたら
どうするの?やられっ放しじゃないか!
僕は必要最低限の武器や兵力は持つべきだと
思うんだ。日本はアメリカが何とか守って
くれると信じているんだろうけど…」
アミールが言っていることはもっともなところも
あり、悦子は何て返そうか考えていた。
「悦子、話を変えよう!その国、その国には
事情ってのがあるよね。これはあくまでも
僕の意見だから、気にしないでほしい。
僕は目の前でテロが起こったり、毎日が
平和だと約束された国に住んでいないから
どうしても、構える姿勢が身についているん
だと思うんだ。
日本が平和で穏やかな国だから
武器も兵力もなくていいんだよね。なんて素敵
な国なんだろう…羨ましいくらいだ」
悦子は気が付いたらアミールの手を
さすっていた。
当たり前の平和や安心、安全がない国…
今日生きていることが奇跡の国…
だけど、怯えて暮らしているわけではなく
一瞬、一瞬を大切にハングリーに生きている
それがエジプトなのかもしれない
イスラムの訓えというより
この一瞬は今しかないとわかっているから
隣人を愛する気持ちが彼らの優しさだったり、
親切心なのだとアミールの言葉で
全てがわかったような感じだった
悦子はそんなことを考えていると
自然と涙が流れた…
「ごめん、ごめん。この話は
もう終わりにしよう…
悦子、もうすぐ到着だ」
バスは海とは無縁のターミナルに着いた。
「あれ?海はここから遠いの?」
悦子は周りを見渡した。
「タクシーで今日のホテルに向おう!」
アミールは慣れた感じでタクシーの
ドライバーと何やら料金の交渉をしている
ようだった。
「悦子、OKだよ!さぁ、乗って」
悦子は軽くドライバーに挨拶をして乗り込んだ。
周りにはお店もない一本道を車はひたすら走った。
エアコンもついていないタクシー、
窓を全開にして熱風を浴びながら悦子は
車のスピーカーから流れるエジプシャンな曲
を不思議なくらい懐かしく思った。
初めて聴く曲、初めて見る景色…なのに
”ただいま”と思えてしまう
何だろう?はじめてを思い出すような感じ
実際、飛行機で初めてカイロ空港に
着陸した時は、涙が止まらなかった
アフリカ大陸が
”おかえりなさい!”と迎えてくれたのだと
信じてやまなかった。
アミールは始終ドライバーと談笑、
何を言っているのかはわからなかったが、
楽しそうにしている彼を見ているだけで
悦子も楽しかった。
車は大きなホテルのエントランスに止まった。
悦子はあまりの立派なホテルに驚き、
すぐに値段のことを考えてしまっていた。
車を降りて、レセプションに向かう途中
アミールは悦子にソファーに座って待つように
指示した。
待っている間、夜を共にすること…について
不安と期待とが入り混じっていた。
アミールは悦子に手招きをした。
”なんだろう?”
「悦子、手首を出して」
アミールはそう言って左の手首にホテルの
リストバンドを巻いた。
「このホテルにいる間はずっと身に着けて
いてね、このホテルはオールインクルーシブ
だからレストランもプールもバーもこれが
必要なんだ、OK?」
「わかったわ。部屋は?」
「あ、そうそう…これは君の部屋のカードキー」
”えっ?君の部屋の?”
悦子は同じ部屋に泊まれるもんだと思っていた
「ね、アミール…あ、ん、何でもない」
”同じ部屋じゃないの?そんなの嫌よ…”
なんて恥ずかしくて言えない
「どうしたの悦子?なんでもないわけないな…
その顔は」
アミールは悦子の顔を覗き込んだ。
次第に不機嫌になっていく自分が嫌だった悦子は
思い切って、アミールに聞こうとした時、
アミールはそれを察していた。
「悦子、ここはイスラム圏なんだ。
婚姻関係でない男女は同室に泊まることも
公の場でキスもハグもできないんだ。
僕だって君とずっと一緒の時間を過ごしたい。
僕はここに君を連れてこられただけで幸せだ。
さぁ、着替えて海にいこう!
びっくりするくらいの美しい夕日も見られる
よ」
悦子は言いたいことはたくさんあった。
だけど、きっとそれを言ってしまうことで
アミールを責めるというより
イスラムを責めてしまうような感じがした。
わかっていたこと、知っていたことが
こんな形で現れることに
胸がチクッと痛んだ。
悦子はどうせ来たんだから、楽しもう!と
ウジウジしていた気持ちを切り替えた。
「OK、アミール行きましょう!」
ちょうど、その時、飛行機はフルガダに着いた。
「恭子さん、ちょっと恭子さん起きて!
フルガダに着いたわよ」
悦子は恭子の肩をゆすった。
次回、eternal flame…永遠の愛 5
お楽しみに♡
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