特許の権利範囲とは?

 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「特許の権利範囲とは?」について説明します。

 前回の投稿「特許とはそもそも何なのか」https://note.com/norio_sakaoka/n/n156138ac77b9 で、権利範囲についても簡単に説明しました。

 今回は、もう少し詳しく特許の権利範囲について説明します。

 特許の権利範囲は、「特許請求の範囲」という書類に記載されています。
 この「特許請求の範囲」の中に、複数の請求項が記載されています。

 例えば、【請求項1】【請求項2】【請求項3】・・・という具合です。
 国内の一般的な特許出願では、この請求項数は5~10くらいが多いと思います。

 この請求項の記載が、特許の権利範囲なのです。
 そして、この請求項に記載されている構成要件を、全て実施すると侵害になります。

 基本的には、構成要件のうち1つでも除外又は変更すると侵害にはなりません。
 つまり、請求項の記載が少なければ少ないほど、権利範囲は広くなるのです。
 (均等論といって例外もありますが、ここでは省略します。)

 このため、基本的に請求項1が最も権利範囲が広く、下位の請求項に行くにしたがって権利範囲が狭くなります。
 正確には、他の請求項に従属していない独立項が最も権利範囲が広く、その独立項に従属している従属項のうち下位になるに従って権利範囲が狭くなります。
 請求項1は必ず独立項ですので、基本的には請求項1の権利が最も広くなるのです。

 次に、請求項の構成要件の組立を簡単に説明します。
 但し、日本の場合、マルチのマルチといって、多数従属項を引用してさらに多数従属項を記載することが可能なため、まともに書けば請求項同士の組み合わせがかなり複雑になります。
 ですので、ここでは多数従属項は用いずに説明します。

 (多数従属項とは下位の請求項が上位の複数の請求項を引用する記載形式です。
 例えば、請求項3において請求項1又は2に記載の○○装置。と書く場合です。
 マルチのマルチは、さらに請求項4において請求項1ないし3のいずれか1項に記載の○○装置。と書くことをいいます。)

 【請求項1】
 A、B、及びCを備える○○装置。
  → 構成要件はA+B+C
 【請求項2】
 Dを備える請求項1に記載の○○装置。
  → 構成要件はA+B+C+D
 【請求項3】
 Eを備える請求項2に記載の○○装置。
  → 構成要件はA+B+C+D+E

 この場合、請求項1の構成要件であるA+B+Cを実施すると侵害になります。
 但し、A+B+Cの一部を除外するA+B、A+B+D、A+C+E等は基本的に侵害にはなりません。

 また、A+B+Cの一部を変更するA+B+X、A+B+X+D等も基本的に侵害となりません。

 但し、A+B+C+Xは、A+B+Cの全てを実施しているため侵害となります。

 これらのことから、請求項1にはなるべく必須の要素のみ記載して、余分なことは書かないようにします。
 余分なことを書いてしまうと、その余分なところを除外されて、発明を他人に模倣されてしまうからです。

 そして、下位の請求項に、枝葉となる構成要件を記載していきます。
 また、下位の請求項に新たな独立項として、○○方法などのカテゴリーの異なる発明を記載することもあります。
 そうすることで、権利範囲がしっかりとして、かつ出願後における特許庁の審査にも対応できる特許請求の範囲ができあがります。

 仮に、他人の発明と同様のものを実施するときは、他人の特許公報をよく見て、権利を逃れられる方法を探します。
 そうすることで、最良とは言えずとも良いものを実施できるようになることがあります。

 いかがでしょうか。
 特許の権利範囲についてご理解いただけたでしょうか。

坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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