特許出願後すぐに権利化するときのメリット
弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「特許出願後すぐに権利化するときのメリット」について説明します。
基本的に、弊所にいらっしゃるお客様には、特許出願後に長く引っ張って4~5年かけて権利化しましょうと説明しています。
これは、過去の記事である「特許はすぐに取るな その1」https://note.com/norio_sakaoka/n/n2cc992b162b0 及び
「特許はすぐに取るな その2」https://note.com/norio_sakaoka/n/nac89af121c54 でも説明しています。
しかし、ものにはやはり良いところもあれば悪いところもあります。
特許出願して数ヶ月の間に権利化するときのメリットもあります。
今回はこれを説明します。
1.特許出願が拒絶査定となったときにやり直しができる
特許出願は、出願後に18月経過してから公開公報が発行されます。
つまり、すぐに権利化を目指した場合、出願したことや拒絶査定となったことは誰にも分かりません。
そこで、拒絶査定となったときに、審査官から指摘された拒絶理由を回避してもう一度出願することができます。
このとき、先にした出願は取下げの手続をします。
2.特許を売ったりライセンスしやすくなる
これはあまり沢山はいらっしゃらないと思いますが、特許出願を売る又はライセンスするというとき、大抵は特許になってからでないと交渉ができないと言われます。
そこで、早期に権利化をすることで、売買交渉に入ることができます。
注意点として、拒絶査定となったときには何も残らなくなります。
というのが、自社での実施を前提に特許出願している場合、出願中の地位がある間は他社へのけん制ができます。
このため、出願から4~5年間ほど引っ張って、例え拒絶査定となっても、その間のけん制による効果が得られます。
しかし、早期に権利化を目指して拒絶査定になると、このような効果は望めず、お金を使っただけになってしまいます。
3.他社の権利を侵害していないことのおよその目処がつく
特許出願前に、一応、他社の権利を侵害していないことの調査はします。
しかし、調査は絶対ではなく漏れも起こり得ます。
特に、出願して18月を経過していない公開前の発明は、審査官以外は見ることができず、いくら探しても見つかりません。
一方、出願後に審査請求をすると、特許庁が審査をしてくれるのです。
しかも、最近は海外の文献まで見てくれます。
これ、とてもリーズナブルです。実をいうと、最も安い特許調査は審査請求することだとも言われています。
普通、特許の先行技術調査をすると、国内だけで5~10万円かかります。
これは、弊所をはじめとした民間企業による調査です。
一方、審査請求をすると15~18万円(中小企業は2021年3月時点では半額)で特許庁が調査してくれるのです。
実際は、下請けの調査会社が調査するのですが、それでも特許査定となったときは国のお墨付きです。
但し、利用発明とかありますし、特許無効審判を請求したら一部無効を含めて半分くらいは無効になったりするので、諸手を挙げて喜ぶ訳にはいきません。
それでも国が認めてくれているのですから、かなり安心できます。
他にも、下記のようなメリットがありますが、これは私の他の投稿である「特許はすぐに取るな 例外編」https://note.com/norio_sakaoka/n/nfaf82df3a982に記載しております。
詳しくはそちらをご覧ください。
その他のメリット
・拒絶査定となったときに技術を公開せずにブラックボックス化できる
・海外への出願前に特許になるか否かのおよその目処を付けることができる
いかがでしょうか?この記事が、御社のご発展の参考になれば幸いです。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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