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ガールフレンドと八ヶ岳にヒラーの師匠を訪ねる

未来を見に行く冒険 その4

25年近く前の話

ヒーラーの弟子になってしばらくした頃、ガールフレンドと八ヶ岳にあるヒーラーの師匠の家を訪ねました。今回もガールフレンドのお母さん達が10人ほどで訪ねると聞いたので私たちも同行することにしたのです。

10人のメンバーを見ると、大きな病院の内科部長や大学教授、老舗薬局の代表、それなりの会社の経営者だったりしていた。職業的にはさまざまですがそれぞれ社会的に責任のあるポジションで50代以上、分別のある社会人の方々です。みなさんホリスティックの研究会の方々でした。

「先生の師匠ってどんな人」

「画家で不思議な力があって、八ヶ岳の自宅が美術館になってるんだって」

「すごいね、きっと素敵な人なんだろうなあ」

「あなた、綺麗な人好きだもんね」


その日の八ヶ岳は雨でした。林の中にある美術館に着いたのは11時頃です、雨は少し小降りになっていました。

「いらっしゃいませーっ、よく来てくださいましたねー」

と、中から気さくなおばさんが出てきました、ちょっと想像と違うなあと思っていると
隣でガールフレンドがクスッと笑うのがわかりました。

「さあみなさんお昼を予約してあるのよ、このまま乗り合わせてまいりましょう」

みなさんは何度かみえていましたが、私は初めてだったので車から降りて挨拶に行きました。

「初めまして、今日はよろしくお願いします」

「よくいらっしゃったわねぇ、あら素敵なお車ねーかっこいいわ」

その時は黄色い993タルガというスポーツタイプの車で来ていた。

「私の19になる息子もスポーツカーが大好きでね、彼はなんと言うのかしら、この宇宙の警備隊長のようなことをしていているからスポーツタイプが好きなの彼が見たら喜ぶわね、でもこれにはみんな乗れないから私たちの車に乗りなさい」

うんっ、どう見ても普通のおばさんから、19になる息子が宇宙の警備隊長?思考のリズムが止まって首を傾げた。

スタッフさんの運転で予約したレストランに向かった、フタッフさんが二人と先生と私たちの5人が先導して走り出した、しばらくして山岳道路に入った辺りから急に雨が激しくなった。

「あらー、あなた達が来たことを八大龍王が喜んでみえるわ、八大龍王は地球の神様だから喜ぶと嵐になるのよ、でも大丈夫じきに止みますよ」

山岳道路を登りきっところで車を止めると雨は上がって明るくなった。車を降りて下を見ると雲が下に広がってまるで天上界にいるような景色です。

「きれいねー」

とガールフレンドが言った、みんな車を降りて景色を見ている。

こんなタイミングがあるのだろうか、おばさんが雨を止めたのだろうか、宇宙の警備隊長といい頭の中は疑問符だらけだった。

ランチを終えて、そっとフロントに行ってお代を払おうとすると、もういただいておりますと言われた、ガールフレンドにそう告げると

「いいのよ」だって

帰りは古代蓮の公園に寄って行くことになった。車に乗った時に、ご馳走様でしたと昼食のお礼を言うと

「いいのよ」だって

公園に向かって走っていると急に車を止めさせてドアを開けて来た道を走って戻っていった。

「どうされたんですか」

「さあ、何かを見つけたんでしょうか、でもいつものことですから」

とスタッフが言った。
しばらくして先生は両手に大量のクレソンを抱えて戻ってきた。

「ほら、そこの水路にこんなにあったの今日の食材が手に入ったわ、地球さんの贈り物」

と言ってトランクからバケツを出して入れた。


家に戻ると先生は美術館を案内してくれて、スクラップブックを見せてくれた。
そこには主婦の〇〇さんが〇〇市に一億円を寄付をしましたと載っていた、写真を見ると先生だった。

