1日でも早く出願しよう
弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「1日でも早く出願しよう」について説明します。
特許でも、意匠でも、商標でも、先願主義という方式が採用されています。
この「先願主義」とは、1日でも早く出願した方が優先されるという制度です。
先願主義に対して「先発明主義」という制度も、以前は米国でありました。
これは、先に発明した者が優先される制度です。
しかし、いつ発明したかの証明が煩雑であり、争いのもとになります。
このためか、現在は米国でも先願主義が採用されています。
さて、話は戻ってこの先願主義ですと、同じ内容であれば1日でも早く出願した方が勝ちです。
つまり、仮に他人が同じ発明、同じ意匠の創作、同じ商標の出願を検討している場合、先に出願した者しか権利を受けることができません。
ですので、特許の流行の技術分野では、各社が競って出願するなんてこともあり得るのです。
もっとも、特定の技術分野で各社が競って特許出願することは、大企業が主です。
弊所のような中小企業が主な顧客の事務所では、特許出願で他社と出願日を争うようなことは稀です。
中小企業で出願日に気をつけるべきは、商標だと思います。
商標は、平たくいうとネーミングです。
このため、名前を考えるだけで誰でも出願できます。
この出願で後れを取ってしまうと、他人に権利を奪われてしまうのです。
先にこの商標を使用していたなんてことは関係ありません。
あくまでも、先に出願した者が勝ちます。
(出願していなくても、その商標が他人の出願時に周知になってしまえば例外措置があります。しかし、このような例外はここでは考慮しません。)
以下、私が実際に経験したことです。
1.弊所が受任した案件が勝った例
弊所の顧客であるA社から、「車両の貸与」について出願依頼が来ました。
先行商標を調査したところ、特に問題となるような類似の商標は発見されませんでした。
A社の社長は決断が速く、調査結果を伝えるとすぐに出願するよう指示が来ました。
直ちに出願案を作成し、その出願案についても即日回答が来て、速やかに出願をすることができました。
後日、たまたま同じ商標で検索する機会があったので検索してみると、なんと弊所が代理したA社の出願から11日後に、同じ商標が他人から「車両の貸与」で出願されていました。
これ、出願から公報発行まで2月くらいかかるので、他人はA社の出願については分からないのです。
きっと、その他人の出願を代理した弁理士も、似た商標はないですね、登録の可能性は高いですと回答して出願をしたと思います。
しかし、後で弊所の出願を引例とする拒絶理由通知が来て、11日違い?何これ?という状態だったと思います。
2.弊所が受任した案件が負けた例
今度は、逆に負けてしまった場合です。
B社から、「知識の教授」について出願依頼が来ました。
先行商標の調査の結果、特に問題となるような類似の商標は発見されませんでした。
ここでも、B社は素早く決断していただき、速やかに出願まですることができました。
しかし、実は、B社の出願1月前に、他人が類似の商標を出願していたのです。
これも、調査の段階では公報が発行されておらず、わからない案件でした。
意見書を提出したのですが、結果として拒絶査定となってしまいました。
いかがでしょう。
上記のA社の出願がもう11日遅れていれば、A社が出願した商標は登録査定となりませんでした。
逆に、上記のB社の出願がもう1月速ければ、登録となった可能性があります。
このように、特許、意匠、商標では少しの出願日の違いで、登録査定となるか拒絶査定となるかが決まることがあります。
ちなみに、同日に同じ内容で2つの出願があった場合、審査官から出願人に対して協議指令がなされて、どちらか一方しか登録を受けることはできません。
協議が不調の場合、どちらも登録を受けることができないため、このような場合、一方に譲渡して登録を受け、その後に再譲渡してもらうことが一般的と考えます。
いずれにせよ、思い立ったら1日でも早く出願されることをお勧めします。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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