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メディアが報じないウクライナ戦争の裏側⑦ ~バイデン家の汚職疑惑~

(前回の内容)


7-1) 石炭輸入国となったウクライナ

ウクライナ東部ドンバス地方は、19世紀から世界有数の炭田で「石炭の宝庫」として知られていた。ドンバスという地名は、石炭が大量に眠るドネツ川の流域に由来しており、その埋蔵量は1090億トンと推定されている。

ドンバス戦争が始まった2014年以降、親米派のポロシェンコ政権がドンバス産からの石炭購入を拒否し、アメリカや南アフリカからの輸入に頼るようになったことで、ウクライナは石炭輸入国に転落することとなった。

ポロシェンコ政権は、米国ペンシルベニア産の高い石炭を購入することを優先し、輸入量の30%はアメリカ産の石炭が占めるようになった。その後、ゼレンスキー政権となった2021年の時点でも、ウクライナは約1億8260万トンの石炭を輸入し続けていた。

また、ウクライナには石油・天然ガスが豊富に眠っており、その埋蔵量は石油換算で230億バレルと推定されているが、ほとんど採掘されていない。

ソ連からの独立後30年に渡って長く経済が低迷してきたことで、油田開発、炭鉱開発のための資金が不足する状態が続いてきた。そして2019年には、ウクライナ初の米国産石油の輸入を開始した。

7-2) 天然ガス会社ブリスマ

ウクライナで天然ガス油田の投資と開発を行ったのは、首都キエフに本社を置くブリスマ・ホールディングス(Burisma)である。

ブリスマ(Burisma)社(2002年設立・2023年解散)

ブリスマの創設者は、オリガルヒミコラ・ズロチェフスキーだが、汚職防止活動センターが行った調査によれば、2012年時点でブリスマの真の所有者は、アゾフ大隊のスポンサーでありゼレンスキーの支援者であったコロモイスキーとされている。

Kings of Ukrainian Gas(ウクライナのガス王)

Anti-Corruption Action Center (2012年8月26日)
イーホル・コロモイスキー(Igor Kolomoisky)

2012年、ウクライナ検事総長プションカは、ブリスマ創設者ズロチェフスキーに対し、脱税およびマネロン、汚職などの疑いで捜査を開始した。

検事総長プションカ(左) と ブリスマ創設者ズロチェフスキー(右)

7-3) ブリスマの汚職捜査を妨害したバイデン

2014年4月、アメリカのバイデン副大統領(当時)はウクライナを正式訪問し「米国が5000万ドルの経済支援とエネルギー面における技術支援を行う」と表明した。

その直後の5月、バイデンの次男のハンター・バイデンHunter Biden)がブリスマの取締役に就任することとなった。

ハンター・バイデンは、2019年4月までの5年間に渡って同社の取締役を務め、その役員報酬は月額約5万ドル、総額300万ドル以上を受け取っていたと言われている。

2015年2月に検事総長に就任したショーキンは、プションカの後を引き継いで、ブリスマの汚職疑惑の捜査を再開することを表明した。

2015年にウクライナ検事総長となったショーキン

2015年12月、キエフを訪問したバイデン副大統領は、ポロシェンコ大統領に「ショーキン検事総長を解任しなければ、アメリカは10億ドルの融資をやめる」と警告している。その後2016年3月29日にショーキンは検事総長を解任された。

2018年1月23日、外交問題評議会CFR)の討論会に出席したバイデンは、当時を振り返り、ウクライナ当局者に『検察官が解雇されなければ、おまえらは金が手に入らないぞ、くそったれ!!』と言ってやった、と自慢げに語っている。

2018年1月23日 外交問題評議会(CFR)の討論会(動画)

7-4) ブリスマからの収賄疑惑

2019年1月、バイデンのウクライナにおける不正疑惑を調査するため、トランプ大統領の個人弁護士ルディ・ジュリアーニは、検事総長を解雇されたショーキンに対して非公開インタビューを行っている。そのときに作成されたメモには、ショーキン氏は次のように語ったと書かれている。

・2015年の6月か7月頃、元駐ウクライナ米国大使パイアットから「ブリスマとズロチェフスキーに関する捜査を中止するように」、「その捜査は慎重に扱うように」と警告された。
・ポロシェンコ大統領からは「バイデンやハンターの利益にならないので、これ以上ブリスマの件を調査すべきではない」と言われた。
・米国への渡航を申請したが、バイデンと親密な関係にあったマリー・ヨバノビッチMarie Yovanovitch)米国大使からビザ発行を拒否された。

このインタビュー記録に書かれていた内容は、ショーキンが欧州裁判所に対して宣誓供述した証言と完全に一致しており矛盾は無い。

ブリスマへの疑惑捜査は、ショーキンの後任として検事総長に就任したルツェエンコにより捜査終了となった。
なおルツェンコは、捜査終了の理由やバイデンの関与については一切言及していないが、「ハンターバイデンはブリスマから数百万ドルの報酬を受け取ったと思う」と語っている。

ショーキンの後任となったルツェンコ検事総長

またパイアット元米国大使は、2015年9月にオデッサで行った講演の場で、“ウクライナの汚職に関与した人物”として、ブリスマ創設者のズロチェフスキーの名を挙げた。
しかしその3カ月後、パイアットはバイデンの側近達から「講演でズロチェフスキーについて言及しないよう」に注意されている。

さらにFBIの記録によると、バイデンはブリスマ創設者のズロチェフスキーから”Big Guy (大物)”と呼ばれていたことが判明している。

2020年10月に発覚した「ハンター・バイデンのノートパソコンから漏洩した情報」により、ハンター・バイデンから"Big Guy"と呼ばれる人物に500万ドルが送金されたことも判明しているが、両者の言うところのBig Guyが同一人物であったかどうかは、いまのところ証明されていない。

情報公開法(FOIA)に基づき開示された文書によれば、2016年、ハンター・バイデンは駐イタリア大使のジョン・フィリップスに書簡を書き、ブリスマ社がイタリアにおけるエネルギー契約で有利な条件を獲得できるように協力を求めていたことが明らかとなっている。

パート⑧では、ロシアによるウクライナ侵攻までの流れを解説する。


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