産後に涙腺が緩みまくったはなし
出産してすぐ感じた変化のひとつに、涙腺がガバガバに緩くなって、すぐ泣くようになってしまったことがある。
入院中の母子同室2日目。
前日、初の子との夜を過ごした。深夜に数時間も泣き、おむつを替えてどうにか泣き止まないかとあやしているうちに次の授乳時間になる。そして全く出ない母乳。
今日もそんな夜に備えて寝なくてはと、20時半から横になっていた。
そんなとき、血圧とお腹の様子見にきてくれた看護師さんに、何気ない優しい言葉をかけてもらって、涙が止まらなくなる。涙を堪え、退室したあとにひとりで静かに声を出して泣いた。
つらいからと預けていいのかわからない。甘えてると思われたらどうしよう。ひとりでやらなきゃ、この期間に少しでも身につけなきゃと気を張っていた自分に気づく。
初産のためなかなか母乳が出ない。授乳室に居合わせた経産婦さんはスムーズに母乳をあげて退出していく。
授乳姿勢も探り探りで、よくないとは思いつつ横目で授乳の様子を見てしまう。そして自分と我が子を見て落ち込む。先が見えなくて、わからなくて、涙目になる。
わかってるつもりだけど、やっぱり正解を求めてしまうし、比べてしまう。わからないから。
次の授乳に備えて身体を休めなければとベッドに横になり、涙がこぼれた。
退院前日、夫が面会にきた。
ちょうど部屋での授乳中で、空腹で泣く子にうまく咥えさせられなくて焦り、困っていたところだった。
そこに現れたものだから、思うように上手くできない不甲斐なさと、気の置けない人物が来てくれた安心感とで涙が溢れて止まらなかった。隠したくても隠せる量じゃなかった。心配をかけすぎないように、ホルモンのせいだからと言い訳をした。
悩みながら授乳室で授乳前のおむつ替えをしていた。隣にやってきた、服装をみるに今日退院なんだろうなという母子。
「○○ちゃん、産まれてきてくれてありがとう。ママはずーっとずーっと○○ちゃんに会いたかったんだよ。やっと会えたね!大好きだよ!」
とおむつ替えをしながら子に語りかけるお母さん。
一瞬、ワタシがいるのにも関わらず2人だけの世界を作り出していることにビックリしてしまったのだが、その言葉が無性にグッと胸に刺さってしまい、涙で視界が滲んだ。
そしてそんな言葉をかけられないほど余裕のない自分が不甲斐なく、子に申し訳ない気持ちになった。
退院時に病院から、子の足形をとったカードをもらった。そのカードの隅に「push」の表記があり、押してみると子の泣き声が録音されていた。
数日経って少しだけ聞き慣れてきたその声。高性能な録音機材ではないので、音質は少しだけざらついている。それでも、再生された瞬間になぜか涙があふれてきた。つい数分前に授乳室でも聞いたし、夜間の2人きりの部屋でこの声に心を締め付けられて、悩まされた泣き声。
押した途端に、これまでの長い苦しみがわっと込み上げてきた。ああ、産んだんだ。退院時の説明をされながら、必死に涙を堪えた。
妊娠中からよくしてくれていた、ワタシが唯一妊娠中に相談していて頼っていた先輩ママさん。
退院して初めての自宅沐浴。譲っていただいたベビーバスが、我が家のシンクにぴったりだった。そのことを報告するために連絡をすると、励ましとあたたかい言葉をかけてくれた。
大変だよね、困ったことあれば遠慮なく相談してね。文面だけなのにやさしくされたことで涙がドバッと溢れてきた。返信の文章を考える時にも涙が出てきた。
振り返りと備忘録のために、忘れないように下書きに書き殴っている今も、なぜか涙が止まらない。涙を拭いたティッシュが湿って、キュッと小さくなっている。
オワリ
殴り書きの文章を1ヶ月半ぶりに時間をかけて書き上げた。さすがに涙は出てこなかった。やっぱり全部ホルモンのせいだったんだ。
オワリ