eternal flame…永遠の愛 9
〜前回のあらすじ〜
悦子の回想シーン…
2回目のフルガダへの旅。しかし、今回は2人きりではない…アミールの友人とクライアントの女性も一緒。何でも勝手に決めてしまうアミールに違和感を覚えてしまっている悦子。
これは国が違うからなのか?それともただ単に
彼自身の問題なのか?
そんな思いを抱いたまま向かう道中に起こる
葛藤。回想から覚めるように、現在の住まいであるフルガダに雑誌記者の恭子と共に到着するが…
今回もお楽しみください♪
「悦子さん!めっちゃ広いプールじゃないです
か!」
恭子は見るもの全てが新鮮ではしゃぐ姿が
とても可愛いと悦子は感じていた。
「アミールの希望でもあったのよ。海は近い
けど、プールは必ず欲しい!って。
中古物件だし、築年数は大分経ってるんだ
けど、いろんなところを
リノベーションしたら、私たちの願い通りの
家になったのよ」
アミールは悦子の「私、ここに住みたい!」をずっと覚えていた。
無邪気にはしゃぐ悦子の姿をどうしても忘れられない…
夢を叶えてあげたい。それだけだった。
しかし、フルガダは世界有数のリゾート地。
それなりに値段もする。
所詮、今のアミールの稼ぎだけでは物件を購入することは
とてもハードルが高かった。
転機が訪れたのは今から3年前…
世界はコロナという得体のしれないウィルスに翻弄されていた。
日本でも多くの企業の衰退、飲食業界の閉店が相次ぐ中、
エジプトも同じ状況だった。
悦子とアミールも6年前に会ってから何度かの機会を逃し、コロナ禍に突入。会うことを完全に遮断されてしまっていた。
2人の思いは一緒。あの時に会っていれば…
後悔は先には立たない状況を創り出してしまった。
連絡が完全に途絶えたこともあったが、どちらからともなく
また連絡を取り合って今に至っている。
そんな最中、フルガダのリゾート別荘を手放す人たちが多くいた。
アミールは親しいブローカーに何かいい物件が出たらすぐに声をかけてほしいと伝えていた。
良い物件があるけど一度、見にくるか?
ブローカーからの電話にビビッと来たアミールはその日の仕事を全てキャンセルして、フルガダに向かった。
その物件はドイツ人の夫婦がオーナー。
少し築年数も経ってはいるが、手直しをすれば悦子が望むであろう
ホームになると思ったアミールは即決した。
アミールが望むプールもあった。
アミールはこのことを悦子には伝えていなかった。
彼女の驚く幸せそうな笑顔がみたい!
アミールは改装の打合せの為に足しげくカイロからフルガダに通った。
もしかしたら、悦子はやっぱりここには住めない…というかも
しれない。
そんなことが時々頭をかすめたがアミールは大丈夫、大丈夫、大丈夫と
自分を落ち着かせていた。
「わぁ♡ 悦子さん、めっちゃ愛されてる!」
「あのね、恭子さん…これ、ホントのホント
なんだけど、私ねフルガダに彼と住みたい!
って思った時にヴィジョン・ボードを作った
のよ。ご存知かしら?ヴィジョン・ボード」
「ビジョンボード???何ですか、それ?」
「実際、恭子さんにお見せした方が早いわね。まずは中に入りましょう」
恭子は辺りのキョロキョロと眺めながら家の中に入った。
「悦子さん、おかえりなさい!お食事の用意はできています。お飲み物はいかが致しましょうか?」
「戻りました、色々とありがとう。彼女に何か冷たい飲み物を用意して頂けますか?日本からの大切なお客様なのよ」
「かしこまりました」
「え、悦子さん…この方はどなたですか?」
「あのね、こんなこと言うと、またまた惚気になっちゃうかと思って言わなかったんだけど、メイドさんなの。アミールが
”君がこの家で一人で過ごす時、絶対に掃除や洗濯、食事の用意を頑張ってしまうだろ?” って気遣ってくれて…メイドさんをお願いしてくれたのよ」
「あぁ…あの、何度も言っちゃいますが…心底、愛されてますよね♡」
「あ、恭子さん。今、さっきのヴィジョンボードをお部屋から取ってくるので、あちらのソファーにお座りになっててね」
「え!何ですか!この豪華なリビングは!」
恭子は目をキラキラと輝かせながらリビングに向かった。
しばらくすると、悦子はヴィジョンボードを持って二階から下りてきた。
「お待たせ恭子さん!これよこれ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!こ、こ、これ!
全く一緒じゃないですか」
恭子はヴィジョンボードを見ながら、まるで答え合わせをしているかのようだった。
「これがヴィジョンボードなのよ…私ね、このボードのことをすっかり忘れていたの。日本からの引っ越しの時に段ボールの奥底にしまったっきりだったし、忙しくて落ち着くまでは放置してたんだけどね、仕事の書類を探していた時にたまたま開けたらこれが出てきてね… この家と全く一緒な事や今までのことが重なってね、あぁやっぱり全ては完璧なんだって思ってね…
涙が溢れたわ」
「これはホントにす、す、スゴイ事ですよ。私、震えが止まりませんよ」
恭子は震える身体を自分の両手で抱きしめた。
「この世の中にはいろんな自己啓発が溢れているけどね、私…最近思うのよ。一番大切なのは、素直にやる!行動するってことじゃないかな?って
どんなに高額なセミナーやセッションを受けたとしても、やらなきゃ動かなきゃもったいないじゃない?このボードだって、信じるか信じないかってよりも”なんか面白そう”しかなかったから、私すぐに作業に取り掛かっただけなのよ」
「私もやります!あの…今から作っていいですか」
恭子の目は真っすぐ前を見据えていた。
「もちろん!大歓迎!私も創る~っ!」
悦子も更なる夢をカタチにしようと胸が躍っていた。
「奥様、何か他にお手伝いすることはありますか?」
全ての仕事を終えたメイドは悦子に訊ねてきた。
「あ、もうここは大丈夫よ。ありがとう。あとは私がやるので今日はお帰りになってくださいね。いつもありがとう、また明日よろしく」
悦子はいつも快適に過ごさせてくれることに深く感謝した。
「恭子さん、ヴィジョンボードの前に家の中をご案内したいの。探検ツアーにお付き合いくださいますか?」
「もちろんです!記事にお載せしてもよろしいですか?」
「大丈夫よ。そのつもりでこちらにお招きしたんですから」
「嬉しいです。私、ボードのことで頭がいっぱいになっててw
仕事のこと忘れてました、あははは💧」
ヴィジョンボードのおかげで不思議と自分達の距離が急速に縮まったようにお互い思っていた。
次回、eternal flame…永遠の愛 10
お楽しみに♡
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