見出し画像

ハズれる未来を予想せよ|57冊目『古びた未来をどう壊す?』

宮本 道人(2023,  光文社)



SFプロトタイピングワークショップを取材

デザイン思考、アート思考は知っていますが、SF思考っていうのもあるのか、と思っていたら、UoC(University of Creativity)で聖学院の生徒向けに「SFプロトタイピングワークショップ」なるものを実施してくれるというので取材をしてきました。

僕は、実務家教員として授業を教えられたら良いなと思い、経営学を学んでいるのですが、もっぱら組織論やリーダーシップ論が中心です。
でも実は行動経済学やマーケティングにもとても興味があります。

しかしマーケティングの部署があるような大手企業で働いたこともありませんし、マーケティングの会社で勤務したこともありません。

ビジネススクールではカスタマージャーニーマップやシナリオプランニングといったマーケティングのフレームワークを知識としては学びましたが、体験する機会は、実はなかなかないものです。
だから大学や大学院でも理論や事例で学ぶのではなくて、実際にワークショップを体験できたら面白いだろうなと思い、自分がそれを授業で実施できたら良いなとも思います。
そのためには、自分自身がワークショップを多く体験しておかなくてはならないと思っています。

僕が今、一番体験したいワークショップは日立製作所が開発したBusiness Origami ®というサービスデザインツールを使ったワークです。
日立製作所ってとてもクリエイティブな企業なんだなと感心します。

そして今回、UoCと一緒にSFプロトタイピングワークショップを共同開催してくれるのが日立-産総研CEラボだと聞いて、とても期待していました。

実際にワークショップは、期待以上にとても興味深いものだったのですが、その内容は学校のnoteで記事にしていますので、こちらをご覧ください。

そしてこの↑ワークショップにおいて紹介されたのがこの本、つまり『古びた未来をどう壊す?』でした。


それらしい未来を描いたSF小説を書いた

SFなら何でも好き!というほどではありませんが、まあ僕はSFは好きな方です。

最近はAppleTVで「インベージョン」「ダーク・マター」「サニー」とSFのシリーズにはまって見ています。

映画のドラえもんは、いまだに毎年、高校生になった次男と一緒に観に行っています。

小説の賞に応募しようと、SFの小説を書いたこともあります。
それがこちらです。

賞に応募はしたものの、箸にも棒にもかかりませんでした。
自分ではよく書けていると思うのですが、反響がまったくないというのは、やはり面白くないんでしょうね。

すでに誰かが考えて、小説や映画などで語り尽くされている、それらしい未来のリライトに過ぎないのだと思います。

つまりオリジナリティが足りない。
この本の言葉でいえば「ブッ飛んだ未来像」が描けていなかったのです。


大切なのはブッ飛んだ未来像

本では「SFプロトタイピング」と「SFバックキャスティング」のコンセプトとやり方が示されています。

SFプロトタイピングワークショップを何のためにやるのかといえば、とにかく「ブッ飛んだ未来像」を考えるためです。

そしてSFバックキャスティングワークショップをやる理由は、その未来像をもとにして「今やるべきこと」を考えるためです。

企業のビジョンとは「ありたい姿」であり、現在の状況とのギャップを埋めるために戦略がつくられ、その手法としてマーケティングが行われるわけですが、SF プロトタイピングワークショップでは「ありたい未来」にこだわるな!が重要なキーワードです。

ありたい未来は「それらしい未来」でもあります。
そうではなくて「おかしな未来」をイメージし、「ハズれる未来」を予想をする、「ハズレた発想」を心がけるべきだといいます。

だから大切にすべきことは、ここでは「共感」ではなくて「違和感」です。
なぜそうなのかといえば、目的が違うからです。

SFプロトタイピングワークショップに期待されることは、チームビルディングではなくて、マーケティングツールとして、イノベーションの創出や、新製品開発のヒントを見つけることです。
誰もが考えつくようなありきたりの未来予測をしても、おそらくそこからは何も生まれないでしょう。


ブッ飛んだ作品事例

本の中で、著者の宮本さんがワークショップの成果として書いたという2つのSF作品が事例として紹介されています。

『超ホームセンター文明のひみつ』は西暦2300年の宇宙に住む未来人が、隕石の衝突で滅んでしまった地球の発掘調査を行い、「パーツキャンプ」「リフォーム遊園地」「プロフェッショナル温泉」というホームセンター文明について紹介するという物語です。

もう一つの作品、『波を食う』はサイボーグ婆さんと、自分の体を使って培養肉を培養するロボット、マグロカモのヘンゼルたちが活躍するスーパーナンセンスな物語。

それぞれカインズとクラレのSFプロトタイピングワークショップを通して生まれた作品ですが、なるほどこれでもかというくらいブッ飛んでいます。

ありえねー! くだらねー! と連呼しながら読みましたが、小説としての完成度も、論理的な整合性もここでは必要ありません。
いかにブッ飛んでいて、今まで誰も想像もしなかったことを考えられるのかが重要なわけです。

なるほど、そういうことね、と思いました。

僕のSF小説に不足しているのはこういう感性だったわけです。
結局、遠慮して度を超えない、わきまえた想像力になってしまっていたんですね。

実は生徒たちのワークショップもそんなところがありました。
最初に未来ガジェットを個人で考えて、グループで共有するのですが、そこで出された未来ガジェットは、「あるよねそういうの」という想定内のものがほとんどだったのです。
もう少しはじけてもいいんじゃないかな?という感想を正直抱いたのですが、最後の寸劇発表のセッションでは、予想に反してだいぶブッ飛んだ発想になっていました。

短時間でそうした変化が起こったということは、SFプロトタイピングワークショップの威力は確かにあったということですね。


ドラえもんのAIを組み込んだホームボット、サニー

最後までおつきあいいただきありがとうございました。
スキ♡の応援よろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?