次のページには500万と載っている、さらに何件か載っている寄付マニアだった。

「先生、お金持ちなんですね」

「いいえ、そうではありません。私は主婦ですから一生懸命倹約して、爪に火をともす様にして、歯を食いしばってお金を貯めました。ですからほら」

と、親指と人差し指を口に入れてパッと出しました。
そこには入れ歯が掴まれていました。

ワッと目を見張る私とガールフレンド

「食いしばりすぎて歯が抜けてしまったの」

かなりブラックなジョークなのかと、おどろいた。

「私は以前、クレオパトラと楊貴妃として生まれていたの、だから今回はこんなオバサンに生まれたのよ」

ホッホッホッと笑ってキッチンに消えました。 

「クレオパトラだって」

「そして楊貴妃だよ、ほんとかなあ、でもかなり楽しいオバサンだよね」


二人で2階に上がって先生の絵を観た、素晴らしかった。
絵の前に立つと気持ちの良い力強い波動が流れてきた、これにも驚いた。

100号以上の絵を描こうとするとかなり体力が必要で大変だ、50を過ぎているオバサンが描いたのだろうか、それも何点もある相当に心身がタフでないとできない。

どの絵も素晴らしい、クレオパトラや楊貴妃が本当に思えてきた、目の前の絵はそんな気品を醸し出していた。

ガールフレンドも話しかけてこなくなって絵に見入っていた。

前世がクレオパトラと楊貴妃で画家、そして寄付マニアの入れ歯のオバサン、さらに宇宙警備隊長の母親でもある、なんともレンジが広い、本当だろうか?

30分ほどして

「ご飯ができました」と一階から声が掛かった。

降りてゆくとみなさんもう着座してみえました、先生の知り合いとスタッフを入れると10人を超えています。

私たちも席についてテーブルを見ると大皿に盛られた料理が6皿とご飯とお味噌汁とゆう献立、6皿はもちろん全て違う料理、先ほど採ったクレソンもサラダになっています。

「これ全部先生が一人で作られたんです」

キッチンに入って30分、一人で6皿なんとゆう手際の良さ、全く驚かされるオバサンだこと。

そして全ての料理が美味しかった。

食事の後、ガールフレンドとリビングで過ごした、他の人たちもそれぞれ思い思いに過ごしていた。

今日の参加者はホリスティック医療勉強会の方々、西洋医学を極めてのち、その限界の突破を霊的能力や自然療法にみいだそうとしてみえた。

なぜ、建築家がホリスティックや霊的能力の研究会に参加しているかって、手短に言うと現代建築学で造られる建物が美しくない、美につながっていないからでした。

明治維新でエセ西洋建築がたくさん造られました、愛知県の明治村にゆくとたくさん見ることができます。その頃は西洋への憧れと日本人の驚異的な融合性、勤勉性で日本建築や日本文化を否定して西洋建築をコピーしました。

明治維新は敗者の江戸や2000年以上続く日本文化を徹底的に否定して破壊こそが新時代だと言わんばかりです。日本文化も日本建築も、信仰や病気にならない自然療法や加持祈祷などもことごとく否定をして破壊しました。

そして改革者に出資した国を真似しまくったのです。一番最初が貨幣、次に西洋医学、西洋建築、背の低い日本人には似合わないドレスと勲章まみれの軍服でワルツを踊ることでした、滑稽です。

まあ、美意識を持たない改革者はそんなものです。美意識も武士道も自然に対する畏敬の念も持たない者が革命や文明開花などできるわけがありません。他国の経済とテクノロジーを真似するのが精一杯でしょう。

近代建築になってもそれは続いています。コルビジェやライトが活躍して今に続くのですが特に戦後の建物は経済とテクノロジー、それと政商と結びついたものばかりになりました。

東京2020の国立競技場建設に関わった建築家は政商の匂いがプンプンしますがそんなものでしょう。

マイアーキテクトという孤高の建築家を描いた映画の中で、彼の息子がルーブル美術館のガラスのピラミッドを設計したトップクラスの建築家を訪ねて父親のことを尋ねます。

「私はお前のお父さんが羨ましい、彼は自分の考えで美しいと思う建物を建てた、私は経済建築家だ、お金持ちだ。経済を優先した建築を造らなければならないのだよ」

というような趣旨のことを言っていました。世界ナンバーワンの建築家が思いとは違うけど金のためなら何でもやらないといけないのさ、という感じでしょうか。

まあ、そんなもんでしょうね。

ならば世界ランカーでもない建築家は、人を幸せにする美しい建物を造ろうと思った次第。そのためには戦後の西洋建築学の学びではなく、真の棟梁たちがみえない世界と繋がりながら造ってきた方法を知らないといけないのでした。

