「教師が働きやすい職場とは」若手が育つ指示ゼロ学校づくり☆ゲスト 住田 昌治 先生 /今窪 一太(いまくぼ かずた)トークセッション#004
ES-TV note 【2022.5.26ライブ配信】
『若手が育つ指示ゼロ学校づくり』著者、住田先生
近年、学校現場は元気がなくなっている、疲弊しているといわれています。
私たち、EDUCATIONAL SUPPORTが活動を開始したのはまさに、そうした社会課題を何とかしたいと思ったからです。
熱意を持った先生たちが、あっという間に疲弊してしまい、短期間で辞めてしまうことが起こっていますし、そもそも先生を志望する人たちが減っています。
本来、魅力的だったはずの先生という仕事が、その魅力を徐々に失ってしまい、それが教育の質の低下につながり、結果的には児童や生徒が悪い影響を受けることとなります。
しかし先生の仕事の魅力を取り戻すために、学校にできることはあります。
「学校リーダー」の心がけで学校が変わり、魅力ある職場が実現できたならば、先生たちはやりがいを取り戻し、生き生きと働くことができます。
第4回目のES-TVは『若手が育つ指示ゼロ学校づくり』の著者で湘南学園、学園長の住田昌治先生をゲストに招いてお話をうかがいました。
自分たちでできること、「ウェルビーイングな職員室」をつくる
ーー住田先生はつい最近、この5月に本を出版されましたが、どのような本でしょうか?
住田:今回発行した『若手が育つ指示ゼロ学校づくり』は実は私の3冊目の本となります。( ※2022年10月に4冊目の本を発行しています。)
1冊目が『カラフルな学校づくり』という本で、次に『「任せる」マネジメント』という本を出しました。
『指示ゼロ』の本の帯に「新卒1年目の先生もどんどん活躍できる」と書かれているのですが、実は出版社から、1年目の先生を辞めさせない本を書いて欲しいと要望されたんです。
本来、とても魅力があり、やりがいのある教員という仕事。
みんな熱意を持って入ってくるのに、たった1年で辞めたくなってしまう。
どこにその原因があるかといえば、大きくは2つあると思います。
一つはよくいわれていますが、教員の長時間労働の問題です。
しかしこれは学校だけでは解決できないところがあります。
もう一つは職員室の人間関係です。
こちらは学校で解決できることです。
自分たちで働きやすい環境をつくることはできます。
先生たちが全員、自分の持ち味や自分らしさを活かして力を発揮できたら、とても素晴らしいことです。
そのためには安心して過ごせる場所、チャレンジできる環境が必要です。
安心して、積極的にチャレンジして、自分の持ち味を活かして、力を発揮できたら、そこにはきっとやりがいが生まれるでしょう。
そうしたら、新採用の若い先生だって大活躍できます。
「新任の何もできない先生、即戦力ではない先生がやってきてたいへんだ」、と考えるのではなくて、どういう状況の先生がきても育つ環境を用意すること、それが学校リーダーに今、求められていることで、この本を通して伝えたいことでした。
いつも笑顔で、機嫌よくしておく
ーー今窪先生はキャンパス長時代に心がけていたことなどありますか?
今窪:そうですね、私もいくつか心がけていたことはあります。
まず一つは公平性を持つことですね。
先生たちみんなと公平に接するように心がけて、よくある、右腕の先生のような立場の先生をつくらないようにしていました。
それから2つめとしては、先生方の適材適所への配置ということを意識していました。
それぞれの先生が自分の強みを活かして、生き生きと活躍できるポジションにつけたらいいなと思っていました。
それから、女性教員の活躍促進ですね。
結婚、出産を理由に先生たちが辞めてしまうのは学校としての損失であると思っていましたので、長く活躍できる環境づくりに注力していました。
そして4つめは、「認めて、褒める」ということを意識していました。
自分だってやはり認めてもらいたいと思っていますし、褒めてもらいたい気持ちが強いので、先生たちもみんなきっとそうだろうなと思っていました。
ーー住田先生、学校リーダーの先生が、現場で心がけたら良いと思うことはどんなことがありますか?
