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母のように

昔々、おやさまに
「おなごというのはとっても大事なお役や
あんたはこれからものをつないでゆくお役をせねばならんで…」
とわたしは言われている

ものをつないでゆくとはどういうことだろう
ずっと前から書くことは好きだった
そのことだろうか?

母は女は結婚してなんぼのものという昔気質の人だから
わたしにも結婚してほしいと願っていた

でもわたしには大きな問題がある
結婚なんか出来るのか?

それは病のこと
心の問題でもある

相手から結婚して欲しいと望まれて
心のどこかので迷いながらも承諾したのはわたしだった

自分で決めたこと

ところがやはりことは起こる
浮気も良いとは言えないけれど
わたしにはもっとイヤな問題だった

心のつながりがない、つながらない夫婦

父と母とは「俺たちの心がつながっいればいい」という夫婦である

いつも喧嘩をしていても
心がつながっていれば強い、強い

父に従っているように見えて
実は手綱を握っていたのは母である

父は頭の回転の速い男で
わたしは父とは反目していた


本当は父のような頭のいい男と一緒になれば良かったと
今はつくづく思うのだが…

心の通わぬ夫婦はわたしには苦痛以外の何物でもない

元夫は再婚をして
同じ過ちを繰り返す 
わたしにはそうとしか考えられない

「お前なんか、再婚も出来ないだろう」とある時わたしのことを長男に言ったという

こんちくょう!バカヤロー!
どうせまた心の通わぬ夫婦をやっているお前なんかに言われたくない

メッキではなく本物が欲しい
メッキはいつか必ず剥げる
ずっとずっとそんな思いを持ち続けている

母もわたしをひとり残してゆくのが不安だった
「いい人が…」といいかけて口をつぐむ

心の通い合う伴侶などなかなか見つからない
喧嘩をするほど仲がいい
そんな夫婦に憧れる

一見、仲が良さげでも仮面夫婦
心をぴたっと閉じて
大切なことは決して話さない
喧嘩も出来ない

そんなのかなしすぎ

確かにそんな夫婦は山ほどいるにちがいないが

もうこりごり
でもひとりはさみしすぎ

この間の母の一周忌
お社さんに先祖供養もしてもらう

父と母の写真を持ってゆく


お社さんは父の写真を眺めて背景に富士山があることに気づかれる
「父は富士山が大好きでした」
「そうなのね」

次の八の日の祝福の時
「お父さんとお母さんは富士山に登ったと嬉しそうに伝えてきたよ」と言葉をかけられる

あの二人、生きてる時は富士山の五合目までしか登ったことはないはずなのに

死んでも一緒にいるんだね
心の繋がる夫婦は強いのね

そういえば母が前世治療をしてもらった時、
母は父と共にあの世に還る前に多くの人と一緒に安物っぽいペラペラの白いドレスのような服を着て、待合室みたいな場所で待たされていたと話してくれた

父が生前にタバコの銀紙で折っていた鶴に乗ってあの世へと還ると

わたしはひとりでふかふかの白い大きな羽根をつけて、青空と雲の中を登ってゆくネイティブアメリカンの前世だった

そこは母とは違うのか

母と父とはどこかの前世でも夫婦だった

ソウルメイト、ツイルソウル、ツインレイ

そんな運命の人と出逢えてしあわせだったね

おかあさん

いいなぁ

わたしはツインレイとはどこですれ違ったのだろうかね…

それとも今世では会えないのか

そうそう、母の道とは全く違うじゃないか…
わたしには苦労が足りないのか

お母さんになったことは同じ母の道だけど

母とは違う歩みをしているが

母のように生きられたらいいのかも

「しあわせ、しあわせ」と言っていればそうなれるかなぁ…

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