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星空の九ちゃん
九ちゃんは夜の星になった。
最近テレビで多数の歌手、俳優さんたちが歌うCMが流れている。
歌われている曲は、「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」の2曲。
いずれも日本中の人々に、「上を向いて歩こう」に至っては、世界中の人々に愛されている名曲である。
聞くところによると、日本が明日に向かって進むための希望の歌だそうだ。
二つの名曲のオリジナル歌手は坂本九。
この2曲のほかにも、1960年代を中心に、数々のヒット曲を持つ歌手、俳優である。
皆で歌う両曲も良いが、九ちゃんの歌は一味も二味も違った。
歌手によっては、これらの曲を、もっと上手く綺麗に歌う人はいるかもしれない。
だが、九ちゃんの歌は、独特の節回し、リズム感、鼻にかかった歌声による魂の歌、いわばソウルなのだ。
このことは、「上を向いて歩こう」が3週連続全米1位という栄誉に輝くことと、全く無関係ではあるまい。
彼が存命であるならば、今年で70歳だったが、1985年、あの日航機墜落事故で亡くなった。
まだまだこれからという43歳だった。
僕たちの世代、あるいはもっと若い世代にも、彼の影響を受けたアーティストたちが数多くいる。
長い年月には、実に多くの歌手がお亡くなりになられている。
だが、時計が止まるような衝撃を受けたのは、坂本九この人だった。
あの日、九ちゃんは、日航機に乗っていた多くの人と一緒に、そっと静かに夜の星になった。
阪神、そして、今回の大震災の壮絶な光景も、涙を流しながら見ていたに違いない。
今も流れる自分の歌を聞きながら、今夜も夜空の何処かで、僕たち皆を見守ってくれているだろう。
(2011年あの東日本大震災がおきてしまった数か月後のメモです。)