あの時もこの時も
いつもわたしを支えてくれていた
影日向になって
わたしのわがままも許してくれた
わたしには後悔しかない
それでも写真の母は笑顔で輝く
肉体か無くなって
軽くなったから
大好きなお父さんに会えて
大好きなおっかちゃんに見守られて
うれしいのかな
いつもわたしに寄り添って
いつも誰かに寄り添って
こころから気持ちを込める
それが母の生き方だった
そのやさしさに甘えていた
当たり前だと思っていた
でもいつか消えてなくなる
当たり前なんかない
そうわかった時には
母はいない
母の姿は見えない
本当はいつもそばにいるけれど
わたしにはわからない
友だちは人間が神に近づいて
いずれ母の姿が見えるようになるという
夢のような話
でも夢ではないという
いつか現実になる
母は最期の時
「そばに居ようか」ときいたわたしに
「二階の自分のベッドに行きなさい」という
本当はもう分かっていたのかな
おやさんが覗きに来ていたことを
父が亡くなる少し前
「見知らぬおばあちゃんが来た」と母に教えてくれていた
見知らぬおばあちゃんって誰のこと?
二人で頭をひねっても分からない
父が亡くなってから
お社さんに聞くと
「それはおやさまでしょう」と自信ありげにおっしゃる
知人にいうと
「そんな話は初めて聞いた」と驚かれる
それでも「やっぱりおやさましかいないよね」
母と二人で納得した
だから母には前もって言っていた
「おやさまが迎えに来たら教えてね」
ところが母は焦りに焦って
覗きに来ただけのおやさまに自分からつかまって行ってしまう
わたしとの約束は反古にする
それは無いだろう
振り向きもせず
一人残されたわたしの身にもなってくれ
母のいないさみしさも
かなしさも
せつなさも
わたしの胸に突き刺さる
刺さったトゲはずっとずっと抜けない
ひとりぼっちのわたしには
他人に何を言われても
息子になにを言われても
こころの中で
お前らに分かるものか
と感じていた
多分母も口には出さないけれども
父が亡くなってからずっとそんな思いを抱えていたにちがいない
だからわたしとの約束を反古にして
行ってしまった
ぼろぼろの着物を脱ぎ捨てるように
肉体を脱ぎ捨てて
友はいう
「お母さんはあなたがひとりでも生きて行けると思ったから、旅立ったのよ。安心して」
そんなことあるもんか、本当は反発したいけど
二男の結婚、パワハラ問題も解決できた
そして相続税も司法書士に頼らずに
息子たちに手伝ってもらい
自分で全てやり遂げた
母の戸籍謄本の取り寄せから法定相続情報一覧図づくり、法務局にも通いつめ
全てを終わらせた
知り合いの行政書士は
そんなの自分で出来るから
と言って相手にもしてくれなかった
それは確かに出来るけど
母の名前が消えてゆくのは
かなし過ぎる
しばらくは手もつけられない
最悪は母のお世話になった司法書士に頼もうと思ったがやり遂げられた
全ての作業が終わり
税務署に書類提出
友だちに電話をすると
「声が明るいね」
「やっと相続の書類を税務署に出して来たよ、何とか終わった」
「良かった、自分で出来たのね」
終わった途端にコロナに掛かる
熱は下がるが
倦怠感、関節痛、筋肉痛、頭痛もある
母の言っていた「だやい(だるい)」という方言をわたしも吐いている
やっぱり母が恋しいな