住田:一番は、「いつも笑顔で、機嫌よくしておくこと」です。
そして、「暇そうにしておくこと」、ですね。
多くの先生たちは「やらなければいけない」「やってはいけない」という世界で生きてしまって、自分が「やりたい」とか「やりたくない」とかに焦点が当たらないんです。
そうすると、常にやらされ感の中にいることになりますから、どんどん辛くなります。
どんどん疲弊していきますよね。
「やりたいことは何なのか」を聞いていく、「どんなことをこれからしていきたいと思っているのか」、「どんな考えを持っているのか」。
先生一人ひとりの価値観や、あり方を丁寧に聞いていく必要があると思います。
学校リーダーは伝えるだけではなく聞くことが重要です。
単に聞くのではなく、耳を傾けてしっかり聴く。
すなわち傾聴です。
傾聴や対話を行うには、それができる環境、よくいう心理的安全性ですね、そうした環境を整える土壌づくりが必要です。
土壌を培っていくためのあり方を、率先してリーダーが示すべきです。
その方法が、いつでも機嫌よくしておくこと、いつでも朗らかでいることです。
機嫌悪くしていたり、怖い顔をしていたり、偉そうにしているのではなくて、いつでも話を聴ける姿勢を整えておき、話しやすい雰囲気を醸し出しておくことです。
そして先生たちが話をしにきたら、絶対に断ってはダメです。
例え自分が急ぎですべきことがあったとしても、そうした調整は自分一人でできることですから後回しにして、ともかく話をすることを最優先することです。
それから、「指示」、「命令」、「教える」という考え方から脱却して「問い」に変える、主導権を相手に渡すというあり方を自ら示していくことが必要だと思います。
そして、それはだんだんと学校全体に広がっていき、文化や風土となるのです。
ーー今窪先生のキャンパス長時代はいかがでしたか?
今窪:まさに、住田先生のおっしゃる通りで、もちろん私もそうありたいと心がけてはいたのですが、100%できていたかと問われれば、それは正直自信がないですね。
4/1は教育目標について話し合う日
ーー本を読んで、学校の教育目標を共有するワークショップを実施すること、がとても印象的でした。学校の教育目標はトップダウンで示されるものかと思っていたので意外でもありました。少し、こちらの話の意図をお聞かせいただけますか。
住田: 実はこれは自分の失敗からスタートしたんです。
校長になって、4/1に新しい学校に着任します。
普通、校長として自分の考えや思い、目標を話しますよね。
自分も昔はそうしていました。
そうしたら、先生たちがシーンとなるんです。
なんでシーンとなるんだろうなと思って、先生方の立場で考えてみると、きっとワクワク感とか全く感じていないんだろうなと思いました。
校長がいくら立派なビジョンを示したところで、それは校長のものであって、一人ひとりの先生たちのものにはなっていないんです。
だとすれば、4/1には校長が演説するよりも、先生たち全員に話し合いをしてもらったほうがよほど意味があるものになる、そう考えたのです。
私はよくいろいろな学校で、そこの先生方に「教育目標について話し合ったことがありますか?」と質問することがあるのですが、「ない」という答えがほとんどです。
しかし、話し合わせたら、先生たち、みなさんたくさん話しますよ。
もともと真面目で熱意がある人たちなのですから。
実施された学校のリーダーの方は、「先生たちってこんなに話すんだ」とみんな驚いています。
新採用の教員や、他校から異動になった教員、それに事務職員や用務の職員も含めて全教職員で実施しているのですが、年代、世代、職種の違う人の意見や考えを聞ける良い機会となります。
また、年度始め、4月の初めに実施することで、フラットな場所であることを実体験してもらい、この学校が安心して話ができる場であるということを示すことができるので、良いスタートが切れます。
あなたの学校でもできることはある
ーー今日は貴重なお話をありがとうございました。
最後に今、学校現場で頑張っている先生にメッセージをいただけますか?
住田: 自分の学校ではできない、あの校長の下じゃできない、とは思わないでいただきたいと思います。
できることはきっとあります。
熱意を持ったあなたが、今、そこにいるということが重要です。
自分の考えは素晴らしいから、みんなでそれを理解して一斉にやろうと考えたら、それはきっとできません。
まずは自分ができることからはじめるべきです。
そしてそれが良いことであれば、その良さが仲間を通して徐々に広がっていくと思います。
トップダウンで学校を変えたとしたら、そのトップがいなくなった途端に元に戻ってしまうかも知れません。
良いことを少しずつ広げて、変えていくことで強靭なものになるのではないかと私は思います。
ーーまずは自分が自分のリーダーになるということでしょうか。
住田先生、今日は本当にありがとうございました。(MC:善福 真凪)
最後までおつきあいいただきありがとうございました。
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今後とも、EDUCATIONAL SUPPORTのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
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