美の元はどこにあるのだろうか、そこがわかれば美しい建物が創れるかもしれない、創りたい、インスピレーションの元がわかる地図が欲しい、未来を見にゆけばわかるのだろうかとその頃は勝手なことを考えていました。

ですがそんなことは誰も教えてくれなかったので自分で調べるしかなかったのです。

しばらくして、先生と個人面談できる時間が設けられているので希望者は申し出てくださいということなので、私とガールフレンドもお願いしました。

「先生、私は美しい建物を造る建築家にどうすればなれますか?」

「あーら、あなたは今までにもうたくさん造ってきたでしょ、平城京も大阪城もまだまだ色々造ってきたのよ、未来でもそう、輝く建物や宙に浮く建物も建てたでしょ」

「えっ、すみません、覚えていません」

「もういっぱい建てたの、もう建築家になってるのよ、それも素晴らしい。だからそのままやってゆきなさい」

「えっ、もうなってるのですか、知りませんでした」

自分を中心に考えるから、過去世があって自分があって、これから来世へ行くように思っているけれど時間があるのは三次元、肉体を持っているものだけで、時間のないあの世では過去も未来も一緒に存在しているようです。

「私は他の星から来た地球の母なの」

「えっ、先生は宇宙から来たの?宇宙人なのですか」

「何言ってるの、あなたもよ」

「えっ、すみません、忘れていました」

先生と二人で話していると宇宙観がテレパシーのように頭の中に入ってくる、言葉で理解するというより先生の頭にアクセスして共有しているように理解できる感じです。

でも言葉にして説明するのが少々難しいのですが、新しいあの世の世界観、宇宙観が入ってきた感じで、ちょっとワクワクしていました。

未来や過去が同じように存在すること、宇宙があってそこに存在する人々がいる宇宙観、あの世観が持てたことは嬉しいことでした。

地球があれば宇宙もあって、他の星もあります、そこから地球に来ている人がいても当然といえば当然のことですが20年ほど前はまだ一般的ではありませんでした。

私が終わって、入れ替わりにガールフレンドが入ってゆきました。

30分ほどしてガールフレンドがちょっと不機嫌そうな顔をして出てきました。わたしたちが最後だったのでみなさん帰り支度を始め、それぞれに帰路に着きます。

「ねえ、支払いはどうすればいい?」

「いいの、行きましょ」

「えっ、誰か払ってくれたの」

「いいの、よかったらハンカチか本でも買ったら」

と言ってガールフレンドは荷物をまとめだした。

私はハンカチと先生の朗読のCDを買ったて4000円ほど支払った。これがここで使ったお金の全てでした。

お昼代も夕食代も、先生へのお礼も払いませんでした。私は連れてきてもらったので食事代やお礼は全て払うつもりでお財布には結構の金額を入れてきたのにちっとも減りませんでした。さらに先生は帰りにお土産よと言って全員にお菓子を渡してみえました。

八ヶ岳の先生も天領で弟子入りすることになったヒーラーの先生もいっさいお金を取りません。一緒にお昼を食べても払おうとレジへ向かうともう支払い済みで、お礼を言うと神様ごとですからと言われるだけでした。

どうも経済社会の常識と神様ごとの常識とはずいぶん隔たりがあるようです。

車に乗って走り出すとガールフレンドのご機嫌はさらに悪くなってゆきました。

「何でいつもあなただけいいこと言われるの」

と、フェーンと泣き出しました。

「落ち着いて、どうしたの?」

「いつもこうゆうところへ行くとあなたはいいこと言われて、なぜ私は悪いことばかり言われるのよ」

ガールフレンドが泣きながらこんな話しをはじめました。

先生に私と結婚したいと言ったら、あなたは前世で彼を裏切ったの、それもひどい裏切り方をしたの、だから今世は耐えてください、できるわねと言われたそうだ。

彼女が消えるまでにはもう少し時間はあったけれど、

先生、そんな運命までわかるのですか?

運命は変えることはできないのでしょうけれど、

私にも少しは美の元がわかるようになりますか?

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