童話「スーパーヒーローレボリューション」/#009
ソラたちと再び出会う
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部屋に入ってきた少年たちを見て僕は驚きました。そこにはソラとトムとチッチの姿があったからです。
「カヴ、不法侵入の子どもたちを連れてきました。」
と少年の一人が言いました。どう見てもソラよりも年下に見えるのに、ソラたちのことを「子どもたち」と言ったことが少しおかしくもありました。
カヴの前にソラたちが突き出されるとカヴがソラに向かって質問しました。
「君たちはジャンくんと一緒に居た子たちだね。どうしてここがわかったのかな?」
するとソラは質問には答えずにこう言いました。
「ジャンがあなたたちと一緒に行ってしまってからすぐに政府のロボットがジャンを迎えに来たんです。それでオレはそのロボットに、ジャンは別の政府の迎えの車で連れられていったんだ、と答えたんです。そしたら、」
「そしたら?」
「そのロボット、しばらくフリーズしたかのように動きが止まってしまって。まるでオレたちが所有しているPPのように。そしてしばらく何も言わずにじっとして居たのですが、間もなくドローンが上空から降りて来て回収していきました。」
「なるほど。」
「なんか、おかしいなと思ったので、トムとチッチも呼び出して、そしてジャンの後を追うことにしたんです。」
「ここの場所は、どうしてわかったのかな?」
「はい、ジャンにあげた帽子・・・、帽子にGPSのチップが埋め込まれているのを思い出して、」
僕は思わずキャップを脱いで確認しました。
「そうだったのか、よくわかったよ。ではもう一つ質問だけど、ここにはどうやって来たんだい?歩いて来たのかな、車で来たのかな。」
とカヴが聞きました。
「車です。父さんが知り合いから借りてきた車を、まだ知り合いが回収しに来ていなかったので、だまって乗って来ちゃいました。」
と、ソラが答えると少しカヴの顔色が変わったように見えました。
「ここは、やっぱり政府の管理局とは関係ないですよね。あなたたちは一体何者なんですか?」
部屋を見渡しながらソラが言うと、
「君たちは今の世の中に満足しているかな。今の時代に希望を感じているかい?」
カヴはソラの質問には答えないで、そう言いました。
突然チッチが詩を朗読しました。
「ブレイクの詩です。チッチはブレイクの詩をたくさん暗記しているんです。」
とソラが説明をしました。
「そう、今の時代、物質的に豊かに見えるけど貧困の国だと僕も思う。」
若いリーが穏やかな口調でそう言いました。
ずっと黙っていたカヴがゆっくり話はじめました。
「よかろう。ジャンくんにもこの時代のことを少し説明しなくてはならないと思っていたし、君たちにも教えてあげよう。でもここで聞いたことは外で話してはいけない。君たちのお父さんやお母さんにも黙っていなくてはいけない。そうしないと君たちが危険になる。お父さんやお母さんも不幸になる。どうだい、秘密は守れるかな?」
とカヴが質問しました。
「チッチは詩の朗読しかしません。トムは喋れないんです。オレはトムの声を聞いたことがありません。そして、オレは、」
「ソラくん、君の遺伝子情報はスキャニングさせてもらったよ。信用できる人間だと私たちは認識している。それで間違いはないかな?」
とカヴが言いました。
「それじゃあこれからお話をしよう。君たちの知らないお話だ。」
そう言ってカヴは穏やかに話を始めました。
#009を最後までお読みいただきありがとうございます。
#010は3/22(水)に配信します。
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