特許の損切り
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「特許の損切り」について説明します。
損切りとは、株式投資や不動産投資などで使われる用語で、「投資家が損失を抱えている状態で保有している株式等を売却して損失を確定させることをいいます(https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/so/J0295.html)」。
特許も事業をする上での投資と考えれば、おのずと損切りをすることが出てきます。
新規製品や新規事業で百発百中のものはありませんので、損切りは仕方ないことだと思います。
では、どういったときに損切りをするのでしょうか?
この損切りを説明するには、先ずは特許出願及び出願後の流れと一般的な費用を理解していただく必要があります。
特許出願に関する手続と一般的な費用は以下のとおりです。
・先行技術調査 4~8万円
・特許出願 30~40万円
・審査請求(出願から3年以内) 18~20万円(中小企業等は減免あり)
・拒絶理由に対する中間対応 12~24万円
・登録時の成功報酬等 15~20万円
これらの手続を見て、これまで私の記事をご覧になっている人は既にピンと来たと思います。
でも初めての人もいらっしゃるので説明しますね。
最初の損切りは先行技術調査です。
良いものができたと思っても、既に同じものが公知となっている場合があります。
また、調査の結果、似たものが既にあることは多いのですが、開発品と何が違うのかを明確にすることで特許査定率が高まります。
ですので、この先行技術調査は必須なのですが、調査段階で特許は無理ですねということがあります。
そうなると、調査費用だけを投資して損切りということになります。
先行技術調査が問題なければ、次の特許出願は普通に進めて行きます。
次の損切りは審査請求です。
この審査請求は出願から3年以内にしなければなりません。
審査請求をせずに3年経過しますと、その出願は取下げとみなされます。
このため、3年の間に、投資として行なった特許出願が事業として役立つかどうかを見極めます。
そして、事業に役立たないと判断すれば、審査請求をせずに放置します。
放置すれば審査請求費用を含めて、その後の費用はかかりません。
逆に、役立つと判断すれば、投資として審査請求をします。
次の損切りは中間対応です。
一般的に審査請求後、約1年で審査結果が通知されます。
このとき、ストレートに特許査定がなされることもありますが、普通は高い確率で拒絶理由通知がなされます。
ここでも、上記の審査請求のときと同様に、特許出願が事業として役立つかどうかを判断します。
役立たないと判断して放置すれば、拒絶は確定しますが新たな投資としての費用は抑えられます。
役立つと判断すれば、投資として中間対応をします。
上記の中間対応の結果、約1/3が拒絶査定、約2/3が特許査定となります。
拒絶査定となったとき、不服であれば審判も請求できます。
この審判請求も投資を判断するところですね。
特許査定となれば登録手続きをします。
その後、権利を維持するには毎年の年金(登録料)を納付する必要があります。
この年金も年数が経過する毎に高くなります。
特に10年目以降は年間に約8万円かかってきますので、ここでも投資を続けるか否かの判断が求められます。
このように、特許を投資としてみたときに、いつどの様な条件で損切りするのかを考えておくことが大事ではないかと思います。
また、特許出願のなかには直ぐにでも権利化したいという場合があります。
このようなときは、上記の損切りとは関係なく、早期審査で出願から数ヶ月~半年くらいのうちに査定までもっていくようにします。
いかがでしょうか、特許の損切りについてご理解いただけたでしょうか。
この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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