推しを飾る
聞いてくれる?
今日顧問にさ、みんなの前でめちゃくちゃ怒られたんだ。
それもさ、私のせいじゃないことで怒鳴られたの。完全にあの子のミスなんだけどね。でもあの子に睨まれたら学校生活完全終了するから、なんも言わずそのまま怒られ続けたんだ。
スクールカースト下位層はつらいんですよ。立場わきまえないともっと大変になるから。
君は学校でも絶対的トップだったよね。そうに決まってる。てかそうじゃなきゃ私がいやだよ。
そんでさ、今度は帰り道でさ、思いっきりこけちゃったんだ。つまずいたとかじゃなくて、いきなり膝から力抜けてね。手を地面についたから、ほら見て。指先擦りむいてんの。血だらけで帰ってきた。
いてて。ピンセットが傷に当たった。ううん、大丈夫。これくらいの痛みは耐えられる。ありがとね。
ここにはリボンを貼ろうかな。それともこのハートをふたつ重ねてみる?
うん、そうだね、どっちも付けちゃってもいいかもね。この衣装がけっこうシンプルだからもっと盛ってもいいかもしれない。
あのさ、聞いてもいい?
なんで君ってこんなにきれいなの?ほんと涙が出そうだよ。
羨ましいとかじゃなくて恨むレベル。うそうそ、大好きだけど。
いてて、やっぱりピンセット使うのやめよ。指で貼らせていただきますね。
あのさ、私さ、自分がこれからもしょぼい人生送ってくってわかってるんだ。16年生きてきてもう悟ったわ。主役にはなれないって。
見てみて。めっちゃ可愛く貼れたよ。シールっていうかもうこれ宝石じゃん。おこづかいで買える宝石。きらきらしてていいな。まあ、君の輝きには全然かなわないけど。
やばい、可愛すぎて笑っちゃう。じょうずにできた。えっ?泣いてないよ。泣いてないってば。
こうやってさ君をデコってる時がいちばん幸せかも。なんていうかな、愛を感じるというか。すごく気分がよくなるんだよね。
きれいにデコった君の写真がリュックに入ってるからさ、しょぼい私ががんばれるってこと。
ほんとにありがとう。
やっぱり君は尊いよ。
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