私の心を支える映画「6才のボクが、大人になるまで。」
今日は映画の話をしようと思う。
私には何度でも繰り返して観る映画が数本ある。ストーリーはもちろん、登場人物の台詞や衣装、どのタイミングでテーマ曲が流れるかまで暗記してしまい、その映画について調べられることについてはほぼ調べ尽くしているような作品だ。
観ると心を落ち着かせてくれたり、逆に気持ちを奮い立たせてくれる作品もあれば、自分と主人公を重ね合わせて、どっぷりと感情移入してしまう作品もある。ただただ映像の色調や音楽が好みで好きなミュージックビデオを眺めるように見る作品もある。
そんなヘビロテ作品の中で、私が男子2人を育てるうえで、大変さを感じたり自分の母親としての不甲斐なさに肩を落としたりするとき、また、子供たちの成長の節目節目で観たくなる作品がある。
リチャード・リンクレーター監督の「6才のボクが、大人になるまで。」(Boyhood) だ。
予告編はこちら↓
この作品はリンクレーター監督が、主人公メイソン・ジュニア役のエラー・コルトレーン、その姉役のローレライ・リンクレイター(監督の娘さん)、母オリヴィア役のパトリシア・アークエット、父メイソン役のイーサン・ホークの4人の俳優をメインキャストにしてなんと12年間をかけて撮影したものである。
子役を使うのではなく同じ俳優で、物語の中で経過するのと同じ時間をかけて撮影したことに、この作品のすごさがあると思う。ひとりの少年が大人になっていく過程と、ともに過ごす家族ひとりひとり変化がまるでドキュメンタリー番組のように映し出されているのだ。そのリアリティは、そこにかけた時間はもちろん、キャストひとりひとりのこの映画に対する熱くて不変の思いが肉付けしたものだと思う。
登場人物ひとりひとりをどこまでも人間らしく描いた脚本のすばらしさ。優しくて楽天的だが生活力のない父親、賢実で努力家だが男性を見る目がない母親、大人びて少しクールな姉。少し内気で芸術家肌のメイソン・ジュニア。あまりに普通で底抜けに魅力的な登場人物たちに、きっとそれぞれを知己の誰かを重ね見てしまうのではないだろうか?
その中でも私が特に感情移入してしまうのがパトリシア・アークエット演じるオリヴィアだ。子供たちのことは愛おしい。なんとか幸せな子ども時代を送らせてあげたい、でも努力が報われないこともあるし、自分の選択ミスで子どもたちに辛い思いをさせてしまうこともある。
そんなダメさも内包した彼女のなんと魅力的なことよ。失敗しても、かっこ悪いところを子供たちに見せても、結局立ち直ってまた邁進する。子供たちだけでなく、自分自身の幸せについても諦めない。そんな姿にいつも勇気をもらうのだ。
一家には、映画特有の一発逆転とか救いようのない悲劇は起こらない。ひとつひとつのエピソードが、映画を観ている自分が育った家族、あるいは今現在を共に過ごしている家族にも起こり得たささやかなものに見える。しかし、そのストーリーのひとつひとつが、少年と家族の成長に欠かせなかった出来事だったのだと何度も観ているうちに思うようになるのだ。
3人姉妹で育った私は、男の子の成長過程というのを目の当たりにしてこなかった。なので長男が思春期に差し掛かった頃には、彼が今どんな気持ちなのかを理解できず、くよくよと悩んだこともあった。でも、この映画は、メイソン・ジュニアの成長する姿をもって教えてくれる。心配せずとも彼は育ち、大人になっていくのだと。
そしてそして、この映画の主題歌 Family of the Year の 「Hero」 を聴いてみてほしい。
この曲の歌詞に、子育てに大切なことが全て込められている気がする。
「自分の期待を押し付けるな、彼は彼の道を行くのだ」
ぜひご覧になってみてくださいね。ではでは。
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